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墓参り

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ガタゴト揺られながら景色を見ている。

学園を早退して急いで旅支度をして領地に向かった。

リオは怒っているだろうな。


馬車の旅はとても疲れるが、景色を見て、町に着くと少し店や町並みを見て回り宿に泊まるという楽しさがある。

いつもリオと一緒に通る道で滞在する町だけど、一人というだけで新鮮だ。
もちろん本当に一人ではない。御者、騎士を8名連れてきた。

「カミーラはお部屋で休んで」

「ですがお嬢様のお世話が」

「自分のことは自分でできるわ。服も一人で脱ぎ着できるものを選んで持ってきているし。飲み物が欲しければ宿の人に頼むわ。不自由のない部屋をとったのだから大丈夫よ。

カミーラを連れてきたのは男性騎士では同行し辛い場所もあるからよ。カミーラは護衛騎士であってメイドじゃないの」

「分かりました。何かございましたら壁を叩いてください」

「ありがとう。お疲れ様」



屋敷のベッドとは違い素朴なベッドだけど宿屋の中で一番いい部屋だ。

洗面所もあるし。

そろそろ日が暮れるのでカーテンを閉めた。

これだけ連れてくればリオは追って来られない。
私は令嬢として護衛がたくさん必要だけど、リオだって侯爵だし、まだ跡継ぎがいない。つまり唯一無二。旅には同じくらいの護衛が必要で、連れ出して後を追おうとすると屋敷の警備が手薄になってしまう。

母が危篤とか、領地で大災害とか、大事でもない限り、いくらリオが掌握している使用人達でも首を縦には振らないだろう。




何とか領地に着くと、お母様が出迎えてくれた。

「サラ!」

「お母様!」

懐かしい香りに抱きしめられて安心する。

「すごく会いたかったの」

「私もよ。寂しい思いをさせてごめんなさいね」

「そんなことない。お母様だけに苦労を背負わせてごめんなさい」

「貴女は子供なのだから謝らなくていいの。
さあ、中に入りましょう。疲れたでしょう。

みんなもご苦労様。中に入って休息をとってちょうだい」

その日は問題のない報告で終わらせて、翌日は過去の話をユリス殿下にしたことと、ユリス殿下が私のことを好きで求婚したこと、今も思いは変わらないと言われ困っていること。シヴィル公爵令嬢のことを話した。

「困ったわね」

「学園は卒業しなくては駄目?」

「一般の平民には嫁がせられないわね。直ぐに誘拐されて身代金を要求されるか酷い目に遭わされるわ。お金のある平民なら逆に令嬢を娶るメリットが欲しいから学園卒は望まれるし、貴族なら絶対よ」

「今から留学も無理だもの」

「後は出席日数を確保しながら休んで、成績は保つことかしらね」

「でも何でシヴィル公爵令嬢は私を下賤と言うのかしら。婚約者と仲がいいから?」

「……」

「ユリス殿下はいい方だけど結ばれる運命ではなかったのよ。早く理解してくださるといいのだけど」

「まさか好きだから打診が来たなんて思わなかったわね。打診のお手紙が来た時は、敢えて無害を望んだ政略結婚だと思ったわ」

「無害?」

「候補は有力な令嬢ばかりだったもの。
ユリス殿下より2つ歳上から5つ歳下までが当時の選抜基準だったと思うわ。

シヴィル公爵令嬢は名門で保守派筆頭。
バルチノ公爵令嬢は5歳下だったけど、夫人が隣国の第三王女だったし。
ノーラン侯爵令嬢は大臣の娘。
フィッシャー侯爵令嬢のお父上は留学先の西国の王子と親友になり、交易に一役買っているし。
ヴェルノワ伯爵令嬢のお父上は力のある外交官。
ロー伯爵令嬢の家門は富豪だし。
サットン伯爵令嬢のお祖父様は将軍のひとりだもの。  

うちは平凡な侯爵家だから選んだのかなって。
ユリス殿下に配慮できなかったわ」

「お母様、国内に心臓病に対応できる医師はいなかったの?」

「宮廷医がそうよ」

「じゃあ、お願いして診てもらえばよかったのに」

「一人許してしまえば後に続く者が出てきて収拾がつかなくなると判断したの」

「お父様が助かるなら」

「治せるか分からないのに?

もし治せず先立てば残されたリオがガードナー家がどんな風に後ろ指を刺されるか」

「お父様に会いたい」

「私も会いたいわ」



午前中にお父様のお墓に花とお菓子を持って行った。

戻ってくると屋敷には重厚な馬車と騎馬隊がガードナー邸の門を通過しているところだった。

「お母様、どなたでしょう。身分が高そうですが」

「サラ。隣のセンティア王国の王族だから失礼のないようにしてちょうだい」

「何でうちに隣国の王族が?」

「とにかく早く行きましょう」


続くように敷地に入ると馬車から降りた3人のうち1人はリオだった。

身を屈めたが、

「サラ。手遅れよ」

「だって~」

「怒っていなさそうだから大丈夫よ。
お待たせしてしまうから降りましょう」

馬車を降りるとリオと二人の男性が近付いた。

母の丁寧なカーテシーに私も続いた。

「ソフィア。会いたかった」

え?お母様!?

「サラも…どんなに会いたかったか」

「はい?」

私の返事に会いたかったと言ったおじ様は目を丸くした。一緒にいる歳上らしき青年は笑いを堪えた顔をしていた。

「ま、先ずは屋敷の中へどうぞ」



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