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諦めきれぬ思い
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【 ユリスの護衛騎士ケイン・サットンの視点 】
令嬢は申し訳なさそうにしていた。
令嬢のお守りは退屈ですよねと言った感じで話を振ってくる。しかも妹と交流があるようだ。
護衛騎士の私にも気遣いをみせる令嬢か。
今の王子の婚約者は気位の高い令嬢で、我等に気遣いなどしない。この令嬢が王子妃になってくれたらと思うと残念だった。
新たに伯爵令嬢が近寄ってきた。弟のガードナー侯爵目当ての様だが何故か一瞬 侯爵令嬢に敵意を帯びた視線を送る。
何かやらかすかもと二人の間がよく見える位置に立ち、備えた。
愛しの姫をユリス殿下に任されたのに怪我でもさせたら大事になる。
侯爵令嬢が振り向き私を見上げた。
“何か用か?” と目で聞きながら微笑むと頬を染めた。
パッと前を向き扇子を持って俯くが耳は真っ赤だし首もピンクに染まっている。
……可愛過ぎる。
ダークブロンドの髪は艶やかで、ブルーグレイの瞳は神秘の泉の様に澄んで煌いている。
そしてたったあれだけで動揺し白い肌を紅潮させる。
男には堪らない。
これはユリス殿下も落ちる訳だと納得した。
侯爵令嬢でもなく、ユリス殿下の想い他人でなければ自分のモノにしようと積極的に動いただろう。
馬に乗せて遠出をしてもいいし、手を繋いで王都でデートしてもいい。ベッドで全身が紅潮する様なコトをしてもいい。
そんなコトを一瞬で巡らしたが、
“気に入らない”
低い声で令嬢に囁くのは令嬢の弟の若き侯爵だ。
違和感が生じた。
この姉弟は似ていない。髪も瞳も色は違うし、顔のタイプも違う。
まあ、似ていない姉弟はたまにいる。
だが、後からやってきた伯爵令嬢も見た目はかなりいい方だ。なのに侯爵は敢えて冷たく遇らう一方で姉には甘く接する。
これは弟というより男だ。
伯爵令嬢が侯爵令嬢に足を掛けて転ばせようとした。弟の反応も早かった。
そしてユリス殿下は厳し過ぎる罰を伯爵令嬢に課した。
まるで伯爵令嬢のしたことが、王子妃への所業というかのように。
「サットン卿、どうだった」
今日の任務の終わりの挨拶でユリス殿下から聞かれた。
「何がでしょう」
「サラだ。卿から見て、サラをどう思う」
「魅力的です」
「王子妃としては?」
「歓迎します」
「そうか」
やはり諦めきれないのだな。
「何故サラは私では駄目なのだろう。
学園が始まって友人になったが元々嫌われているわけではなかった。
自分で言うのもなんだが、私は不細工でもないし頭も悪くない。性格だって悪くはないと思う。
男として好きじゃなかったとしても、政略結婚として話を受けてもらえると思っていた。
王子妃、ゆくゆくは王妃になることに不安があるのか。
だが、サラを寵妃として周知させ私が守ればいいだけだ。無理な公務はさせるつもりはないし、王子妃教育に不安があるならできることだけやればいい。長けた者を雇ってサポートさせれば済むことだ。
後ろ盾など必要ない。サラが妃になってくれるのなら サラ以外には娶らない」
「では、跡継ぎ問題はどうなさるのですか?」
「子が成せなかった、もしくは王子が産まれなかったときということか?従兄弟に継がせればいいだろう」
「しかしそれを陛下や執行部の方々が同意したわけでもありません。有力貴族達も無視して進めることは出来ません。
そしてガードナー侯爵令嬢はご存知ありません。
当時では難しかったかもしれませんが、直にお会いして何が問題かご自身で聞いて解決策を提案し、それならとガードナー侯爵令嬢が仰ったら、その方向で国王陛下に協力をお願いに上がれば未来は違ったかもしれませんが、殿下は婚約者を選んでしまわれました。
今の婚約を解消してしまったら敵を作りかねません。法改正も難しくなるでしょう。
その前に、令嬢が他の令息に想いを寄せていたという可能性はありませんか?
婚約してなくても恋人がいなくても、いないとは限りません」
「サラに想い人!?
