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夕方に着いた町の質屋に来た。

「マックス、リック。手伝って」

荷馬車や馬車から選別したドレスや持ち物を持たせて質屋にどんどん運ばせた。

荷馬車は空になったので御者にお金を渡した。

「明日、領地に戻って。このお金を好きに使っていいから」

「ありがとうございます」



宝石の入った巾着袋を持ってカーラと店に入った。

「マックス、リック。ありがとう。ちょっと待っててもらえるかしら」

テーブルにこんもりと積まれた品々に店主が困惑していた。

「急いで査定してもらえるかしら。全部」

「か、かしこまりました」

30分程待つと店主が戻ってきた。

「お嬢様、宝石は向かいの店に売ってもらえますか。
他の物を引き取ったらもう硬貨が無くなってしまって、本日はこれ以上買取ができません」

「分かったわ」

換金して、向かいの店で宝石を売った。

そして宿に移った。

「マックス、リック。護衛なのにこき使って悪かったわね。これでお酒でも飲んで」

「「ありがとうございます」」



食後にお小遣いを渡して宿部屋に案内してもらった。カーラと同部屋だ。

「お嬢様、あんなに手放してよろしかったのですか?」

「いいの。資金が欲しかったし、私にはもう必要ないから」

疲れたので早々に就寝して、翌朝から移動を再開した。




王都の隣町で菓子を買って夕方に到着した。

王都なのに広い敷地に大きなお屋敷。

「無駄ね」

「お嬢様!」

屋敷から出てきたのは使用人だった。

「ようこそカルヴァロス公爵へ。
執事のヨナスと申します」

「侍女長のロザリーナと申します」

「メイド長のカリンと申します」

「ララ・プルシアと申します。ですがよろしくお願いします。

専属メイドのカーラと護衛のマックスとリックです」


「……お疲れでございましょう。お部屋へご案内いたします」

今の間は何?

「あの、お荷物は……荷馬車が見当たりませんが」

「荷物はこれだけですの」

マックス達は鞄一つ。カーラは鞄二つ。私は鞄一つだった。そして、買った服が入った大箱一つ。後は土産。

「こちらの箱は使用人の皆様でお召し上がりください。隣町の菓子店で買って参りましたの」

「ぼっちゃまにではなく…でございましょうか」

ぼっちゃまって……

「違います」

「あ、ありがとうございます」

「果実酒も買いましたの。明日届けると言っていましたので、届いたら使用人の皆様でお召し上がりください」

「果実酒も!?私共に!?」

何で一々聞き返すのよ。

「お嫌いでしたか?」

「とんでもないことでございます。
有り難く頂戴いたします」



部屋に案内されると質素な部屋だった。
続き部屋はカーラの部屋だ。

「お食事をお待ちいたします」

「お願いします」

カーラと二人きりになると、

「お嬢様、公爵家の客室としては随分と質素ですね。一階ですし、ちょっと心配です」

「そう? この方が気が楽だわ。
カーラ!当たりだわ。外を見て」

「池でしょうか」

「人工池ね。鯉を飼っているわ」

「少し生臭いですね。普通はこういった部屋には案内しないのですが」

「池付きの部屋なんて最高よ」

「ならいいのですが」



ノックと共にメイド長のカリンさんが現れた。ワゴンを押して中堅のメイドが入室した。

「プルシア侯爵令嬢様、担当をさせていただきますジェシカです。彼女に何でもお申し付けくださいませ」

「ありがとうございます。
カリンメイド長、使用人の皆様に私のことはララと呼ぶように周知してくださいますか?」

「し、使用人にですか?」

「ええ。ララの方が短いですし。
ララさんでも、ララちゃんでも構いません。

それと、明日出掛けてもいいですか?買い物がしたいのです」

「どのような買い物でしょう」

「品の良い平民の服の店と、ちょっと質のいい靴屋と鞄屋に行きたいのです。

場所も書いて教えて貰えると助かります。
昼食は外で済ませますわ」

「ジェシカにご案内させましょう。騎士も付けますか?」

「騎士や御者はプルシア家の者で大丈夫ですわ」

「食事は当面部屋食となります。
候補の方々が揃いましたら夕食だけは皆様で召し上がっていただきます」

「揃う?他にも候補がいらっしゃるの?」

「はい。あと二人ですが、一人は今朝方到着なさいました」

「そうだったのですね」

「明後日には到着予定かと」

「承知しました。夕食のドレスコードはあるのかしら」

「え?」

「ワンピースでも構わないかしら」

「あ、はい」

「まずは食事にいたしましょう。
細かなルールは食後にお伝えいたします」

「お願いします」




食後、お茶を出され、ロザリーナ侍女長が説明をしてくれた。

「食事や身の回りのことについてはカーラさんにお伝えします。

こちらは屋敷内の大まかな見取り図です。
斜線が引いてある部分は立入禁止です。

夜の9時から夜明けまで、一人で部屋を出ることは許されません。
廊下にいる騎士に付き添わせるか、呼び鈴でメイドを呼んでください。

ぼっちゃまに言い寄ることもお止めください。会話の時間は平等に設けます。

授業は全員揃った翌朝から始めます。

質問はございますか」

「会話の件ですが、定められた日時でなければ会話をしなくていいということですね?」

「え?」

「平等に、ですよね?」

「は、はい」

「授業の件はタイムスケジュールを出してもらえますか」

「タイムスケジュール……」

「書面でお願いします」

「夜が明ければ歩き回って良いのですね?」

「はい立入禁止の場所や誰かが使用している部屋でなければ」

「分かりましたわ」

「では、おやすみなさいませ」

「おやすみなさい」


カーラと二人になるとカーラは怒り出した。

「メイドを一人しかつけないだなんて!
普通は令嬢には二人以上付けるのですよ!
ゆとりある公爵家なら尚更です!

しかも食事もララ様にお出しするような食事ではありません!」
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