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父の登場

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今日は変なことが続く。

王太子妃殿下に呼ばれて探られたり、兄様も少しピリッとしていたし、そして今、到着して王宮の客室に案内された父の部屋に呼ばれた。

お茶とデザートが出されて、兄様もやってきた。

ラ「お父様、お疲れでは?」

父「そんなことはどうだっていい。ララ、すまなかった。父様と母様を許してくれ」

ラ「どうなさったのですか!?」

兄「ララ、私からも謝らせてくれ。
こんなに近くにいたのに、ララが辛い日々に耐えていたと知らなくて。
悪かった。この通りだ」

二人して深々と頭を下げるのでララは驚いた。

ラ「頭を上げてください。どうなさったのですか」

兄「カルヴァロス公爵令息から話を聞いた。
ララへの冷遇を認めた。抗議して父上に報告した。

到着した翌日にでも私が挨拶に行き様子を確認したら今日までずっと辛い思いをさせずに済んだ。

まだ16歳の妹を守れないとは」

父「ララが夢でお告げがあったと言ったのに無理に行かせてしまった。

数日延期して調査を入れて娘の不安に対処すべきだった。

せめて一緒についていき、部屋まで送り届ければ良かった。

孤独だっただろう。辛い思いをさせた。もう我慢することはない」

バレたのか。

ラ「確かに、婚約者候補を迎える待遇ではありませんでした。

ですが辛くも悲しくもありませんわ。

質素な部屋でも問題ありません。普通に過ごせます。
一階でも問題ありません。虫に気を付けてくださっていますし、池と鯉が気に入りました。カーラは生臭いと怒っていましたが。

食事が質素に感じても問題ありません。
平民からすれば豪華ですし、美味しいです。

カーラが尽くしてくれて寂しくありません。
マックスやリックがいて安心です。
メイドを一人つけてもらいましたが、ジェシカさんといってとても良い人です。

令嬢二人から遠回しな口撃を受けますが、可愛いものです。

朝夕食とメイド付きのホテルに滞在しながら王都観光をしていると思えばラッキーです。
4人分が無料ですよ?お得です。

昼はカフェやレストランで苦しくなるほど食べて、ちょっと買い物をしたり、剣術大会の観戦をしたり。

最近はお城で用事をしたり、ウィリアム様が気を遣ってくださるので不満はありません。
期間中、みんなで楽しむことにしたのです。

だからそんなに気に病んだり、謝ったりしないでください」

父「そうか。

その姿は?」

ラ「楽なので。私は生き餌…ネズミ役ですから着飾る必要もありません。
ドレスなんて着ていたら観光を楽しめませんから。まあ、牢屋に入れられましたけど。

クローゼットの半分以上はウィリアム様が買ってくださったので、」

父「ちょっと待て。牢屋とは何のことだ」

ラ「え?

あれぇ~、そんな事を言いましたかぁ~」

父「はぁ。素直で可愛いな、ララは。

ディオス、報告が無いぞ」

兄「申し訳ございません。

剣術大会の敗者復活戦を一般チケットで観戦しようとしたララ達が、手荷物検査などを受けた際に身分証を提示したところ、偽物だと疑われて、揉めたようで。

平民向けのワンピースを着ていたので侯爵令嬢と信じてもらえず、ララはララで自分だけ疑うのはどういうことかと詰め寄って……」

父「それで牢屋に入れられたのか」

兄「はい」

ラ「上司に謝ってもらいましたから。済んだ話です。

それに、王城の牢屋ですよ?滅多にできる経験ではありません。牢屋観光と思って思い出にしました。

お陰で第二王子殿下が決勝の観戦に招待してくださいました。カーラ達もですよ!
飲み物まで付いているのです。

……結局観れませんでしたが」

父「観れなかった?」

兄「給仕が間違えて酒をララに渡してしまい、酔ってしまいました」

給仕の人、濡れ衣着せてごめんね。

父「具合が悪くなったりは?」

ラ「大丈夫でした。ほとんど記憶はありませんが」

余所見したり酔ったりして試合は記憶が無い。

父「……外で酒は禁止だな。

リュシアン王子殿下に迷惑をお掛けしたのだな。お詫びとお礼をしなくては」

兄「後で顔合わせの時間を設けてあります」

父「分かった。

ララ、今日はここに泊まりなさい」

ラ「え? 戻りますから大丈夫です」

兄「せっかく父上がいらしたのだから一緒に過ごしなさい」

ラ「そうですね、そうしますわ」




【 カルヴァロス家 】

王宮から、ララが戻らずに王宮に泊まると連絡が入ったウィリアムは荒れていた。

「ララが!私のララが帰ってこない!」

「落ち着きなさい、ウィリアム」

「ウィリアム、ララ嬢が価値のある令嬢なのは分かったが、お前が口に出したことを聞かれていたのでは難しいだろう。
他の二人を放って置くことも出来ない。

他の二人と交流を持ちつつ、二人から選ぶ努力をしなさい」

「父上!私はララが良いのです!」

「ララ嬢の気持ちを得られなければお終いだ。明日侯爵からどうするか話があるだろう」

「公爵家の力で何とかならないのですか!」

「相手が悪すぎる。侯爵令息が第二王子の後ろ盾をしっかり得ていると分かったからな」

「公爵家は王太子妃殿下と親戚ではありませんか!」

「王太子妃殿下が王妃様のお立場であれば何とかなったかもしれないが、王太子妃という立場は権限はほぼ無い。せいぜい王太子殿下にお願いすることくらいだ。

王太子妃という存在は所詮他人だ。
次期王妃だとしても関係が良好な第二王子殿下の方が強いんだ。王位継承権を持つ血の繋がりがある。

しかも恋愛結婚ではない。王太子殿下は王太子妃殿下を諌めるだけに終わるだろう。
王太子という立場も然程権限は無いしな。

今のララ嬢を手に入れるには、弱みを握るか、好条件の政略結婚か、惚れてもらうか、王命しかない。

弱みは無さそうだし、裕福だから支援金など要らぬだろう。うちと侯爵家は関わりが無いから好条件の政略結婚は無理だ。お前に惚れてはいないようだし、王命も無理だ。王家に旨味がない。

敵対しているわけでもないし、協力関係を結ぶような要素もない。陛下にお願いできない。ララ嬢の兄は息子の側近だしな。
ウィリアムの片思いで、しかも冷遇の事実を知ればお叱りを受けるだけだ」



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