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前進[ 最終話 ]

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到着すると大広間ではなく、レアーヌ王女の希望でガーデンパーティになったようで庭園に案内された。

隅の方で挨拶を聞き、順番に挨拶に向かう。私達は最後だった。

王女の前に立つと やっとローランドは繋いだ手を放した。

「こちらの方はミュローノ侯爵家の嫡男ローランド様です。そして妻のアンジェリーナ様です。
アンジェリーナ様は最初の方でご紹介しましたプラジール侯爵のご息女です」

王子「久しぶりだね、ローランド、アンジェリーナ」

ロ「ノア王太子殿下にご挨拶を申し上げます。ご無沙汰しております」

私「ノア王太子殿下にご挨拶を申し上げます」

王子「彼女はレアーヌ王女だ」

ロ「レアーヌ王女殿下を王太子妃にお迎えできる光栄に私どもは歓喜しております」

私「レアーヌ王女殿下、お目にかかれて光栄に存じます」

レ「ノア様の友人だとか」

ロ「はい。幼い頃は遊び相手に、学園では学友としてお付き合いいただきました」

レ「貴女は?」

私「学園での後輩でございます」

レ「そう。婚姻してどのくらい?」

ロ「もうすぐ1年になります。目を離したくないほど愛らしいアンジェリーナを妻に娶れて幸せです」

レ「王命婚と聞いていたけど仲がいいのね。直前まで手を繋いでいるくらいですものね」

ノ「いや、彼らはあくまで王命婚姻だ」

ロ「きっかけはそうでしたが、今ではこの通りです。国王陛下に心から感謝しております」

そう言ってローランドは私の頭にキスをした。

ノ「っ!」

レ「きっと陛下は先を見通して2人を婚姻をさせたのね。素晴らしいわ」

ロ「最初はいろいろとありましたが、今は乗り越えました」

レ「あら、夫人は少しお辛そうね」

疲れ切っていた私にはヒールでガーデンパーティ、挙句にカーテシーで限界。ドレスで隠れた脚は震えていた。

ロ「ちょっと可愛がり過ぎまして。お許しください」

私「ローランド!」

レ「まあ、お熱いのね。座って休むといいわ」

ロ「感謝いたします。リーナ、向こうで座ろうか」


ローランドはまた私の手を繋いで歩き、椅子に座らせた。

「お腹がすいただろう。料理を取ってくるからここにいて」

「ありがとう」

周囲を眺めながら飲食し、ローランドと時間を潰した。


そろそろパーティも終盤に近付いたようだ。

「今夜はどっちに泊まる?
プラジール邸の君の部屋でも俺との思い出を作って欲しい。優しくするよ。プラジール侯爵達に聞こえないように唇を塞いで満足させよう」

そんなことを言って私にキスをした。

「どういうつもりだ ローランド」

私達の前に立っていたのはノア王太子だった。

「どういうとは?」

「私がアンジェリーナを愛しているのを知っていたはずだ。3年の間に子ができなければ離縁出来るのも知っていたはずだ」

「え? そうなの?」

「王命婚姻でも侯爵家に跡継ぎは必要だ。恵まれなければ、妾を迎えるか離縁が許された。君たちが離縁したいといえば王命は終了し、正妃にはしてやれなくなったが、私はアンジェリーナを娶れるんだ。
必要なのは実績だ。2人に説明しただろう。なのにお前は私のアンジェリーナを実績に関係なく抱いているというのか」

「確かに説明は受けましたが、それだけです」

「ローランド、お前、私とアンジェリーナのことを反対していたのは、自分がアンジェリーナを欲したからか!」

「いえ。意見は変わっておりません。アンジェリーナに王太子妃は無理です。今のリーナにだってストレスになるだけです。でも侯爵夫人なら可能です。今やリーナはミュローノ家にとっても俺にとっても大事な人です」

「ローランドが判断することじゃないだろう。

アンジェリーナ、君は私の容姿の方が好きだろう?」

「ローランドの方が好みですよ?」

「え?」

「私は人妻です。殿下はレアーヌ王女殿下と婚約していて、王女殿下は結婚するために既に今ここにいるのです。式ももうすぐですよね?」

「それは、」

「王女殿下との婚姻は国同士の約束事のはずです。
もし王太子殿下が王配として婿入りしなくてはならない立場だとして、唯一味方になってくれるべき王女が他の貴族令息に愛を囁いていたらどう思いますか?しかも殿下の歓迎パーティで」

