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野菜スープを大人しく口に運び、アレン様の様子を早技で見てはスープ皿に目線を戻すこと…20回くらい?
「アレン。メイが怯えてるから許してやろうよ」
〈エヴァン様、優しい!〉
「チッ」
「また食べなくなるからさぁ」
〈エヴァン様…今度肩揉みでもしますね〉
「なんでだよ」
「??」
「アレン」
「……」
エヴァン様は何故かニコニコしている。
一方でアレン様は不機嫌だ。
エヴァン様が席に着く前にファラルの人相を聞かれ、正直に答えた。
『ファラルは信じられないほどの美形です。男なのに肌も綺麗で真珠のよう。瞳は宝石より綺麗ですね〈双子も天使だけど、ファラルは別格ね〉』
それからまた機嫌が悪くなったのだ。
〈はぁ…なんでこの世界に送り込まれたんだろう。しかもモブで超貧乏でメイドって…。
お金持ちで愛情いっぱいの両親、強くて頼もしい上のお兄ちゃん、優しくて甘やかしてくれる下のお兄ちゃん、アイドルみたいに可愛くて純粋に甘えてくる弟がいる家に送り込んで欲しかったな。それで主人公の親友とか〉
「メイ。
私とエヴァンは成人すると本格的に縁談が舞い込む。年齢的には成人だが 式はこれからだ。式以降 令嬢達から声が掛かるだろう。もちろん公爵家の息子だから それなりの家門の令嬢が中心だろう。怖いもの知らずもいるだろうがな。
そこでメイには 父上達に監視をお願いされたということにして側にいてもらう。
私達とは楽器店で知り合ったことにしよう」
「監視ですか?」
「不躾な令嬢がいないか,簡単にいうとメイが審査員ということだ」
「私が坊ちゃま方のお嫁さん候補を探せということですか?」
「弾くための証人だな」
「それ恨み買いませんか?」
「報酬は5倍だ」
5倍!?
「やります。
ですが公爵夫妻がお許しになりますか?」
「僕達の意見を尊重するから大丈夫だよ。
だけど少し勉強を頑張ってもらわないと。
家出しないで頑張れるかな?」
「…やってみます」
「で、そろそろちゃんと教えてもらおうかな。
私達には見ることができないファラルという男がメイに付き纏い贈り物を与えている理由を」
突然調味料が降ってくる現場をおさえられたら仕方ない。
「…実は」
ファラルが書物関係の神様で、間違えて私を殺したこと、その魂を小説世界に連れてきて、メイの体に入れたこと。メイと実香の記憶は融合していること。そして学園で別の男爵令嬢であるヒロインの話が始まり、それを取り巻く男達に双子が入ることを教えた。
そして殺されたお詫びと役割を果たすことを条件に報酬をもらっていること。
大人向け小説だとは言わなかった。ヒロインがやることだから私は関係ないし。
〈でも、まだ16歳でしょ?本当にヒロインといかがわしいことをするのかな。3年生になったらするのかな。まあ、14歳の○というドラマがあったくらいだし、男の子は盛りが早いみたいだからね。16歳は既にしたくて仕方ない歳に入るのかな?
ああ天使が…。ヒロインとするときは私のいないところでよろしくね。
そうだ。平民の子も少し通っているならお嫁さん狙える?モヴィー家と縁を切って商売やっている家の息子のところに嫁いで元の世界の知識でお金儲けすればいいんじゃない?…使用人が雇えるくらいの商売をしている平民の家の息子が狙い所ね。入学したらリサーチしないと。
それかファラルの報酬を貯めて小さな家を買って、通いの使用人を雇えはいいんじゃない?水汲みと洗濯だけやって貰えばいいし〉
双子は顔を見合わせた。
「よく分かった。男爵令嬢と恋をするんだな?」
「そうらしいです」
「「ふ~ん」」
双子はまた見つめ合った後、私を見て微笑んだ。なんか目が笑っていない気がするけど何で?
