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揺さぶり

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【 レノー王太子の視点 】


「なあ、イザーク。女はあんなに か弱いものなのか?」

「もしかしてサラが倒れたからですか?」

「細いし軽いし柔らいし」

「それは王太子妃だって同じでしょう」

「同じか?」

「閨事はあるのでしょう?」

「……確かにあいつも女の体だが、なんかサラは違うんだ。自ら守ってやらなきゃいけない気になる。
従妹だからだろうな」

「……」

「サラに母上とエリゼの分を買わされて、届けさせたけど、エリゼなんか珍しいものを見たかのように驚いているし 母上なんか熱でもあるのかなんて言うんだぞ?」

「どれだけ贈り物をしていないんですか」

「誕生日以外は全く無いな。しかも選んでないし」

「兄上!?」

「あんなもの、本人が選んで請求だけすればいいじゃないか。どうせ好みが煩いのだから」

「気持ちの問題です。だったら何故 サラの物は自ら選ぶのですか」

「サラは別だろう。母上は親だし エリゼは他人だ」

「その言葉、絶対に王太子妃に聞かせては駄目ですからね」

「事実だろう」

「他人じゃありません。妻であり家族じゃないですか」

「契約に縛られた他人だ。地位と金を与える代わりに世継ぎを産み公務をする。そうだろう?
エリゼが純粋に私を慕って婚姻したと思うのか?」

「それは…」

「子も産まれていないしな」

「……」

「つまり家族はサラだろう。まだ学生だし守ってやらないと。私が決めてやるのは普通じゃないか?
しかし、叔父上を使うところは憎たらしいが、それでも可愛いと思えてしまう。妹という存在はすごいな」

「……」

「あの反抗的な態度も 嫌がるサラも許せてしまう。
すごく楽しいんだ」

そこに兄上の侍従が、サラが目を覚ましたと聞いた。

「サラの部屋に行くぞ」

「お待ちください。姫様は就寝なさいました。王弟殿下が誰一人面会をお許しになっておりません」

「ずるいよな。いつも叔父上がサラを独り占めして」

「殿下、姫様は記憶が戻ったそうです」

「本当か!」

「だから倒れたのかもしれませんね」

「記憶が戻ったので休学になってしまった学園のことを気になさっています。王弟殿下から国王陛下に、姫様が留年になるのかどうかジュネースへ問い合わせをして欲しいと仰いました。姫様は3年生ですので、試験を受けるなりすれば卒業させてもらえるのか交渉するようです」

「留年するかもしれないんだな?」

「そのときは、3年生の新学期が始まるまで、王弟殿下の元で暮らし、学園が始まる半月前にフィオルド公爵夫妻と一緒にガードナー領に戻るそうです」

「つまり留年すればもう少し一緒に居られるのだな?
学園なんて卒業しようがしまいが どうでもいい。いっそのこと退学して ずっと此処に住めばいい。
父上も姪が可愛いだろうし、次は私が国王だ。サラ1人くらい面倒見れる」

「兄上…」


翌朝、サラが食堂に現れた。本当に大丈夫か 熱などないか確認しているだけなのに近いと言う。
心配しているだけなのに何が悪い!

サラはイザークと叔父上の間に座った。
私は正面に座りサラを見つめたが目を合わそうとしない。
何故こんなに避けるんだ!


昼に母上が呼び出していたのは知っていたが、サロンとは知らずに探してしまった。
サロンに行くと2人で食事をしていた。

もしも留年になったらと話をし出すも、母上が邪魔をし、サラが退室した。

「母上、何なのですか」

「私が言いたいわ。サラのことになると礼儀も忘れて判断力も馬鹿になるのね」

「確かにノックしませんでしたが、」

「それももちろんだけど、ずっとよ。
従兄妹だとしても駄目よ。実の兄妹だとしてもあんなにベタベタ触れたりしない。頬を合わせたときはびっくりしたわ」

「熱がないか心配だっただけです」

「エリゼにだってしたことないんじゃない?」

「エリゼとサラは違います。サラは歳下で守るべき存在です」

「そうだけど、一番はサラではなくエリゼであるべきよ」

「そうは思いません」

「教会で誓ったじゃない。貴方の正妃なのよ!?」

「エリゼは契約上の家族ですが、サラは血縁です」

「そうだけど」

「今困っているのも守られるべきなのもサラです」

「…だけど振り回すのは止めなさい」

「多少強引ですが、サラはその方が、」

「それで貴方は周りを巻き込んでいるじゃない。
宰相補佐官を使ってサラと遊びに行くスケジュールを組ませたでしょう。しかも全部貸切にして。
サラは気にしていたのよ。宰相の右腕なら陛下と国を支える存在のはずなのに、巻き込んで申し訳ないと言っていたわ」

「気にし過ぎです」

「お黙りなさい!!」

「っ!」

「ガッカリだわ。こんなことも分からないなんて。
本気で言っているなら陛下と貴方の将来について考え直さねばならないし、再教育をしなくてはならないわ」

「母上」

「そんな状態ではサラに愛想を尽かされるわよ」

「っ!」

「貴方はいくつになったの。
王太子の任命は簡単じゃないのよ。一度失ったらもう戻せないわ。イザークという選択肢があるのだから。
王太子として尊敬される行動を取りなさい。貴方の思いつきで周囲を巻き込むのは止めなさい。私の言っていることは理解出来るわね?」

「はい」

「サラに対してもそうよ。他の令嬢と同じように距離感に気を付けなさい。サラは貴方を従兄としてしか見ていないのだから」

「…はい」


サラが嫌がってる?そんなことはないはずだ。
だが母上の指摘を無視する訳にもいかず、気を付けようと思った矢先に揺さぶられた。

「ケイン様!」

「サラ?」

「迷惑をかけてごめんなさいっ」

「記憶が戻ったのだな!?」

「全部」

夕方前に到着したサットン家の元近衞騎士にサラが抱き付いたからだ。
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