「っ!」

「しかも引き返せない状態です。
孤独を感じませんか?」

「……」

「人としても王族としても有り得ない言動だと感じるのは私だけでしょうか」

「アンジェリーナ、」

「私がたとえ独身だったとしても、そのような方に靡く女だと思いますか」

「……」

「私は人妻、王太子殿下は何年も王女と婚約し続けた。答えも未来も出ていますよね?このままでは多くの信頼を失うことになります」

「その通りだ」

現れたのは国王陛下だった。絵姿を見たし冠被ってるからそうだろう。

「国王陛下にご挨拶を申し上げます」

私とローランドは立ち上がり挨拶をした。

「顔を出して良かったよ。愚息がまだ迷惑をかけているようだな」

そう言いながら椅子に座り、私とローランドにだけ座れと命じた。

「記憶を失くして大変だったそうだな」

「人もテーブルマナーもダンス忘れてしまいました」

「それでローランドと仲良くなれたのだな?」

「さあ、どうでしょう」

「リーナ、」

「ハハッ。 ローランド、頑張りなさい。

さてノア。お前のせいで犬猿の2人に王命を使って婚姻させたのだ。簡単だったと思うか?ただ籍を入れるだけではない。嫌いな相手と子を成せと命じたのだ。いくら政略結婚が当たり前の貴族でも辛い1年だっただろう。
それでも己を改めずに執着し続けるのなら、お前をレアーヌ王女の国に婿に出してもいいのだぞ?
臣下として跪き仕えるといい」

「ち、父上」

「明日の朝までに結論をだせ。改めないのなら、先方と再交渉をしてすぐにお前を引き渡す」

「ですが、」

「側妃の産んだ王子でも構わないのだ。貴族を敵に回しかけている愚息に拘る価値はない。寧ろ害だ」

「っ!」

「感謝しているぞ、ローランド、アンジェリーナ。
何か希望はないか?褒美をだそう」

犬猿の2人を結婚させる王命なんか出した性格の悪い王様だと思っていたけど、まともなのね。

ローランドが要らないと言ったので、私は手を挙げた。

「アンジェリーナ、何が望みだ?」

「次にローランドが浮気をしたら、ローランドが漏らして泣いて平伏すまで叱り付けてください」

「ハハハッ  直ぐに言い付けに来るといい。涙が尽きるほど叱ってやろう」

「ありがとうございます」

その間に逃げればいいしね。

「リーナ、君の愛は受け取ったよ」

「はい?」

「そこまで俺を独占したいんだな。もちろんリーナだけだ」

私の顔を両手で挟んでキスをした。

ちょっと!王様の前!!みんな見てる!!

「この辺りだけやけに熱いな。まだ昼間だぞ?
2人を部屋に通してやってくれ」

「陛下!? 無理です!今朝やっと解放されたばかりなのですよ!?」

「そうかそうか。ローランドは甲斐性持ちだったか。元気が出る飲み物があるから出させよう」

「ありがとうございます」

有り難くない!

「ちょっと!ローランド!」

「では、陛下。お言葉に甘えて失礼致します」

「子が産まれたら見せに来なさい」

「かしこまりました」

ローランドは私を抱き上げて、案内された豪華な部屋に到着すると2日籠った。

し、死ぬ……

バイアグラみたいな飲み物を飲んだらしいローランドは勃ちっぱなしだし、何かを塗り込まれた後は熱くなって疼いて仕方ないし、効き目が切れるまで注がれ続けた。

おかげで、

「おめでとうございます。ご懐妊です」

「リーナ!!」

「オエッ」

妊娠しちゃった。

ヤンヌ子爵夫妻は王都に来て、私の見守りとローランドの監視をしてくれた。ミュローノ侯爵夫妻も二度と見舞いに来てくれた。プラジール家のパパママお兄ちゃんも頻繁に来てくれる。
マルトー商会長からはお祝いのベビーグッズが送られてきた。

悪阻は早くに治り、無理をしない程度にローランドと繋がり、ついに…

「おぎゃあ!」

男の子が産まれた。ローランドにそっくり。

だけどローランドは、産後ずっと抱っこしている。
赤ちゃんじゃなくて私を。


その後、次男、長女、三男、次女と産んだ。

そしてまた、私のお腹には第6子がいる。
大変だったのは長男だけで、以降は悪阻はほぼ無いし、超安産で産後も問題無し。
犬猿夫婦が子沢山の溺愛夫婦に変わってしまった。

長男以外はアンジェリーナ似だった。

「リーナ、子供はこの子で最後にしよう。義兄上が産ませ過ぎだと心配しているからな」

「そうね」

「愛してるよ、リーナ」

「私もよ、ローランド」


長男の成人の日に、私とローランドの最初の頃の話をしたら、驚愕していた。 
数年後にはこの子もお嫁さんを迎える。私達の過去を知って、お嫁さんと仲良くする努力が必要だと知って欲しかった。

「よくましたね」

「大変だよ。記憶を失くしたら羽が生えたように活発に飛んでいってしまうのだから」

「うふふっ」

「僕も父上と母上のように仲の良い夫婦になります」

もう元の世界に帰りたいとは思わなくなった。

何よりローランドと子供、親類がいるから。

「頑張ってね」




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