「じゃあ、引き継ぎ勉強頑張って」
「はい」
そして、戻って来た公爵夫妻は双子と話した後、私を呼んだ。初対面の私が双子と一緒に学園通いなんて反対すると思った。だって学費は公爵家持ちだし。私は馬の骨だし。しかも脆くボロボロの汚れた骨。なのに。
「君が監視してくれるなら安心だ。今度学生名簿を渡すから気に入らない者や無礼な者には線で消していい。理由が書いてあれば尚いいが、書いてなくても構わない」
「例えば…足をひっかけられたとか、お茶をかけられたとかね」
「え?16歳の子が通う学園でそんな幼稚なことをする人がいるのですか?どれも暴力ですよね。〈貴族は暴力を振るっていい世界なの!?なんてバイオレンスな小説に送り込むのよ!〉」
「メイ、良くないことだけど、我儘に育ったり、問題になったら親が解決するから調子に乗るんだ」
「天使のような高貴な坊ちゃま方の側にいる私は病院送りになりそうですね」
「君は僕達の庇護下にあると分からせるから。とにかく側を離れないで」
「トレイは?」
「お花摘みは近くにいるから叫んでくれたら駆け付けるよ」
「確か選択科目があると聞きましたが」
「僕と音楽を選択しよう」
「エヴァン坊ちゃまが音楽ですか?」
「一応ね。それより今から坊ちゃま呼びは禁止だよ。学園で口にしたら大変だ。使用人と判断されて遠慮がなくなるからね」
「はい、エヴァン様」
「私には?」
「アレン様」
公爵夫妻はご機嫌だった。
「アレン。メイが怯えてるから許してやろうよ」
〈エヴァン様、優しい!〉
「チッ」
「また食べなくなるからさぁ」
〈エヴァン様…今度肩揉みでもしますね〉
「なんでだよ」
「??」
「アレン」
「……」
エヴァン様は何故かニコニコしている。
一方でアレン様は不機嫌だ。
エヴァン様が席に着く前にファラルの人相を聞かれ、正直に答えた。
『ファラルは信じられないほどの美形です。男なのに肌も綺麗で真珠のよう。瞳は宝石より綺麗ですね〈双子も天使だけど、ファラルは別格ね〉』
それからまた機嫌が悪くなったのだ。
〈はぁ…なんでこの世界に送り込まれたんだろう。しかもモブで超貧乏でメイドって…。
お金持ちで愛情いっぱいの両親、強くて頼もしい上のお兄ちゃん、優しくて甘やかしてくれる下のお兄ちゃん、アイドルみたいに可愛くて純粋に甘えてくる弟がいる家に送り込んで欲しかったな。それで主人公の親友とか〉
「メイ。
私とエヴァンは成人すると本格的に縁談が舞い込む。年齢的には成人だが 式はこれからだ。式以降 令嬢達から声が掛かるだろう。もちろん公爵家の息子だから それなりの家門の令嬢が中心だろう。怖いもの知らずもいるだろうがな。
そこでメイには 父上達に監視をお願いされたということにして側にいてもらう。
私達とは楽器店で知り合ったことにしよう」
「監視ですか?」
「不躾な令嬢がいないか,簡単にいうとメイが審査員ということだ」
「私が坊ちゃま方のお嫁さん候補を探せということですか?」
「弾くための証人だな」
「それ恨み買いませんか?」
「報酬は5倍だ」
5倍!?
「やります。
ですが公爵夫妻がお許しになりますか?」
「僕達の意見を尊重するから大丈夫だよ。
だけど少し勉強を頑張ってもらわないと。
家出しないで頑張れるかな?」
「…やってみます」
「で、そろそろちゃんと教えてもらおうかな。
私達には見ることができないファラルという男がメイに付き纏い贈り物を与えている理由を」
突然調味料が降ってくる現場をおさえられたら仕方ない。
「…実は」
ファラルが書物関係の神様で、間違えて私を殺したこと、その魂を小説世界に連れてきて、メイの体に入れたこと。メイと実香の記憶は融合していること。そして学園で別の男爵令嬢であるヒロインの話が始まり、それを取り巻く男達に双子が入ることを教えた。
そして殺されたお詫びと役割を果たすことを条件に報酬をもらっていること。
大人向け小説だとは言わなかった。ヒロインがやることだから私は関係ないし。
〈でも、まだ16歳でしょ?本当にヒロインといかがわしいことをするのかな。3年生になったらするのかな。まあ、14歳の○というドラマがあったくらいだし、男の子は盛りが早いみたいだからね。16歳は既にしたくて仕方ない歳に入るのかな?
ああ天使が…。ヒロインとするときは私のいないところでよろしくね。
そうだ。平民の子も少し通っているならお嫁さん狙える?モヴィー家と縁を切って商売やっている家の息子のところに嫁いで元の世界の知識でお金儲けすればいいんじゃない?…使用人が雇えるくらいの商売をしている平民の家の息子が狙い所ね。入学したらリサーチしないと。
それかファラルの報酬を貯めて小さな家を買って、通いの使用人を雇えはいいんじゃない?水汲みと洗濯だけやって貰えばいいし〉
双子は顔を見合わせた。
「よく分かった。男爵令嬢と恋をするんだな?」
「そうらしいです」
「「ふ~ん」」
双子はまた見つめ合った後、私を見て微笑んだ。なんか目が笑っていない気がするけど何で?
「じゃあ、引き継ぎ勉強頑張って」
「はい」
そして、戻って来た公爵夫妻は双子と話した後、私を呼んだ。初対面の私が双子と一緒に学園通いなんて反対すると思った。だって学費は公爵家持ちだし。私は馬の骨だし。しかも脆くボロボロの汚れた骨。なのに。
「君が監視してくれるなら安心だ。今度学生名簿を渡すから気に入らない者や無礼な者には線で消していい。理由が書いてあれば尚いいが、書いてなくても構わない」
「例えば…足をひっかけられたとか、お茶をかけられたとかね」
「え?16歳の子が通う学園でそんな幼稚なことをする人がいるのですか?どれも暴力ですよね。〈貴族は暴力を振るっていい世界なの!?なんてバイオレンスな小説に送り込むのよ!〉」
「メイ、良くないことだけど、我儘に育ったり、問題になったら親が解決するから調子に乗るんだ」
「天使のような高貴な坊ちゃま方の側にいる私は病院送りになりそうですね」
「君は僕達の庇護下にあると分からせるから。とにかく側を離れないで」
「トレイは?」
「お花摘みは近くにいるから叫んでくれたら駆け付けるよ」
「確か選択科目があると聞きましたが」
「僕と音楽を選択しよう」
「エヴァン坊ちゃまが音楽ですか?」
「一応ね。それより今から坊ちゃま呼びは禁止だよ。学園で口にしたら大変だ。使用人と判断されて遠慮がなくなるからね」
「はい、エヴァン様」
「私には?」
「アレン様」
公爵夫妻はご機嫌だった。
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