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キツキツのブラウス

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今日は週の半ばで学食の2品が他国の料理になる日だ。前菜的なものなどもあるしパンのこともある。

これも教育の一つ。その国の人が来ているときに、○○を食べたけど美味しかったとか話題を振ることができれば印象が違う。

どちらを選ぶかは早いもの順だ。

「結構辛いね」

「こっちのは香ばしい感じですね」

「美味しい」

「美味い」

ユリス殿下とエレノアと宰相の甥のマジェスと4人で食べていた。

どうやらユリス殿下は辛いのが苦手だったらしい。

「ユリス殿下、私のと交換しますか?一口食べてしまいましたけど」

私のは肉を一口大に丸めてソースを絡めたものだった。他の部分には一切触れていない。

「いいの?」

「ええ。私多少辛くても大丈夫ですから」

「じゃあ、お願いしようかな」

「良かったですね殿下」

「サラ様は優しいな」

ユリス殿下は頬を染めて味わっている。
殿下のお気に召す味だったのね。

二人もニマニマしながら殿下を見ているわ。

交換した料理は少し舌がピリピリする。
独特な風味もあるがこれはこれで美味しい。少し発汗作用があるみたい。

「サラ。ごめん。もしかして辛すぎた?」

「発汗作用のある香辛料が使われているようで、ちょっと暑いだけです」

座っている席の日当たりもいいので余計に暑い。

仕方ないから上着を脱ぐことにした。

ガシャン!

コップを倒しながら立ち上がり、斜め前の私の席に急いでやってきた殿下は自分の上着を脱いで私に羽織らせた。

「殿下?」

「何をしているんだ!」

「暑いから上着を脱いだのです」

なのに上着を掛けられて困惑した。

「駄目だ!上着は脱ぐな」

「え? 何故ですか」

どんどん殿下が赤くなっていく。

「頼むから、言うことを聞いて」

「でも、暑いから」

「冷たい飲み物を貰ってくるから、このままここで上着を掛けていて」

そう言って殿下が早歩きで行ってしまった。

「……」

「重症だな」

「可哀想だけど重症ね」

「え? 何が」

「いいからそのままでいてあげて」

「暑いのに」

「ねえ。制服は採寸して作った?」

「もちろんよ」

「そのブラウスはいつ作ったの?」

「二年生が始まるときかな。サイズが合わなくなって作り直したの」

「(急成長したのね)」

「何よ。知ってるなら言って」

「ブラウス、作り直さなきゃだめよ。キツくない?」

「少しね。だけど一年も無いし、いいかなって」

「サラ。少しキツくなって布が引っ張られて隙間ができて中がちょっと見えちゃったのよ」

マジェス様の方を見るとニッコリ微笑んで、

「私は嬉しいけど、殿下からしたら心配過ぎて髪の毛抜けちゃうだろうね」

本当に見えちゃったようだ。下に目線をうつすと少し布が引っ張られてちょっとだけ隙間ができていた。

そういえばメイドが作り直した方がいいって言ったのを嫌がったのよね。
上着は脱ぐことはないと言うと引き下がってくれたけど。

そこに殿下が戻ってきて果実水を私の前に置いた。

殿下は自分のベストを脱ぐと、私に羽織らせたジャケットを取り、ベストを上から被せた。袖ぐりに腕を通し裾を下まで下ろした。

「ブカブカだけど、これで今日は過ごせばいい」

殿下の顔が赤い。

「でも、殿下の、」

「言うことを聞いてくれ」

まるでお母様の様だと思っているとマジェスがユリス殿下をこう呼んだ。

「お母様」

「誰がお母様だ」

エレノアも続く。

「殿下、私にも母親のように見えますわ」

エレノアがニヤニヤしながら殿下に言うと殿下がさらに赤くなった。

「殿下、ありがとうございます」



食べ終わり、教室へ戻る途中に殿下が私だけ呼び止めた。

「サラ、今日は授業が終わったら私と城に来てくれ」

「どうしてですか?」

「いいから」

「…はい」

「リオには私から連絡を入れておくから」

「分かりました」




放課後、殿下と一緒に馬車に乗り王宮へ着くとユリス殿下が侍従に何かを命じていた。

「かしこまりました」

侍従は退がっていった。

………。

何で2人きりに!?
普通王子の側には誰がいるものでしょう!


「楽にしていてくれ。直ぐに人が来るから」

「はい」


少し経つと3人の女性がやってきた。

「では、私は席を外す」

殿下が部屋を出るとベストを脱がそうとしてきた。

「え?」

「ガードナー侯爵令嬢。採寸をしますので服を脱いでいただけますか」

「採寸!?」

「殿下より制服のブラウスを作るよう仰せつかりました」

「そんな、申し訳ありませんわ」

「どうか私どもにお任せを」

王子の命令だものね。

「お願いします」











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