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冬の長期休暇

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冬の長期休暇はヴェリテ領に来ている。
ストラ兄様も一緒だ。

騎士学校の卒業資格を得て戻って来て、お父様から領地経営について教えてもらっている。

私はミスラとシヴァに やや潰され気味に挟まれて癒しを貰っていた。

三人は ガゼボの側にピクニックマットを敷いて横たわる二匹と一人に、視線を落としながらも、ストラの婚姻について話し合っていた。

兄「いや~無理ですよ。母上の仕事は誰にでも出来るわけではありません。商品を産み出す発想がないとやれないのですから無理ですよ」

ストラ兄様は、自分は父の仕事を引き継ぎ領地を任され、妻になる人に母の仕事を任せようとしていた。

母「私達が生きている間に領地の未来の道筋は付けておくから、それに従って運営させればいいの。
不定期な監査をして、突破的な問題を解決すればいいわ」

父「ある程度、想定されるトラブルについては考えてティアと手引書にしておこう」

兄「王都の店はどうするのです。普通の貴族令嬢には無理ですよ」

私「商家のどこかと手を組めばどうですか?

お菓子の店は従業員の案でやっていけますし、季節の味を取り入れたらいいだけで、作り方を変えなければいいのです。
規則と手順書があれば済みます。

部屋着の店は大きなデザイン変更は要りません。
あれは消耗品です。
毎日のように着て古くなり、新しい物と交換するだけです。
色を少し変えたり襟口のかたちを微妙に変えたり丈を少し変えたりすればいいです。
カトラリーもそう難しくないでしょう。

これも今から文書化しておけば良いと思います。
布地も契約を今のうちに調整すればいいかと。
貸しが少しできましたからユニルドール侯爵家は応じてくださるでしょう。

髪飾は商家の協力を得ては?
デザインを提供してもらってお金を払うのです。

自分の店で売るより天使シリーズの店で売った方が売れますしお金にもなりますから。

手に余るなら閉店させてもいいと思います」

父「領地運営の資金だから頑張って欲しいのだがな」

私「母頼みの店の収益をあてにしているのが間違いなのです。今や憧れの領地と言われていますが、領地にかかる費用は領地で用立てないと。
お母様が離れても運営できるような商売を考案して展開すべきです」

母「一理あるわね。元々先割れスプーン欲しさに始めたことだものね。
王都の店はシェイナに任せたかったけど、辺境に嫁ぐなら無理だものね」

私「何を仰っているのですか?お母様」

父「そうだぞ ティア。変なことを言わないでくれ」

兄「いや~。辺境伯とシェイナはアリだと思いますよ。辺境伯はシェイナにメロメロですし、シェイナは甘やかしてくれるような大人の男がいいと思います」

私「酷い!厄介払いをしようとして!」

兄「違うよ」

父「ふしだらな男は駄目だ」

私はお父様にしがみ付き、お父様は私を抱きしめながら肩を摩ってくれた。

兄「ほら、甘やかしてくれる大人の男が必要です」

父 私「……」

兄「クリス王太子殿下が一番良いけど、正妃も妾もいるからなぁ」

私「何でクリス兄様がでてくるのですか?従兄ですよ?
まあ、クリス兄様のような方がいたら飛び付きたいですけど」

兄「それ、クリス王太子殿下の前で言うなよ」

私「どうしてですか?」

兄「酷だろう」

私「讃えているのに?」

全「……」


私「しばらくお母様の補佐をしてみたらどうですか?商業面に優れた女性が見つかるかもしれませんよ」

母「それもいいわね」

兄「その姿のまま公爵家の家族会議に出るのはすごいな」

私「お兄様も挟まれてみてください。至福ですよ」

ミスラとシヴァに挟まれる幸せを知ったら文句言えないだろう。
ムクっと起き上がり、場所を譲ろうとした。

兄「遠慮しておく」

断られた。


私「あれ?幻が見える」

父「見えるな」

母「見えるわね」

兄「怖いな」

門を通過して建物に向かっている馬車と騎馬隊に既視感がある。
もう遠くから見ても見分けが付く。

私「私は呼んでいませんよ」

父「私でもない」

兄「勝手に来たのか?」

母「あ……」

父「ティア?」

母「前回のお礼のお手紙の中に“ぜひまたお邪魔したい”って書いてあったわ。
社交辞令だと思って“どうぞ”って社交辞令で返したの」

私・兄「あ~」

母「辺境から来て追い返せないわよね」

父「……」


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