上 下
63 / 84

もはや恋人?

しおりを挟む
ゴトゴトゴトゴトゴトゴトゴトゴト

「で? 教えてくれないのか?」

「何を」

「シェイナが心に抱えている何か」

「時が解決します」

「男じゃないよな?」

「……」

「俺というものがいながら…」

「フェリシアンはフェリシアンでしょう」

「相手の男に女が?」

「うるさい」

「…なあ、まさかセヴリアン殿じゃあないよな?」

「……」

新聞を見たのね。

「セヴリアン殿と勝負したら勝つ自信無いな」

「リン兄様に言わないでよ」

「“時が解決する”ってことは諦めるってことだよな。俺が忘れさせよう」

「はぁ」


バロウ辺境伯の護衛騎士達に守られながら馬車を走らせていた。お母様が気晴らしにと小旅行を提案してくれた。

向かう先はユニルドール侯爵家の領地だ。ユニルドールの特産品の布をヴェリテお母様が買い付けている。その布地で部屋着などを作っているのだ。

今回は侯爵夫妻の婚姻30周年祝いのパーティをするということで、出席の返事を出していたお母様が私に譲った。

先方のお屋敷に2泊する予定だったらしい。

“私は風邪を引いたことにしてちょうだい”と言ってお詫びの手紙を私に持たせた。

フェリシアンをパートナーにして代理出席する。

“面倒くさい方が気が紛れるわよ”

確かに面倒くさいがお母様のいう通りかもしれない。


ユニルドール侯爵家は、当主ウィリアム 妻セイラ 長男カルファン 長女エリーゼ 次男ユリス 次女クララ。

当主補佐をしながら学んでいるカルファンには妻がいて、ユリスとクララは学園生。エリーゼは卒業していて婚儀待ちらしい。

婚姻30周年祝いだから全員揃っているかもと教えてくれた。クララは私と同い歳で婚約は未だのようだ。


馬車が門を通過して屋敷の正面に到着すると夫妻と使用人達が迎えに出てくれた。

侯「ようこそおいでくださいました。
予定ではヴェリテ夫人がお見えだと、」

私「お久しぶりです。侯爵、ユニルドール夫人。

母は風邪をひいて咳が酷く、ご一家や招待客に感染させるとよくないからと私に代理を命じました。
こちらの手紙は母から預かりました」

侯「拝読します……分かりました。
態々足を運んでいただき感謝いたします。

それにしてもバロウ辺境伯がパートナーとは」

フ「シェイナの護衛兼恋人です」

私「ちょっと、」

フ「シェイナは恥ずかしがり屋で」

夫人「まあ、初々しいわ。どうぞ中へご案内いたします。お疲れになりましたでしょう?お茶を淹れますわ」

フェリシアンは侯爵にヒソヒソと話をしていた。



応接間に通されてお茶とお菓子を出されている間に長男カルファンと妻のマイリスが挨拶に来た。

カ「ようこそユニルドール邸へお越しくださいました。長男でカルファンと申します。彼女は妻のマイリスです」

マ「バロウ伯爵 お久しぶりです。公女様 初めまして」

フ「カルファン、マイリス夫人、久しぶりだな」

カ「フェリシアン 久しぶり。公女は初めてですね」

フ「彼女は今年の成人で、あまり社交には出ていないから機会が無かったようだ。
今回はヴェリテ夫人の代理でお邪魔せてもらった。

シェイナ。カルファンは学友で、マイリス夫人は一つ歳下だったんだ」

私「お初にお目にかかります。
シェイナ・ヴェリテと申します」

カ「可愛いな。バロウ伯爵とはどのような関係ですか?」

私「彼とは、」

フ「シェイナとは王宮パーティで知り合って以来時々顔を合わせて、最近恋人になったんだ」

カ「フェリシアンが!?公女と!?」

私「ちょっと!フェリシアン!」

フ「シェイナは初心だからそっとしておいてくれないか。口説くのが大変だったんだ」

カ「まあ 大変だろうな。
……本当に可愛いな。シェイナ様と呼んでも構いませんか」

フ「かまう」

私「かまいませんわ」

カ「では私のことも名前で呼んでくれますか」

私「でも…」

マ「私達は名前で呼び合いませんか?
バロウ伯爵と公女と私とカルファン様で」

夫人「私達も呼んでいいかしら」

フェリシアンをチラッと見ると微笑まれた。

そうじゃない!返事をして欲しいのに!

