46 / 73
事故の時
しおりを挟む
【 ケインの視点 】
あと1日もあれば到着するところまで来ると湖があり、崖の道を通っていた。
私は馬に乗り、前方の隊列に紛れていた。
突然後方の騎士が“落石だ!”と言った瞬間、振り向いたが、その時には馬車に大きな石が直撃し、馬車が転落している所だった。
「サラ!!」
湖に落ちた馬車はどんどん沈んでいく。
隊長が引き返し崖下に回るというので急いだ。
そこには岸辺でお祖父様が倒れていて、側で騎士が土下座をしていた。
「アダム!姫はどうした!」
「流されて、消えました」
話を聞いてみると、
「私は手綱が絡み、湖の底に馬車ごと沈みました。そして気が付いたら浮上していました。
苦しくて苦しくて…水を吐きました。
誰かが泳いで私を岸に運んでくれたのです。
そこに流木が…。頭に当たり流されている者の顔が見えました。…姫様でした。私は泳ぎが不得意で飛び込むことが出来ませんでした」
震えながら額を地につけた。
「何ということだ!」
「申し訳ございません!!」
「下流を捜索しろ!
将軍を荷馬車へ運べ!」
30分後にお祖父様が目を覚まして状況を伝えると、自分も探すと言い出した。
「サラは儂を助け、御者台にいた騎士を助けに潜った」
つまりサラはかなり泳ぎが上手だということだ。
探しに加わろうとするお祖父様を止めた。
「お気持ちは分かりますがその怪我では足手纏いです。何かあれば助けたサラが悲しみます。
先に大公邸に向かってください。
2日経っても見つからなければサットン家とガードナー家に事情を書いて早馬を出さなければなりません。大公邸に行き事情を話してください」
渋るお祖父様を乗せた荷馬車は先へ進み、別の騎馬隊員が事故を知らせ 応援を寄越してもらうために全速力で大公邸に走ってもらった。
やっと気持ちを認めたのに、目の前でサラが消えた。
結局、17日経った今もサラは見つからなかった。
【 ブランパーン大公の視点 】
やっと娘に会えると心を躍らせていたのに…。
「姫様を乗せた馬車は落石の直撃を受け、湖に落ち、流されて行方不明でございます。申し訳ございません!」
「流された?」
「はい」
「サラが?」
「はい。
この後荷馬車で、怪我人が2人到着します。
サットン家の将軍と御者をしたうちの騎士です。
2人も姫様と一緒に転落して溺れました」
「何故2人が助かってサラが行方不明になるんだ!」
「姫様はまず将軍と一緒に沈む馬車から脱出し、怪我を負った将軍を岸まで運ぶともう一度潜り、手綱が絡んで溺れた騎士を助けました。騎士を陸に押し上げている最中に流木が姫様に当たり流されてしまいました。
残る隊は下流を捜索中です。
人集めておけ。支度をしてくる」
アルヴィアを部屋に呼び説明しながら支度を始めた。
「姉上が!?」
「長丁場になるかもしれない。頼んだぞ」
「私も行きます!」
「駄目だ。騎士も新たに連れて行く。全体の半分近く居なくなり手薄だ。しっかり屋敷を守れ。
サラが見つかってここに来た時にゆっくり安心して寛げるようにしておいてくれ」
「必ず、連れ帰ってください」
結局、17日経ったが生きているのか死んでいるのかも分からなかった。
【 リオの視点 】
ブランパーン大公家から早馬が到着した。
伝令はかなり慌てていた。
直接渡すように任じられたようだ。
手紙を読むと母上のところへ行き、知らせを告げた。
「母上。ブランパーン大公国手前でサラが行方不明になりました」
「サラが!?」
「落石で馬車が押されて湖に落ち、同行していたサットン将軍と騎士を助けたところで流木に当たり流されたそうです。
数日前の手紙なので今は見つかっているかもしれませんが行きます。サラは泳ぎがとても得意ですから生きている可能性は高いです」
「なりません。貴方は侯爵です。向こうで大公家と王家が血眼で探すはず。ここで待ちましょう」
「母上!?」
【 サットン伯爵家の視点 】
「シメオン様!ブランパーン大公家から伝令が!」
シメオンが急いでエントランスへ向かいペーズリーも後を追った。
渡された手紙と伝令の言葉を聞いて血の気が引いた。
お祖父様を助けてサラが流された!?
