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次男にも光を

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大公閣下を探していると、ちょうどトイレに席を外したようだ。

待ち伏せして近くの部屋に押し込んだ。

「サシャは向き不向きを探る自由はありますか」

「どうしたんだ?」

「大公家は跡継ぎになれないサシャがやりたいことを見つけたら支援するくらいの器はありますよね?」

「まあ…」

「例え刺繍職人になっても」

「ええ!?」

「刺繍職人は例えですよ。
将来の不安を抱えているのです。
お金待ちですし、犯罪さえやらなければ靴職人でもいいですよね?」

「靴職人は…」

「その辺の下男を捕まえて作らせた靴を一生閣下は履きますか?」

「苦痛だな」

「サシャは王子ではなく大公家の息子で跡継ぎではありません。あの性格は多分コツコツ型です」

「コツコツ型?」

「一人で根を詰めて何かをやることです。

そもそもサシャに何を望んでいるのですか?
大公家の思惑通りに生きなきゃならないならサシャにも財産をしっかりと彼名義で渡すべきです」

「サシャに?」

「決められたことをさせるならば長男だけに全財産を受け継がせるのは不公平過ぎます。
そんなことだから後継者争いに血が流れるのです」

「サシャが悩んでいるのだな?」

「若いのですから様々な経験をさせて向き不向きを探ればいいのです。にはそうさせてあげられる力がおありですよね?」

「……勿論だ。はその力がある」

「じゃあ、ちょっと来てください」

私は閣下の手を繋ぎ引っ張って別棟に戻った。


ア「ち、父上!」

サ「父上…」

私「さあ、証明してください」

父「サシャ。お前はまだ子供だし、大公家は富も力もある。人の道に外れなければ、やれることや得意なことを探すといい。
大公国といっても辺境伯に近いレベルだ。大公としてお前の父親として可能性を与えられる。相談にも乗るし、力にもなる」

サ「靴職人でも?」

父「下男の作った靴は履きたくないからな」

サ「父上?」

ア「父上、それでは大公家の者として、」

父「大公家の財産は莫大だ。そのほとんどをアルヴィアが継ぐ。少しくらい弟に自由にさせてやれるくらいの度量を待て。
大公家の息子としてサシャに役割を持たせるなら財産を平等に分ける」

ア「……」

サ「そんなに貰っても困ります」

父「そうだな。サシャはそんなにお金があっても困っちゃうな」

ア「分かりました。サシャに任せたら詐欺に遭っちゃいますから、私が面倒をみます」

サ「兄様、ありがとうございます。僕、悪事だけはしませんから」

私「サシャは可愛い子ね」

父「サラ、褒めてくれ」

私「お父様、流石でございます」

父「そうか」

私「そうですわ」

レ「ハハハハハッ!あの叔父上がそうなるのですね」

父「……」

私「お父様、本館までエスコートしますわ」

父「私の天使にエスコートされようかな」

サ「僕もエスコートします!」

父「サラ、抱っこして連れて行っていいか?」

サ「お父様、姉様を抱っこしたらエスコートが無くなっちゃいます」

父「そこをなんとか」

私「仕方ないですね。ちょっとだけですよ」

父「っ!」

私「泣かないでください。お仕置きしてる気分になりますから」

 


3人がいなくなった別棟では***


レ「いや~、すごいな。叔父上が陥落してるよ。
尻に敷かれてると言ってもいいのかもな」

イ「前に初めて会いに行った時は娘が怖いって頭抱えていましたけどね」

レ「片鱗はあったわけだな。

それにしても勿体無いな」

イ「何がですか?」

レ「サラだよ。彼女がセンティアで育ってくれていたら…もしくは10年早く会っていたら良かったと思ってな」

イ「小さな従妹と遊びたかったのですか?」

レ「伴侶だよ。

媚びないし、裏がない。視点が面白いし、固執した考えを砕いてしまう。

それに、自分より大きな体の男を躊躇なく湖から救い出す度胸がある。

湖といっても深さもあり、川幅のある川へ水を流している。将軍の体格はかなり大きい。間違いなく2倍以上体重のある男をあの細い体で馬車から引き摺り出した。浮力があったとしても岸に上半身をあげてるのはかなり大変だ。

その上で、底に沈んだカムール卿の元まで潜り、手綱をナイフで切り岸まで運んだ。

さっき確認したが肩も腕も細かった。

流木に当たった頃には力を使い果たしたのだろう。


救ったのは赤の他人だ。将軍には世話になっていたかもしれないがカムール卿は他国の知らぬ騎士。自分の命と引き換えにしてまで救おうとする令嬢など居やしない。

転落前、湖に差し当たると、通る道の地形を見て湖に転落する可能性を指摘して対策を取った。

泳げるよう身軽にし、脱出のために窓を開け、ドアの鍵を開けた。

そして直ぐ落石があった。

偶然の事故だが、準備それがなければ、対処法それを知っていなければ将軍は生還できなかった。

この中で、それをやってのける令嬢を知る者は?
男でも稀だろう。私でもやらない」

イ「確かにやりませんね」

レ「それを得意な者がやればいいと言うのだからな。

しかも温和な国王とは違い、怒らせると恐ろしい叔父上があれだけメロメロなのだから面白い。
いくら最愛の女との子でも、つまらない娘だったならあそこまでにはならない。叔父上は楽しいんだろうな。

アルヴィア。サラを敵に回すなよ」

ア「そんなつもりはありません」












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