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拾い主の気持ち

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【 ノアム・アルク子爵の視点 】



ブランパーン大公……
国王陛下の実弟……

「ご主人様?」

「バート。ブランパーン大公閣下の情報を集めてくれ」

「かしこまりました」


以前調べさせたときはアンジェリーヌらしき人物の捜索願は出されておらず、手配書も無かったと報告をもらっていた。

醜聞を恐れているのか、隣国の娘で祖国内では探しているのか、命を狙われたのか。

何であっても大公家だけはハズレであって欲しい。そう祈りながら過ごした。

どんな仕草も可愛くて、笑うと心が潤って、見つめられたくて、抱きしめたくて、口付けをしたくて、膣内ナカに挿れたくて、鳴かせたくて、何も考えられなくなるほど快楽を与えたくて、俺だけしか考えられないようにしたくて、注ぎたくて、孕ませたくて、私の一部がアンジェリーヌの身体に根付いた証拠である俺達の子を産んで欲しくて…

アンジェリーヌに“愛しています”と言って欲しくて、“貴方の子を産みたい”と懇願して欲しくて…

君が産んだ私の子なら、バカみたいに溺愛できると今からでも思う。


1日置きに娼館に足を運ぶようになった。
そうでもしないと無理矢理アンジェリーヌを抱いてしまいそうだったから。

パトリシアは荒い客が顧客になったようで、ついに私に縋った。

「ごめんなさい!私が悪かったの!許して!」
 
「どうでもいい。他人なのだから話しかけないでくれ」

「助けて!言うことを聞くから、連れて帰って!」

「娼婦を?」

「妻にとは言わないわ、専属の女だと思ってくれたら」

「お前に処理してもらう必要はない」

「ノアム様!」

「アルク子爵様と呼べ」

「お願いします!」

「顧客が付いて良かったな」

「そんな!」



そんな日々を送っていると、バートが人払いをして報告を上げた。

「ご主人様、調査結果を申し上げます。

一つ、アンジェリーヌ様を見つけた日と同じ時期から王室は湖から下流に大規模な動員をかけています。
川沿いの町では遺体安置所と診療所にも立ち入り調査が入りました。
今現在もここよりもっと下流へ向かって人が動員されています。
ブランパーン大公閣下が指揮をとっているようです。

一つ、そこに異国の者が一緒にいるようで、“将軍”と呼ばれる隣国の武将が加わっているようです。

一つ、大公閣下は今年、婚外子の存在を公表なさいました。大公夫人と婚姻する前に公爵令嬢と恋人になっていて、ご令嬢は隣国で出産なさっています。大公閣下が認知なさった子は17か18歳の娘です。

母親の公爵令嬢は隣国の侯爵と婚姻し、産んだ大公閣下の娘は侯爵令嬢として育てられました。

一つ、隣国の王室も騒いでいるようで、何度も使者を寄越しています。

ここから組み立ていきますと、アンジェリーヌ様は大公閣下の娘で、隣国で育ち、大公閣下に会いに来る途中で事故に遭い川に流されたと考えられます。

隣国の将軍は令嬢の護衛を務めたのか、国使だったのかは分かりませんが同行していたのでしょう。

行方不明と公表することは王族が無防備だと公言してしまいます。誘拐されたり殺されたりする危険を回避したかったからかもしれません。女性なら孕ませて王族との血縁を望めますから。

そして例え遺体でも見つかるまで捜索を止めないでしょう」

「よりにもよって大公家の娘かもしれないだなんて」

「ご主人様…」 

「俺はアンジェリーヌを愛してしまったんだ。なのに大公閣下の娘なら婚姻を許してもらえない。
貧しくはないが富豪でもない田舎の子爵家に渡す訳がない」

「捜索しているのはもっと下流です。落ち着いてください」

「だが」

「アンジェリーヌ様さえ承諾してくだされば平民との婚姻として娶れるかもしれません。我々は本人が記憶喪失で服も平民用だったことから平民だと思ったと申せます。捜索の公表はされていないのですから我々には分かりません。似顔絵さえ出ていないのですから気付かなかったとしても不思議ではありません。今日からアンジェリーヌ様のお心を掴みましょう」

「アンジェリーヌは俺を異性として見ていない。俺のことは恋愛対象ではないんだ」

「ご自身が平民だと思っていれば子爵で雇い主のようなご主人様に一線を引くのは自然です。
身分差など関係ないと示さねばなりません」



最後の足掻きをしようとアンジェリーヌの扱いを少しずつ変えた。
毎朝一緒に庭を歩いて花を眺め、ゆっくり朝食を取った。

大した行き先ではないが、外に連れ出した。
牧場や遺跡、花畑。
危ないからと手を繋ぎ、外で昼食を取り、買い物をして帰る。

何日か過ごすうちにアンジェリーヌは少し甘えてくれている気がしてきた。

だが、娼館通いは続けていた。
無理矢理ことを成さないように。





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