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涎が出るほど可愛い

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シヴァを連れて王都に戻り登城した。

「シェイナ!」

早速クリス兄様の抱擁の歓迎を受けた。

「く、苦しいです」

「無事か!どこも怪我をしていないな?」

「無傷です」

「部屋へ案内する」

「証言録などを渡して報告が済んだら家に帰ります」

王城ここで休めばいいじゃないか」

「シヴァとゆっくり家で過ごしたいのです」

「……」


報告をしてリン兄様と別れ家に帰った。

任務扱いになったために休みを取り直させてくれるらしい。

一先ず定休と付けて4日間休みを取った。

初日はお母様に会いに行き、次の日はシヴァとのんびり過ごした。
3日目にノワール邸に行き、お手伝いの終了を告げた。ローエン様は残念そうにしていた。

4日目は大掃除と買い出しをした後はシヴァと過ごした。


休み明け、早めに登城して新聞を読み漁った。

ミラージュ公国の記事が載っていた。
“長男パトリック・ボルデンが父親に毒を盛っていた” 
“次男ナディスが跡継ぎに”

じゃあ婿養子はなくなっなのかな?


不在時の貴族欄を見た。
ここには死亡や除籍、婚約や婚姻 離縁、出産や養子、跡継ぎ指名などや刑罰を載せている。

“サンサクレラ侯爵夫妻 離縁”

“ミラージュ公国 ナディス・ボルデンとリアーナ・サンサクレラ 婚約解消
サンサクレラ侯爵家次女リアーナ 除籍
ケンドル子爵籍へ”

あれ?ナディス・ボルデンの婚約者…

物凄く大変なことが起きたのね。


「おはよう シェイナ」

「おはようございます 閣下」

宰相の出勤でシェイナは新聞を畳んだ。

「報告は聞いた。良くやったと言いそうになるが良い解決策とは思えない。
調査などで解決したというより狙われて毒を盛られかけたことが突破口など 褒められない。
二度とシェイナを危険に晒す任務に声をかけないで欲しいと陛下にお伝えした。

王太子殿下もご自分のせいで矛先がシェイナに向かったと反省なさっている。

今回シェイナに何かあれば国は二分しただろう。

“そんな馬鹿な”と思っているだろうが、そうなんだ。

そんな危険な目に合わせてシェイナに何かあればヴェリテ公爵は黙っていない。
ティーティア様が国民を味方に付けるだろうし、娘や孫娘を持った貴族達も同情するだろう。

最初から騎士団所属か調査部所属なら別だが、宰相執務室の補佐は普通はそのような危険に晒されない。

これから採用される女性達のために慎重にしなくては。
そんなつもりはなくても君が基準になってしまうんだよシェイナ。

次から他所の依頼は王族からでも私が精査して阻止する。いいね?」

「はい」


怒られた。

トボトボ歩いていると声をかけられた。

「ヴェリテ嬢、どうなさいましたか」

殿下の側近だった。

「事件の報告書の提出などで調査部へ行っておりました」

「元気がないようですね」

「宰相閣下に怒られてしまいました」

「申し訳ございません。巻き込んでしまいました」

「自分の判断で受けたことですから」

「王太子殿下とは会われましたか」

「いえ。仕事に来ていますから従兄妹とはいえ線引きは必要だと思います。
宜しくお伝えください。失礼します」


仕事に戻り大人しくしていた。

昼休憩の30分前に閣下が外食に連れて行ってくれた。

最近できた食事処らしい。
飾り気はないが、ボリュームがあり美味しい。

「今度 王女様のお披露目がある。職員として当日はサポートしてもらうから腕章を用意しておいてくれ」

「お披露目ってパーティになるのですよね」

「昼間のな」



そして2ヶ月後のお披露目パーティ当日。

「ごめんなさいね」

「いえ。光栄です」

お支度をしている間に不機嫌になった王女様に翻弄される乳母やメイド達。

偶然通りかかった私の手を掴み、“このお姉ちゃんがいい” とご指名を受けた。

王太子妃の産んだ長女は人見知りが激しく、乳母が付き添う予定だったが、風邪をうつされて隔離したために王女付きのメイド達は疲弊していた。

宰相閣下を通して私を確保した。

「ドレス着ないの?」

「お仕事中ですので着ません」

「じゃあミリも着ない」

「ミリエナ!」

「王女殿下。私は職員ですからこれが正しい装いです。王女殿下はドレスが正しい装いです」

「イヤ」

「王女殿下のお祝いに来てくださった皆様への礼儀ですよ」

「イヤ」

「私、姉も妹もいなくて。こうやってドレスや髪結のお手伝いをすることが楽しみでしたのに」

「……ドレス選んで」

「いいのですか?」

「いいよ」

「どれも可愛いですわ。どうしましょう。
王女殿下の美しい瞳に合わせるのならこちらのドレスが良いですし、フワフワの髪に合わせるならこちらのドレスが良さそうですし、でもこちらのお袖がとても可愛いですし、こっちのドレスのレースも素敵ですわ」

「こ、公女様、涎が…」

「じゅるっ つい興奮してしまいましたわ」

「……」

「ティアラ可愛い~!」

メイド達は、これはこれで決まらずに時間が過ぎてしまうとソワソワしていた。

幼い王女が一歩大人になる瞬間がやって来た。

「このドレスにしてちょうだい」

「かしこまりました」

結局王女が決めた。


髪を結っている間も、シェイナが目をキラキラさせてずっと王女を見つめ“可愛いです” “食べちゃいたいくらいです” と繰り返すので、最初は満足気だった王女は危機感を覚えた。

「美味しくないから」

「丸のみしたいです」

「のめないから」

「じゅるっ」

「!!」


王太子妃が様子を見に来ると王女は抱きついた。

「あのお姉さん、ミリを食べる気なの!」

「何を言っているの」

「本当に食べられちゃう!」

メイドが王太子妃に耳打ちをした。

「ふふっ 分かるわ。ミリエナは可愛いから食べちゃいたいって思うのはお母様も一緒よ。
だけど本当に食べるわけじゃないのよ」

「……」

「大きくなれば分かるわ」

「申し訳ござません、怖がらせてしまったようで。
私は下がらせていただきます」

「シェイナ様…」







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