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転生先は“貴公子の秘め事”

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「おぎゃあ」

「なんて可愛いの!」

「こんなに可愛くては害虫だらけになってしまう!」


ん?  

「乳母のテレサです。お嬢様。
これからよろしくお願いします」


どうやら私は生まれ変わったようだ。
豪華な西洋の部屋。
母や乳母達が抱っこして見せる世界は…クソ古い。

部屋の内装と みんなの服と 窓の外から見えた馬車を見て察した。 
お貴族様の世界だ。
何故過去の異国に?

「お父様、天使の名前は?」

「イザベラにしようと思うんだ」

「ぎゃあ~!!!!! (嫌!!!!!)」

「……天使が嫌がってる」

「偶然だろう」

また父が呼んだ。

「イザベラ」

「ぎゃあ~!!!!! (嫌!!!!!)」

ポイっ

「ほら。嫌がっていますよ」

おしゃぶりを投げ付けた。当たらなかったけど。

「そ、そうか。何がいいのかな」

「候補を聞かせましょう」

「ヴィクトリア」

「ぎゃ~!!」

「エリザベス」

「ぎゃ~!!」

「ヴァイオレット」

「ぎゃ~!!」

「ジョセフィーヌ」

「ぎゃ~!!」

「……単に機嫌が悪いだけじゃ?」

「よし、兄様が父上の代わりに名付けるからね。

そうだなぁ……マリア」

プイッ

「ローズ」

プイッ

「キャサリン」

プイッ

そして21個目

「リナ」

「だぁ~」

「リナがいい?」

「きゃっ きゃっ!」

「父上、リナに決まりです」

「リナか。 マリアンヌの方がいいんじゃないか?」

「ぎゃ~!!」

「リナは厳しく育てよう」

「ぎゃ~!!!!!」

「父上!?」

「それとも甘やかされたいか?」

「きゃっ きゃっ」

「……」

この世界の赤ちゃんは生後3ヶ月をこえると名付けてもらえる。それより前に名付けると、子を失った神が赤ちゃんを攫いに来るという言い伝えがある。

私の側で兄であるディオンに乳母が説明していたのを聞いた。

単に乳幼児突然死症候群とか医療水準の低さから救えなかったとか、衛生観念や危機意識の低さからじゃないの?


生後5ヶ月。

父は私の前にぬいぐるみを持って来た。

「リナ。どっちが古いぬいぐるみだったか覚えてるか?古い方を洗濯しなくちゃな」

「う~(ウサギ)」

ピンクのウサギを指差した。

「……そうか。洗濯しような」

「ばぶっ」

ずっとぬいぐるみを洗わないことにキレたり、おしゃぶりは毎日洗わないとキレたり、誤飲する可能性があるものを放置するメイドに投げつけることもある。

メイド達は癇癪持ちだと思い 私の世話を嫌がった。
口には出さないが分かる。
中身は二十歳の日本人だ。

田舎に帰省するために長距離バスに乗っていた。
多分スリップしたのだろう。崖下に向かって落ちているところまで覚えている。
起きたら赤ちゃんだった。

「リナ。他に何かあるか?」

乳母のテレサの方に手を伸ばした。

テレサの肩は震えた。

「う~」

「なんて言いたいんだ?」

父はアルファベットボードを持って来た。

「ほら、これ。分かるか?」

「だ~! きゃっきゃっ!(コレよ!さすがだわ!)」

そして、

「テ・レ・サ・ヨ・イ・ゴ・ホ・ウ・ビ …

あ! テレサ、良い、ご褒美 か!」

「だ~!きゃっきゃっ!」

「そうかそうか。何がいいと思う?

カ・ネ・フ・ヤ・セ……昇給か?」

「だ~!きゃっきゃっ!」

「よし、分かったぞ。リナは偉いな」

「リ、リナ様ぁ!」

テレサは泣き出した。



2日後、スゴイところに連れて来られた。

「あ~」

「リナ。お城だよ」

「う~!」

「嫌なのか?」

「や~」

「リナ。キラキラだぞ?」

「や~!!」

お父様がポケットから紙を取り出した。

アルファベットボードのメモサイズに手書きしたものだ。

「理由を教えてくれないか?

