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僕の凱旋

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攻めてくるカロン軍の将を倒して撤退させるということを繰り返し、最後は場違いな将が来たのをチャンスとみて、一気に攻撃を仕掛けた。

首を切り落としてみれば、カロン兵が“陛下がやられた!”と言うと撤退していった。

頭部を抱えてテントにいる辺境伯の所まで持って行った。

「閣下。コレ、誰ですか」

辺境伯が頭部からヘルメットを外すと声を上げて笑った。

隊長も顔を覗いて笑った。

「誰なんです?」

「クリス。お前が刈ってきたのか」

「はい」

「たまたまか?理由があるのか?」

「場違いな感じがして、ちょっとアホそうな気がしました」

「ハハハハッ! アホそうだったか」

ジオルド隊長を見ると、肩に腕をまわされた。

「ありゃ、カロン王だよ。
これで戦争は終わりだろう。よくやった」

「終わりですか」

「多分な」


終戦は現実となった。



民衆の心を惹きつけながら軍は凱旋し、国王達へ報告した。

伯「こちらがカロン王の首です」

陛下に近寄り、箱を開けた。

陛「確かにカロン王だ。ちょっと臭うな」

持ってくる間に腐乱が少し進んでしまうのは仕方のないことだった。

陛「およそ7年、よく耐え抜いた。国を守ってくれて心から感謝する」

伯「務めを果たせたことを誇りに思います」

陛「それで。カロン王を仕留めたのは誰だ」

伯「クリス・コンラッド卿でございます」

陛「其方は唯一、王都から派兵した者の中で交代せずに辺境を守り続けた騎士だな?」

ク「はい」

陛「よくカロン王だと分かったな」

ク「遠目で、周囲とは違う甲冑を来て、戦うというよりは何も分かっていないアホという感じに見えました。キョロキョロと不自然な頭の動きをしていました。

何人も将を倒されて、いい人がいなくなって、突然駆り出されたおじさんかなと。

それに空間があいていたのです。
直接首を刈りに行けそうだなと思って突進してみました。

敵兵は疲れ切っていましたし、チャンスかと。

持ち帰ったらカロン王だと教えてもらいました」

陛「知らなかったのだな」

ク「すみません。学校で見た似顔絵は多分カロン王の40年近く前のものかと」

陛「なるほどな。教材を見直さねばならないな。

よくやった。多くの敵兵を葬った功労者だ。何か望みがあるか」

ク「ぼ、私はエスペランド軍の先輩方に戦いの仕方を教わって、彼らのような猛者がいてくださるから安心して剣を振るうことができたのです。

どうかエスペランドの町の復興に力をお貸しください。エスペランドの兵士達にもよくやったとお声掛けください。陛下のお声を糧として、また国と国民を守るために猛進することでしょう」

陛「そうだな。辺境へ出発する際に声を掛けさせてもらおう。
エスペランドの復興の件も予算を組もう。

それと。辺境伯家の長女との間に子がいるのだとか」

ク「はい」

陛「其方の子を世に残すことは有益であろう。
特に辺境伯家の血と混ざるということは期待できる。

特別にクリス・コンラッド卿には正式に妻を二人娶ることを許可する。
子はルイーザ嬢と同じくエスペランドの名を名乗らせることにはなるがな」

ク「お気遣いいただき有難うございます」




国王陛下は知っていた。
卒業の際に、近衛騎士へスカウトをしたいと団長に言われて人物調査をしていた。

真面目で身持ちも固く才能溢れる学生だと知った。
その後も副隊長クラスを圧勝して黙らせて、戦争となればエスペランドに世話になったと自ら名乗り上げ、一度も王都に帰ることなく前線で戦い続けた。

辺境軍の猛者達と肩を並べ、敵兵の屍の山を築き、最後にはカロン王の首を刎ね、終戦に持ち込んだ。


義理堅く真面目で、辺境軍に引けをとらず、エスペランドのために戦う若者をあの一家が放っておくはずはない。

政略結婚で嫁いだ長女が未亡人として戻ってくれば当然仕掛けるだろう。
無駄な子種を実らすわけがない。計画的に孕んだのだ。

副団長の娘には悪いが国王自分としても喜ばしい事だった。

次期辺境伯に息子が生まれていない以上、クリスとルイーザの息子は貴重な存在だった。







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