そんな素振りは見せたことはない」
「もう一つ。ガードナー侯爵です」
「確かにシスコンだが、姉弟だろう」
「侯爵は彼女を離さないと思いますよ。
夫人が代行していますが婚姻には侯爵の署名が必要です。
あの感じでは嫁に行かなくていいと言って手元に置いてしまうでしょう」
「そこまでか」
「侯爵であの外見ならさぞモテるでしょう。しかし婚約者もおらず浮いた話もありません。
彼女以外は虫か何かだと言わんばかりの態度を示します。
障害となるのは間違い無いと思います」
「……」
「殿下には婚約者がおられます。
矛先がガードナー侯爵令嬢に向かうことのない様お気を付けてください」
宿舎に帰り食事や風呂に入って寝ようとしたが、やはり気になって眠れない。
団長室の貴族名鑑を手に取るとガードナー侯爵家のページを探した。
これは一般向けのものではなく、我らが調査などに使うためのもので詳細が記されている。
前侯爵は再婚のようだ。
夫人は初婚。
「なるほど」
ガードナー籍になった日付けより産まれた日付けの方が早い。
つまり…
令嬢は申し訳なさそうにしていた。
令嬢のお守りは退屈ですよねと言った感じで話を振ってくる。しかも妹と交流があるようだ。
護衛騎士の私にも気遣いをみせる令嬢か。
今の王子の婚約者は気位の高い令嬢で、我等に気遣いなどしない。この令嬢が王子妃になってくれたらと思うと残念だった。
新たに伯爵令嬢が近寄ってきた。弟のガードナー侯爵目当ての様だが何故か一瞬 侯爵令嬢に敵意を帯びた視線を送る。
何かやらかすかもと二人の間がよく見える位置に立ち、備えた。
愛しの姫をユリス殿下に任されたのに怪我でもさせたら大事になる。
侯爵令嬢が振り向き私を見上げた。
“何か用か?” と目で聞きながら微笑むと頬を染めた。
パッと前を向き扇子を持って俯くが耳は真っ赤だし首もピンクに染まっている。
……可愛過ぎる。
ダークブロンドの髪は艶やかで、ブルーグレイの瞳は神秘の泉の様に澄んで煌いている。
そしてたったあれだけで動揺し白い肌を紅潮させる。
男には堪らない。
これはユリス殿下も落ちる訳だと納得した。
侯爵令嬢でもなく、ユリス殿下の想い他人でなければ自分のモノにしようと積極的に動いただろう。
馬に乗せて遠出をしてもいいし、手を繋いで王都でデートしてもいい。ベッドで全身が紅潮する様なコトをしてもいい。
そんなコトを一瞬で巡らしたが、
“気に入らない”
低い声で令嬢に囁くのは令嬢の弟の若き侯爵だ。
違和感が生じた。
この姉弟は似ていない。髪も瞳も色は違うし、顔のタイプも違う。
まあ、似ていない姉弟はたまにいる。
だが、後からやってきた伯爵令嬢も見た目はかなりいい方だ。なのに侯爵は敢えて冷たく遇らう一方で姉には甘く接する。
これは弟というより男だ。
伯爵令嬢が侯爵令嬢に足を掛けて転ばせようとした。弟の反応も早かった。
そしてユリス殿下は厳し過ぎる罰を伯爵令嬢に課した。
まるで伯爵令嬢のしたことが、王子妃への所業というかのように。
「サットン卿、どうだった」
今日の任務の終わりの挨拶でユリス殿下から聞かれた。
「何がでしょう」
「サラだ。卿から見て、サラをどう思う」
「魅力的です」
「王子妃としては?」
「歓迎します」
「そうか」
やはり諦めきれないのだな。
「何故サラは私では駄目なのだろう。
学園が始まって友人になったが元々嫌われているわけではなかった。
自分で言うのもなんだが、私は不細工でもないし頭も悪くない。性格だって悪くはないと思う。
男として好きじゃなかったとしても、政略結婚として話を受けてもらえると思っていた。
王子妃、ゆくゆくは王妃になることに不安があるのか。
だが、サラを寵妃として周知させ私が守ればいいだけだ。無理な公務はさせるつもりはないし、王子妃教育に不安があるならできることだけやればいい。長けた者を雇ってサポートさせれば済むことだ。
後ろ盾など必要ない。サラが妃になってくれるのなら サラ以外には娶らない」
「では、跡継ぎ問題はどうなさるのですか?」
「子が成せなかった、もしくは王子が産まれなかったときということか?従兄弟に継がせればいいだろう」
「しかしそれを陛下や執行部の方々が同意したわけでもありません。有力貴族達も無視して進めることは出来ません。
そしてガードナー侯爵令嬢はご存知ありません。
当時では難しかったかもしれませんが、直にお会いして何が問題かご自身で聞いて解決策を提案し、それならとガードナー侯爵令嬢が仰ったら、その方向で国王陛下に協力をお願いに上がれば未来は違ったかもしれませんが、殿下は婚約者を選んでしまわれました。
今の婚約を解消してしまったら敵を作りかねません。法改正も難しくなるでしょう。
その前に、令嬢が他の令息に想いを寄せていたという可能性はありませんか?
婚約してなくても恋人がいなくても、いないとは限りません」
「サラに想い人!?
そんな素振りは見せたことはない」
「もう一つ。ガードナー侯爵です」
「確かにシスコンだが、姉弟だろう」
「侯爵は彼女を離さないと思いますよ。
夫人が代行していますが婚姻には侯爵の署名が必要です。
あの感じでは嫁に行かなくていいと言って手元に置いてしまうでしょう」
「そこまでか」
「侯爵であの外見ならさぞモテるでしょう。しかし婚約者もおらず浮いた話もありません。
彼女以外は虫か何かだと言わんばかりの態度を示します。
障害となるのは間違い無いと思います」
「……」
「殿下には婚約者がおられます。
矛先がガードナー侯爵令嬢に向かうことのない様お気を付けてください」
宿舎に帰り食事や風呂に入って寝ようとしたが、やはり気になって眠れない。
団長室の貴族名鑑を手に取るとガードナー侯爵家のページを探した。
これは一般向けのものではなく、我らが調査などに使うためのもので詳細が記されている。
前侯爵は再婚のようだ。
夫人は初婚。
「なるほど」
ガードナー籍になった日付けより産まれた日付けの方が早い。
つまり…
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