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鬱陶しいはずなのに

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ふわっと体が宙に浮く。

「ごめんなさい」

「兄君とのダンスを見ていたから大丈夫ですよ」

足を踏みそうになったようだ。

「見ておられたのですね」

「いい香りですね。何だろう。もしかして兄君に作らせたやつ?」

「はい」

「見せてもらえませんか」

「兄の作った物ですから、兄に聞いてください」

「そうしましょう。シルビア嬢はいつもタウンハウスに?」

「いつもは領地です」

「どうして?」

「王都に用がないからです」

「王都にはいつまで?」

「まだ決めていません」

「シルビア嬢はコーデュロウ家のことは興味ありませんね?」

「実は事故に遭って記憶が欠如しているのです。
家族以外 忘れてしまって」

「大丈夫なのか」

「はい。傷はないのです。
ですが忘れたことが多くて不便なこともありますが、領地でのんびり暮らす分には支障はありませんわ」

「兄君はやはり君以外とは踊らないようですね」

「あ、本当。何故でしょう」

「……素敵な時間をありがとう」

「こちらこそ、空を飛べましたわ」

「それは良かったです。兄君のところに行きましょう」

カイン兄様のところに行くとヘンリー様が明日の訪問と、洗料などを見たいと交渉していた。

窓の外を見ると雨が降り出していた。


「シルビア嬢、明日の午後に訪問するから居てくれませんか」

「はい、お待ち申し上げます」

「では、カイン殿。シルビア嬢。失礼します」

ヘンリー様が離れると兄様にお願いした。

「雨が降っているから一緒に帰りたいです。
馬車に乗せてください」

「荷物を取りに向かおうか」

「はい」


お兄様は廊下に待たせて、部屋に兵士とメイドと入り荷物を纏めた。

「シルビア様、本当にお帰りになるのですか」

「ええ。お世話になりました」

「王太子殿下はご存知ですか」

「許可は要らないのよ」

「……」



兄様と先に屋敷に戻った。

ドレスを脱ぎ湯浴みをして夕食を食べた。

足のマッサージをしてもらいベッドに横になった。


“シルビア”

アイザックの悲しそうな顔が頭から離れない。

絶対に仲良くなりたくない相手なのに。


今日は雨だから瞬間移動はしてこない。
ゆっくり眠れる貴重な日なのにその夜はなかなか眠れなかった。



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