シメオンもペーズリーも祈ることしかできなかった。
【 ユリスの視点 】
侍従が私に報告をした。
「一行に何かあったかもしれません」
「一行? サラのことか?」
「はい。国境でブランパーン大公家からの伝令が領地にいるガードナー侯爵と王都のサットン家に向かったそうです」
「サットン家に行く」
侍従と護衛を連れてサットン家に向かうと異様な雰囲気だった。
「ブランパーン大公閣下からの伝令は何だったのか教えてほしい」
「サラが行方不明になりました。
昨日到着した手紙は数日前に書かれたものですので今は見つかっているかもしれませんが」
「サラが行方不明!?」
手紙を見せてもらい、進展があれば知らせてほしいと告げて帰城した。
父上に報告して、私も行くと言ったが駄目だと言われた。
「唯一の王子を危険に晒すことを叶えてやれない。しかもセンティア国内で起きたことだ。祈るしかない」
母上がもう一人産んでいたら…
あの時、追い払うようなことを言わなければ…
センティア行きなど考えず、私と過ごす約束をしていてくれたかもしれない!
あと1日もあれば到着するところまで来ると湖があり、崖の道を通っていた。
私は馬に乗り、前方の隊列に紛れていた。
突然後方の騎士が“落石だ!”と言った瞬間、振り向いたが、その時には馬車に大きな石が直撃し、馬車が転落している所だった。
「サラ!!」
湖に落ちた馬車はどんどん沈んでいく。
隊長が引き返し崖下に回るというので急いだ。
そこには岸辺でお祖父様が倒れていて、側で騎士が土下座をしていた。
「アダム!姫はどうした!」
「流されて、消えました」
話を聞いてみると、
「私は手綱が絡み、湖の底に馬車ごと沈みました。そして気が付いたら浮上していました。
苦しくて苦しくて…水を吐きました。
誰かが泳いで私を岸に運んでくれたのです。
そこに流木が…。頭に当たり流されている者の顔が見えました。…姫様でした。私は泳ぎが不得意で飛び込むことが出来ませんでした」
震えながら額を地につけた。
「何ということだ!」
「申し訳ございません!!」
「下流を捜索しろ!
将軍を荷馬車へ運べ!」
30分後にお祖父様が目を覚まして状況を伝えると、自分も探すと言い出した。
「サラは儂を助け、御者台にいた騎士を助けに潜った」
つまりサラはかなり泳ぎが上手だということだ。
探しに加わろうとするお祖父様を止めた。
「お気持ちは分かりますがその怪我では足手纏いです。何かあれば助けたサラが悲しみます。
先に大公邸に向かってください。
2日経っても見つからなければサットン家とガードナー家に事情を書いて早馬を出さなければなりません。大公邸に行き事情を話してください」
渋るお祖父様を乗せた荷馬車は先へ進み、別の騎馬隊員が事故を知らせ 応援を寄越してもらうために全速力で大公邸に走ってもらった。
やっと気持ちを認めたのに、目の前でサラが消えた。
結局、17日経った今もサラは見つからなかった。
【 ブランパーン大公の視点 】
やっと娘に会えると心を躍らせていたのに…。
「姫様を乗せた馬車は落石の直撃を受け、湖に落ち、流されて行方不明でございます。申し訳ございません!」
「流された?」
「はい」
「サラが?」
「はい。
この後荷馬車で、怪我人が2人到着します。
サットン家の将軍と御者をしたうちの騎士です。
2人も姫様と一緒に転落して溺れました」
「何故2人が助かってサラが行方不明になるんだ!」
「姫様はまず将軍と一緒に沈む馬車から脱出し、怪我を負った将軍を岸まで運ぶともう一度潜り、手綱が絡んで溺れた騎士を助けました。騎士を陸に押し上げている最中に流木が姫様に当たり流されてしまいました。
残る隊は下流を捜索中です。
人集めておけ。支度をしてくる」
アルヴィアを部屋に呼び説明しながら支度を始めた。
「姉上が!?」
「長丁場になるかもしれない。頼んだぞ」
「私も行きます!」
「駄目だ。騎士も新たに連れて行く。全体の半分近く居なくなり手薄だ。しっかり屋敷を守れ。
サラが見つかってここに来た時にゆっくり安心して寛げるようにしておいてくれ」
「必ず、連れ帰ってください」
