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婚約の打診

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屋敷に戻るとママに呼ばれた。

「シルビア。これを見て」

「はい」

……。

コーデュロウ家からの求婚の手紙だった。
相手はヘンリー様。

“コーデュロウ家の領地で暮らしてもらうことになる”
“領地でヘンリーが仕事をするので側で妻として支えて欲しい”
“住まいは別棟で、別棟の中の采配とヘンリーの相手のみ”

「ヘンリー様なら私でなくても」

「コーデュロウ家は領地で薬草などの栽培や薬を作っているわ。生産をヘンリー様に任せるのね。
つまりずっと田舎暮らしだということよ。
王都のお屋敷は長男夫婦が暮らしながら販売を担当するのでしょう。

つまり王都で暮らす可能性は無いということよ。
公爵家に釣り合う相手で田舎暮らしを望む令嬢は少ないわね。

当主の意向で見合いはしても、きっと令嬢が嫌がっているのを感じとってきたのかもしれないわ。
田舎が嫌な人は逃げる場所は無いから、無理に婚姻しても夫婦仲が悪くなるわ」

「融資の代わりにとか。
貧しい家門なら、いい暮らしが出来ると喜ぶ令嬢もいるのではないのですか」

「何故融資が必要かにもよるわね。
縁を繋ぐのよ。悪縁も繋いでしまうわ」

そっか。

のんびりできそうだけと、アイザックが夜な夜な登場する状況はコーデュロウ公爵家は受け入れられないだろう。

「お母様、お断りをお願いします」

「いいの?」

「次男で領地暮らしとはいえ 公爵家の令息ですもの。自分の嫁が夜になると他の男と一緒だなんて我慢できませんわ。産まれる子も疑われるでしょう」

「気持ちは?」

「いい人ですが それだけです」

「分かったわ」




だけど返事を出したその日に先触れがあり、2日後にヘンリー様と会うことになった。

「不安な点や疑問点を全てお答えします。
考え直してはいただけませんか」

「コーデュロウ公爵家ならもっと相応しいご令嬢がいらっしゃいますわ」

「私はシルビア嬢がいいのです。
貴女に妻になって共に領地で暮らしていただきたい。

確かに田舎暮らしではありますが、予算はかなりあります。
基本は領地ですが、王都へ行くこともあります。
その時にお好きな物を購入していただいて構いません。

私は跡継ぎではありませんので、子の性別はどちらでも嬉しいですし、恵まれなければ夫婦二人で支え合えたらと思っております。妾など迎える気はありません。

何より私は、」

「ヘンリー様。申し上げることはできませんが、嫁げない理由がございます。
条件的には魅力的ですが叶いません。
どうか他のご令嬢に目を向けてくださいませ」

「私はシルビア嬢が気に入ったのです」

「婚姻後に理由が判ればそのお気持ちは消え失せます」

「……それは王太子殿下と関係がありますか」

ビクッ

「王太子殿下の恋人なのですね」

「違います」

「いや。二人の距離は近かった」

「ヘンリー様…どうしても受けられないのです。
ご容赦ください」

その後 ママが間に入り、ヘンリー様は帰った。
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