私「分かりましたわ」

夫人「そろそろお部屋へご案内します」


そして案内された部屋は一室だった。

「荷解きをお手伝いいたします」

メイドが荷解きをしていく。

「駄目よ。お部屋を別にしてもらわないと」

「いいんだ。俺が頼んだから」

「は!?」

バルコニーに出て窓を閉めると声を抑えて説明された。

「(夜這い避けだ)」

「(は?)」

「(カルファンは女遊びをするタイプだからシェイナ一人は危険だ)」

「(貴方と同類ってこと?)」

「(もとな)」

「(私は大丈夫。入ってきたらナイフ投げるから」

「(駄目だろう! 就寝中に忍び込まれて縛られたらおしまいだし、距離が取れないと不利だろう)」

「(既視感があるわね)」

「(……それに不安要素はもう一つある。
マイリス…様が夜這いに来るかもしれない)」

「(何で)」

「(実は、)」

フェリシアンから聞いた話によると、学園時代 既に二人は婚約していた。
入学と同時にカルファンに紹介されたフェリシアンに一目惚れしたマイリスが、表向きは友人としながら ずっとアプローチしていたらしい。

婚約を解消するから妻にしてくれという誘いを何度も断り、純潔をもらってくれという誘いも断り続けたそうだ。

「(意外。誰にでも手を付けるのかと思っていたのに)」

「(友人や親類、部下の妻や婚約者には手を出さん)」

「(カルファン様の婚約者じゃなければ手を出していたわけだ)」

「(今はシェイナだけだ。
優しくしたいと思ったのも、尽くしたいと思ったのも、妻にしたいと思ったのも、他の男と寝て欲しくないと思ったのもシェイナだけだ)」

「(私をマイリス様避けにしたいのね?)」

「キスしていい?」

「ダメ…んっ!」

結局するなら何で聞くのよ!

「(暴れるな。下にマイリス夫人がいる)」

抵抗を止めると舌が割り入ってきた。優しく舌を絡めながら私を見つめている。

この色気のあるフェリシアンが、女性達が声を掛けて抱かれようと思う理由だろう。

「こら、目潰ししようとするな」

「人を惑わす淫魔のを成敗したくて」

「淫魔じゃない。シェイナにになってもらいたいだけだ。愛してるよシェイナ」







しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

一宿一飯の恩義で竜伯爵様に抱かれたら、なぜか監禁されちゃいました!

当麻月菜
恋愛
宮坂 朱音(みやさか あかね)は、電車に跳ねられる寸前に異世界転移した。そして異世界人を保護する役目を担う竜伯爵の元でお世話になることになった。 しかしある日の晩、竜伯爵当主であり、朱音の保護者であり、ひそかに恋心を抱いているデュアロスが瀕死の状態で屋敷に戻ってきた。 彼は強い媚薬を盛られて苦しんでいたのだ。 このまま一晩ナニをしなければ、死んでしまうと知って、朱音は一宿一飯の恩義と、淡い恋心からデュアロスにその身を捧げた。 しかしそこから、なぜだかわからないけれど監禁生活が始まってしまい……。 好きだからこそ身を捧げた異世界女性と、強い覚悟を持って異世界女性を抱いた男が異世界婚をするまでの、しょーもないアレコレですれ違う二人の恋のおはなし。 ※いつもコメントありがとうございます!現在、返信が遅れて申し訳ありません(o*。_。)oペコッ 甘口も辛口もどれもありがたく読ませていただいてます(*´ω`*) ※他のサイトにも重複投稿しています。

お腹の子と一緒に逃げたところ、結局お腹の子の父親に捕まりました。

下菊みこと
恋愛
逃げたけど逃げ切れなかったお話。 またはチャラ男だと思ってたらヤンデレだったお話。 あるいは今度こそ幸せ家族になるお話。 ご都合主義の多分ハッピーエンド? 小説家になろう様でも投稿しています。

公爵様、契約通り、跡継ぎを身籠りました!-もう契約は満了ですわよ・・・ね?ちょっと待って、どうして契約が終わらないんでしょうかぁぁ?!-

猫まんじゅう
恋愛
 そう、没落寸前の実家を助けて頂く代わりに、跡継ぎを産む事を条件にした契約結婚だったのです。  無事跡継ぎを妊娠したフィリス。夫であるバルモント公爵との契約達成は出産までの約9か月となった。  筈だったのです······が? ◆◇◆  「この結婚は契約結婚だ。貴女の実家の財の工面はする。代わりに、貴女には私の跡継ぎを産んでもらおう」  拝啓、公爵様。財政に悩んでいた私の家を助ける代わりに、跡継ぎを産むという一時的な契約結婚でございましたよね・・・?ええ、跡継ぎは産みました。なぜ、まだ契約が完了しないんでしょうか?  「ちょ、ちょ、ちょっと待ってくださいませええ!この契約!あと・・・、一体あと、何人子供を産めば契約が満了になるのですッ!!?」  溺愛と、悪阻(ツワリ)ルートは二人がお互いに想いを通じ合わせても終わらない? ◆◇◆ 安心保障のR15設定。 描写の直接的な表現はありませんが、”匂わせ”も気になる吐き悪阻体質の方はご注意ください。 ゆるゆる設定のコメディ要素あり。 つわりに付随する嘔吐表現などが多く含まれます。 ※妊娠に関する内容を含みます。 【2023/07/15/9:00〜07/17/15:00, HOTランキング1位ありがとうございます!】 こちらは小説家になろうでも完結掲載しております(詳細はあとがきにて、)

異世界は『一妻多夫制』!?溺愛にすら免疫がない私にたくさんの夫は無理です!?