結局、17日経ったが生きているのか死んでいるのかも分からなかった。
【 リオの視点 】
ブランパーン大公家から早馬が到着した。
伝令はかなり慌てていた。
直接渡すように任じられたようだ。
手紙を読むと母上のところへ行き、知らせを告げた。
「母上。ブランパーン大公国手前でサラが行方不明になりました」
「サラが!?」
「落石で馬車が押されて湖に落ち、同行していたサットン将軍と騎士を助けたところで流木に当たり流されたそうです。
数日前の手紙なので今は見つかっているかもしれませんが行きます。サラは泳ぎがとても得意ですから生きている可能性は高いです」
「なりません。貴方は侯爵です。向こうで大公家と王家が血眼で探すはず。ここで待ちましょう」
「母上!?」
【 サットン伯爵家の視点 】
「シメオン様!ブランパーン大公家から伝令が!」
シメオンが急いでエントランスへ向かいペーズリーも後を追った。
渡された手紙と伝令の言葉を聞いて血の気が引いた。
お祖父様を助けてサラが流された!?
シメオンもペーズリーも祈ることしかできなかった。
【 ユリスの視点 】
侍従が私に報告をした。
「一行に何かあったかもしれません」
「一行? サラのことか?」
「はい。国境でブランパーン大公家からの伝令が領地にいるガードナー侯爵と王都のサットン家に向かったそうです」
「サットン家に行く」
侍従と護衛を連れてサットン家に向かうと異様な雰囲気だった。
「ブランパーン大公閣下からの伝令は何だったのか教えてほしい」
「サラが行方不明になりました。
昨日到着した手紙は数日前に書かれたものですので今は見つかっているかもしれませんが」
「サラが行方不明!?」
手紙を見せてもらい、進展があれば知らせてほしいと告げて帰城した。
父上に報告して、私も行くと言ったが駄目だと言われた。
「唯一の王子を危険に晒すことを叶えてやれない。しかもセンティア国内で起きたことだ。祈るしかない」
母上がもう一人産んでいたら…
あの時、追い払うようなことを言わなければ…
センティア行きなど考えず、私と過ごす約束をしていてくれたかもしれない!
684
お気に入りに追加
1,634
あなたにおすすめの小説
断る――――前にもそう言ったはずだ
鈴宮(すずみや)
恋愛
「寝室を分けませんか?」
結婚して三年。王太子エルネストと妃モニカの間にはまだ子供が居ない。
周囲からは『そろそろ側妃を』という声が上がっているものの、彼はモニカと寝室を分けることを拒んでいる。
けれど、エルネストはいつだって、モニカにだけ冷たかった。
他の人々に向けられる優しい言葉、笑顔が彼女に向けられることない。
(わたくし以外の女性が妃ならば、エルネスト様はもっと幸せだろうに……)
そんな時、侍女のコゼットが『エルネストから想いを寄せられている』ことをモニカに打ち明ける。
ようやく側妃を娶る気になったのか――――エルネストがコゼットと過ごせるよう、私室で休むことにしたモニカ。
そんな彼女の元に、護衛騎士であるヴィクトルがやってきて――――?
婚約者を想うのをやめました
かぐや
恋愛
女性を侍らしてばかりの婚約者に私は宣言した。
「もうあなたを愛するのをやめますので、どうぞご自由に」
最初は婚約者も頷くが、彼女が自分の側にいることがなくなってから初めて色々なことに気づき始める。
*書籍化しました。応援してくださった読者様、ありがとうございます。
5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?
gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。
そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて
「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」
もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね?