…フ・ケ・イ」

「父兄?」

「う~!」

「……不敬か!」

「だ~!」

「知られたくないか?」

「……」 コクン

「よし。誤魔化せ。いいな?」

ニコッ



案の定、通された部屋で待つと いかにもな人が入ってきた。

「国王陛下、宰相閣下、」

やっぱり王様なのね。

「挨拶はいい。この子か。可愛いな。
エリオットの婚約は早まったかな」

「うちは伯爵家。お相手は隣国の王女殿下。
とても勝負にはなりません」

「それで、結果は?」

「偶然だったようです」

「それは残念だ。
まあ、いい。息子達を会わせよう」

陛下が合図すると4歳?くらいの男の子が入ってきた。

一人は金髪にアクアマリンの瞳。多分、国王陛下の息子だ。色も同じだし似てる。
もう一人はプラチナ色の髪に濃い青の瞳の子だった。
顔の作りは違うが宰相と呼ばれている人と同じ色をしていた。

「リナちゃん。
こっちが息子のエリオットで もう一人がレオナルド・エスラン。二人とも3つ歳上だよ。
分からないと思うが念のために伝えておくよ」

「……」

「王子殿下、公子。この子はリナ・アブリック。
もう少しで生後半年の長女です」

長い沈黙の後、

エ「父上。この子にボードをあげたんですか?」

陛「早過ぎたようだがな」

良かった。疑われていない。

エ「グシュッ

小さいですね」

チビ王子がクシャミを手で受けたのに拭きもせず、そのまま私に触れようとした。

私「ぎゃあ~!!!!!」

エ「うわっ」

私を抱く父が驚いて私を見た。

私の顔があの時の顔だと悟ったのだろう。
そう。顔で“汚い”と伝えることに成功していた。

父「申し訳ございません。リナは少し潔癖気味で」

宰「さっき陛下が触れても大丈夫でしたよね」

父「その、エリオット殿下がクシャミを受けた手を嫌がったのだと……」

陛「エリオット。手を洗ってきなさい」

エ「はい」

ビクッ!

いつの間にかレオナルドが私の顔を覗き込んでいた。

え?どうしよう。どう反応すればいいの?
泣いてみる?

私「ふえっ」

するとレオナルドが耳元でこう言った。

レ「(バラすぞ)」

ピタッ

私「………」

父「リナ。どうした?」

父には聞こえなかったようだ。

レ「僕に抱かせてください」

父「いや、悪いが赤ちゃんはデリケートなんだ」

レ「リナ。僕に抱っこされたいよね?」

私「……」

汗が出てきた。

レ「ね?」 ニッコリ

私「だ~!」

レオナルドの方へ手を伸ばした。

父「じゃあ、ソファに座って」

レオナルドがソファに座ると私を渡した。
レオナルドはじっと私を見てる。

この時、私は自分では分からなかった。
ものすごく動揺して目がフルに泳いでいたらしい。

レ「リナ。“レオナルド”って言ってごらん」

私「……」

レ「(知られたくないだろう?)」

私「あうっ」

レ「“レオナルド”」

私「レ…オ…」

父「ずるい! リナ、“パパ”って呼んでごらん!」

こ、怖い。 目がかっぴらいてる!!

レ「。リナが怖がっていますよ」

私「パ…パぁ…」

父「リナ!私の可愛い天使!
陛下、聞きましたか!今日の尊い日を祝日に制定しましょう!」

陛「真面目な副団長は親バカだったのだな」

そこに王子が帰ってきた。

エ「何でレオナルドが」

レ「父上、僕 リナがいいです」

宰「ん?」

レ「お嫁さんです」

父「リナはまだ早い!」

レ「リナに決めました」

私「う~!」

父「リナが嫌がっているから」

レ「。リナは赤ちゃんですよ?
婚約の話をしてるなんて分かる訳がないじゃないですか」

父「そ、それは…」

エ「私もリナが、」

レ「エリオットはヴァイオレット王女と婚約してるだろう。

リナ、君を理解できるのは僕だよ。
(10年以上 辛い妃教育を受けたい?)」

ビクッ!

それは嫌!!

私「や…」

涙を浮かべた。

レ「リナ。僕のお嫁さんになろうね。
(他の男は助ける力は無いよ)」

私「だ~!レ~!」

レ「よしよし。決まりだ。
いいですよね?父上、お義父上」

宰「副団長」

父「本当に?」

コクン

私が頷いたことで、そのまま婚約した。


屋敷に帰り、兄に抱っこされた。

あれ?

エリオット王子、レオナルド・エスラン公子、隣国のヴァイオレット王女、そして最初のイザベラ・アブリック……

これって“貴公子の秘め事”じゃない!!


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