すずなり。
恋愛
ひょんなことから異世界で赤ちゃんに生まれ変わった私。 一人の男の人に拾われて育ててもらうけど・・・成人するくらいから回りがなんだかおかしなことに・・・。 「俺とデートしない?」 「僕と一緒にいようよ。」 「俺だけがお前を守れる。」 (なんでそんなことを私にばっかり言うの!?) そんなことを思ってる時、父親である『シャガ』が口を開いた。 「何言ってんだ?この世界は男が多くて女が少ない。たくさん子供を産んでもらうために、何人とでも結婚していいんだぞ?」 「・・・・へ!?」 『一妻多夫制』の世界で私はどうなるの!? ※お話は全て想像の世界になります。現実世界とはなんの関係もありません。 ※誤字脱字・表現不足は重々承知しております。日々精進いたしますのでご容赦ください。 ただただ暇つぶしに楽しんでいただけると幸いです。すずなり。

愛する殿下の為に身を引いたのに…なぜかヤンデレ化した殿下に囚われてしまいました

Karamimi
恋愛
公爵令嬢のレティシアは、愛する婚約者で王太子のリアムとの結婚を約1年後に控え、毎日幸せな生活を送っていた。 そんな幸せ絶頂の中、両親が馬車の事故で命を落としてしまう。大好きな両親を失い、悲しみに暮れるレティシアを心配したリアムによって、王宮で生活する事になる。 相変わらず自分を大切にしてくれるリアムによって、少しずつ元気を取り戻していくレティシア。そんな中、たまたま王宮で貴族たちが話をしているのを聞いてしまう。その内容と言うのが、そもそもリアムはレティシアの父からの結婚の申し出を断る事が出来ず、仕方なくレティシアと婚約したという事。 トンプソン公爵がいなくなった今、本来婚約する予定だったガルシア侯爵家の、ミランダとの婚約を考えていると言う事。でも心優しいリアムは、その事をレティシアに言い出せずに悩んでいると言う、レティシアにとって衝撃的な内容だった。 あまりのショックに、フラフラと歩くレティシアの目に飛び込んできたのは、楽しそうにお茶をする、リアムとミランダの姿だった。ミランダの髪を優しく撫でるリアムを見た瞬間、先ほど貴族が話していた事が本当だったと理解する。 ずっと自分を支えてくれたリアム。大好きなリアムの為、身を引く事を決意。それと同時に、国を出る準備を始めるレティシア。 そして1ヶ月後、大好きなリアムの為、自ら王宮を後にしたレティシアだったが… 追記:ヒーローが物凄く気持ち悪いです。 今更ですが、閲覧の際はご注意ください。

【完結】優しくて大好きな夫が私に隠していたこと

恋愛
陽も沈み始めた森の中。 獲物を追っていた寡黙な猟師ローランドは、奥地で偶然見つけた泉で“とんでもない者”と遭遇してしまう。 それは、裸で水浴びをする綺麗な女性だった。 何とかしてその女性を“お嫁さんにしたい”と思い立った彼は、ある行動に出るのだが――。 ※ ・当方気を付けておりますが、誤字脱字を発見されましたらご遠慮なくご指摘願います。 ・★が付く話には性的表現がございます。ご了承下さい。

つがいの皇帝に溺愛される幼い皇女の至福

ゆきむら さり
恋愛
稚拙な私の作品をHOTランキング(7/1)に入れて頂き、ありがとうございます✨ 読んで下さる皆様のおかげです🧡 〔あらすじ〕📝強大な魔帝国を治める時の皇帝オーブリー。壮年期を迎えても皇后を迎えない彼には、幼少期より憧れを抱く美しい人がいる。その美しい人の産んだ幼な姫が、自身のつがいだと本能的に悟る皇帝オーブリーは、外の世界に憧れを抱くその幼な姫の皇女ベハティを魔帝国へと招待することに……。 完結した【堕ちた御子姫は帝国に囚われる】のスピンオフ。前作の登場人物達の子供達のお話に加えて、前作の登場人物達のその後も書かれておりますので、気になる方は是非ご一読下さい🤗 ゆるふわで甘いお話し。溺愛。ハピエン♥️ ※設定などは独自の世界観でご都合主義となります。

今夜は帰さない~憧れの騎士団長と濃厚な一夜を

澤谷弥(さわたに わたる)
恋愛
ラウニは騎士団で働く事務官である。 そんな彼女が仕事で第五騎士団団長であるオリベルの執務室を訪ねると、彼の姿はなかった。 だが隣の部屋からは、彼が苦しそうに呻いている声が聞こえてきた。 そんな彼を助けようと隣室へと続く扉を開けたラウニが目にしたのは――。

処理中です...