3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。
4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。
1章が書籍になりました。
婚約者が知らない女性とキスしてた~従順な婚約者はもう辞めます!~
ともどーも
恋愛
愛する人は、私ではない女性を抱きしめ、淫らな口づけをしていた……。
私はエスメローラ・マルマーダ(18)
マルマーダ伯爵家の娘だ。
オルトハット王国の貴族学院に通っている。
愛する婚約者・ブラント・エヴァンス公爵令息とは七歳の時に出会い、私は一目で恋に落ちた。
大好きだった……。
ブラントは成績優秀、文武両道、眉目秀麗とみんなの人気者で、たくさんの女の子と噂が絶えなかった。
『あなたを一番に愛しています』
その誓いを信じていたのに……。
もう……信じられない。
だから、もう辞めます!!
全34話です。
執筆は完了しているので、手直しが済み次第順次投稿していきます。
設定はゆるいです💦
楽しんで頂ければ幸いです!
全てを捨てた私に残ったもの
みおな
恋愛
私はずっと苦しかった。
血の繋がった父はクズで、義母は私に冷たかった。
きっと義母も父の暴力に苦しんでいたの。それは分かっても、やっぱり苦しかった。
だから全て捨てようと思います。
最愛の側妃だけを愛する旦那様、あなたの愛は要りません
abang
恋愛
私の旦那様は七人の側妃を持つ、巷でも噂の好色王。
後宮はいつでも女の戦いが絶えない。
安心して眠ることもできない後宮に、他の妃の所にばかり通う皇帝である夫。
「どうして、この人を愛していたのかしら?」
ずっと静観していた皇后の心は冷めてしまいう。
それなのに皇帝は急に皇后に興味を向けて……!?
「あの人に興味はありません。勝手になさい!」
(完結)「君を愛することはない」と言われて……
青空一夏
恋愛
ずっと憧れていた方に嫁げることになった私は、夫となった男性から「君を愛することはない」と言われてしまった。それでも、彼に尽くして温かい家庭をつくるように心がければ、きっと愛してくださるはずだろうと思っていたのよ。ところが、彼には好きな方がいて忘れることができないようだったわ。私は彼を諦めて実家に帰ったほうが良いのかしら?
この物語は憧れていた男性の妻になったけれど冷たくされたお嬢様を守る戦闘侍女たちの活躍と、お嬢様の恋を描いた作品です。
主人公はお嬢様と3人の侍女かも。ヒーローの存在感増すようにがんばります! という感じで、それぞれの視点もあります。
以前書いたもののリメイク版です。多分、かなりストーリーが変わっていくと思うので、新しい作品としてお読みください。
※カクヨム。なろうにも時差投稿します。
※作者独自の世界です。
今日も旦那は愛人に尽くしている~なら私もいいわよね?~
コトミ
恋愛
結婚した夫には愛人がいた。辺境伯の令嬢であったビオラには男兄弟がおらず、子爵家のカールを婿として屋敷に向かい入れた。半年の間は良かったが、それから事態は急速に悪化していく。伯爵であり、領地も統治している夫に平民の愛人がいて、屋敷の隣にその愛人のための別棟まで作って愛人に尽くす。こんなことを我慢できる夫人は私以外に何人いるのかしら。そんな考えを巡らせながら、ビオラは毎日夫の代わりに領地の仕事をこなしていた。毎晩夫のカールは愛人の元へ通っている。その間ビオラは休む暇なく仕事をこなした。ビオラがカールに反論してもカールは「君も愛人を作ればいいじゃないか」の一点張り。我慢の限界になったビオラはずっと大切にしてきた屋敷を飛び出した。
そしてその飛び出した先で出会った人とは?
(できる限り毎日投稿を頑張ります。誤字脱字、世界観、ストーリー構成、などなどはゆるゆるです)
hotランキング1位入りしました。ありがとうございます
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる