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フィオルド家の再会

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パパが事情の説明と、署名をもらいにガードナー領へ向かった。お祖父様も一緒だ。ガードナー領からサットン領に向かう。

私とケイン様は大公邸に移り、パパの帰りを待つことになった。上の異母弟アルヴィアは学生寮に戻っていた。下の異母弟は護衛を連れて興味津々に職業見学に出かけて行く。

ちょっと気まずいけど、大公妃ロクサンヌ様が少しずつ関わろうとしてくださっているように感じた。
昼食と夕食は一緒で、センティアルールみたいなものを少しずつ会話の中に盛り込み、教えようとしてくださっているのだと感じた。

「え? テーブルに赤と黄色い花があったら 歓迎していませんって意思表示なのですか!?」

「赤の割合が多ければ嫌いと言っているようなものね。黄色の割合が多ければ早く帰ってと言っているの」

「招待しなきゃいいのに」

「…確かに」

「あ、すみません。
他にもありますか?」

「大きな花瓶に花が一本だと あなたに興味無しとか退屈という意味ね」

「貧しくてお花の用意が出来ない家は大変ですね。意地でも花を用意しないと誤解されますね」

「…そのときは一輪挿しの花瓶にするか、何も飾らないかね」

「なんだか邸宅訪問が怖くなってきました」

「ふふっ サラ様にそんなことをする度胸のある人はいないわ」

聞かなきゃ良かったわ。

「赤い花だけだと天敵みたいな扱いですか?」

「単色は変な意味を持たせていないから大丈夫よ」

「では間違わないようにいつも単色にします」



半月待った結果、パパに同行していた騎士がひとり先に到着した。

「サラ姫様、サットン卿、宿泊のお支度をお願いします。閣下とは王城で待ち合わせとなります」

「分かりました」


荷造りをして3時間馬車を走らせ王城へ到着すると、イザーク従兄様が待っていた。

「サラ、サットン卿、見つからない内に早く」

はい?誰に?

ついて行くと離れの宮に通されて、部屋に入るとフィオルド公爵夫妻とお母様が抱き合っていた。

「お母様!?」

「サラ!」

涙を流していたお母様に抱きしめられた。

「馬車ごと転落して流されて見つからないって連絡を貰ったときは、駄目だと思ったわ」

「心配をおかけしました」

「泳ぎを教わっておいて良かったわね。
こっそりリオと泳いで帰って来るたびに怒っていたけど、役立ったのね」

「絶対に泳げた方がいいです」

「記憶は戻っているのよね?」

「はい。健康そのものです」

「駆け付けなくてごめんね」

「お母様は離れられませんもの。
ですが今回は?」

「大公閣下が有能な事務官を代わりに貸してくださったのよ。だから安心して来ることができたの」

「お祖父様とお祖母様とは仲直りしましたか?」

「したわ。ちゃんと謝ったわ」

「良かったです」

「もうすぐ国王陛下がいらっしゃいます。それまで経過を報告をするわね。
学園は留年だというので退学にしたわ。
直ぐにセンティアの王立学園に編入して1ヶ月しかないけど通って卒業試験を受けさせます。
サラ。勉強漬けになるけど頑張りなさい」

「はい、お母様」

次はお父様が書類をテーブルに並べながら説明してくれた。

「サットン家から、養子縁組の書類に署名を貰ってきた。サラとの婚姻のためにフィオルド公爵籍に入ってもらう。
サラはブランパーン家の籍に移す」

「でも…」

「大公妃が許可をしている」

「はい」

「どちらも今 手続きをする。
出す側と受ける側の署名は済んでいるから、後は本人の署名だけだ。
サラはここ、サットン卿はここ」

「「はい」」

署名を終えた。

「サラ、サットン卿。次は婚約の署名だ。名前は新しい家名を書くように」

「「はい」」

緊張しながら署名をした。

大公邸うちの近くに屋敷を建てる。大公領は広いが出来るだけ近くにしたい。
いいかな、サットン卿…いや、フィオルド卿」

「お言葉に甘えさせていただきます。皆様、ケインとお呼びください」

「屋敷が建って住める状態になったら式を挙げる。
そのときに陛下が伯爵位を渡し 名も与えてくださる。2人ともいいね?」

「「はい」」

「フィオルド公爵、ソフィア。なんとか参列していただけますか」

「もちろんです」

「必ず参列します」

「ケインは婚姻までフィオルド邸に住み、サラも卒業までフィオルド邸から通わせていただく。
いいね?」

「「よろしくお願いします」」

婚約式はしなかったけど、これで私はケイン様の婚約者になった。


国王陛下と宰相様が入室し、全ての書類に受理の印章を捺した。

「会ったばかりの姪が もう花嫁か」

「その前に制服姿をお見せできそうです」

「レノーには見せなくていいからな」

「? はい」

「まあ、国外公務に出したから卒業には間に合わないだろう。
書類は全て整ったから全員でフィオルド邸に行きなさい。制服は直ぐに届けさせよう」

「「はい」」

そして、陛下がお母様の方へ身体を向けた。

「ソフィア・ガードナー夫人。父と母とエリオットが申し訳ないことをしました。貴女とサラに充分な補償をします」

「ありがとうございます」

「ソフィア。今の若きガードナー侯爵とは血縁は無いと聞いたわ。
侯爵が成長して任せられるようになったとき、第三の人生を実家で過ごさない?」

「ありがとうございます、お母様。
私としましてはガードナー領で骨を埋めようと思っておりますが、この一連のことを告げたら荒れて 私のことは嫌がるでしょう。あの子はずっとサラが大好きでしたから。
ですが、サットン家のご令嬢に公に求婚して受け入れて貰ったのですから、婚約したも同然です。“貴方が先に婚約したクセに”と開き直るつもりです」

「ジュネースの国王陛下とは話をつけてきましたので、戦争を望まない限りガードナー家やサットン家に手出しをしないでしょう。ユリス殿下には陛下から話してくださるそうです」

「パパ、ありがとうございます」


この後、フィオルド公爵邸に移り、お母様は1週間滞在してガードナー領に戻った。

私は学園に通いだした。
大公女という身分と1ヶ月と少ししか通わない異例さで、周囲はぎこちないけど、卒業試験に向けて忙しくて気にしている余裕は無かった。


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