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警告

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学食に行く途中、人気の無い廊下に連れ出し対峙している。

「ユリス殿下」

「殿下はいらない」

「ユリス様、態度を以前と同じにしてください」

「私に我慢しろと?」

「その通りです」

何を言っているかというと、昨日想いを打ち明けたユリス殿下が私に対して甘いのだ。
大目に見過ぎという甘さではない。愛しい人への甘さだ。
蕩けるような顔をして、何かと触れてくる。
声色も甘い。

エレノア達も少し驚いていた。

「殿下には婚約者がおります。エレノアなら幼馴染という言い訳もあるかもしれませんが、私は学友です。他人からは婚約者のいる王族を惑わす女と見られてしまいますわ」

「ん~、間違っているな。婚約前から魅了されているのだから、割り込んだのは婚約者向こうだな」

「では、私は別に食事をとります」

「私を傷付けるつもりなのか」

「っ!」

「さあ、食事に行こう」


結局食堂でエレノア達と合流し食事を取るが、

「サラ。こっちのデザートも美味しそうだぞ」

そう言って自分のデザートを半分くれる。
お皿に置かれてしまえば断ることは出来ず食べた。

エレノア達は仮面の微笑みで良かったわねと言う。

そして食後は私の分のトレイをさっと取り、片付けてしまった。王族に片付けさせる私はどんな風に映るのだろうか。


午後の授業の前のお花摘みでエレノアが早口で質問攻めだ。

「(何!何があったの!)」

「(あ~)」

「(早く!早く!)」

「(好きなんだって)」

「(やっと言ったのね)」

「(知ってたの!?)」

「(気付かない方がおかしいわよ。
ユリスはいつもサラを特別に扱っていたじゃないの)」

「(そんなはずは)」

「(男子生徒を近寄らせないし、具合が悪そうだとすぐ気付いて医務室に連れて行くし、勉強だって丁寧に教えてくれるじゃない)」

「(勉強は、エレノアだって)」

「(私に教えてくれたことなんか無いわよ)」

「(ええっ!?)」

「(体裁があるから一緒にいただけよ)」

「(そうだったの。ごめんなさい)」

「(サラが謝らなくていいの。ユリスのせいなんだから。

あの日、茶会の後、サラ・ガードナーについて知らないかって聞いてくるし、誕生日の茶会で初めて4人でテーブルに着いて話をした後は、サラの情報をくれって騒いでいたわ。
同じようにしか会っていないから知るわけないのに。ジェニーも苦笑いだったわ。
だから陛下に聞いたらって言ったの。

そうしたら婚約を申し込んだって浮かれていて、すごくご機嫌だったのに、すぐ会わなくなったの。
引きこもってるって。
お父様に聞いたら、ある令嬢が婚約を辞退をしたって言うから驚いちゃって。

しばらくして少しは部屋から出てくるようになったけど、暗い暗い。
もうね、まさに希望を無くした人よ。抜け殻のようだったわ。

だけど学園で同じクラスにいるサラを見つけたら、ずっと見つめていたわ。で、選択科目を一緒にしたくて勇気を振り絞って話しかけたら普通に会話をしてくれたものだから一瞬で復活したわ。笑っちゃったわよ。
貴女がいれはずっとニコニコしているのだもの)」

「(知らなかったわ)」

「(知ってたら婚約した?)」

「(したかもしれないし、分からないわ。
あの時は本当に父の体調が少しずつ悪くなっていて、だいぶ病が進んでいたから。
過酷な王子妃教育や社交なんてガードナー家には難しかったと思うわ。
少なくともお会いして理由を自分の口から説明して、心から謝罪したと思うわ。

政略結婚の申し込みだと思っていたのに好きだっただなんて)」

「(まあ、そうよね。誕生日にちょっと会話しただけで打診がきたら政略結婚だと思っても仕方ないわね)」

そこで予鈴が聞こえて慌てて花を摘んで教室に戻った。





授業中、隣の席のユリス殿下は私の髪を少し手に取るとクルクルと指に絡ませて遊んでいる。
取り上げても、また…。

先生は注意できない。

困ったなぁ。


断ったのにどうしたらいいの。
傷付けることはしたくない。抜け殻になられては困る。


やっと1日が終わった。



そして次の日。

殿下は素早く昼食を済ませると急いで帰ってしまった。公務があるらしい。隣国から王族がやってくるとか。

そしてまだ20分以上時間が余るので外の空気を吸いに出た。

「ガードナー侯爵令嬢」

振り向くとそこには懸念していた人が立っていた。

「シヴィル公爵令嬢……ご機嫌よう」

「ちょっといいかしら」

「はい」

「貴女は婚約者のいる殿方と馴々しくしすぎではなくて?」

「友人です」

「友人の域を超えていると思わない?」

「友人です」

「……今更惜しくなったのかしら。
貴女は辞退したじゃないの」

「狙っておりません」

「もしかしたら妾を迎えるかもしれないとは思っているわよ。でも第二妃や愛人は許せないの。
シヴィル家と婚約しておいて、その様なことは許されることではないわ」

「シヴィル公爵令嬢。それを殿下に仰ってくださいませ」

「貴女が引けは済むことでしょう」

「引いてこれなのです」

「卑しい女は嫌ね」

「いくらなんでもガードナー家を卑しいなどと!」

「ガードナー家のことを言ってないわ。貴女よ。
貴女だけを卑しいと言っているの」

「は!?」

「あら、予鈴だわ。
いい?忠告したわよ。
ユリス様から離れないのならシヴィル公爵家がガードナー侯爵家を潰しにかかるからそのつもりでね」


私は教室に戻ると荷物を纏め、教職員室に向かい早退と当面の欠席届を提出して帰った。







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