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ライアン達の子

シャイな令嬢

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【 カトリーヌの視点 】


今日は土曜日。第三土曜日だから一年生は午前中は授業があり、そのままリリアン様を連れて帰った。

着替えてくると言い出したけど、その分時間が減ってしまうから、制服のまま連れてきた。


リリアン・バトラーズ。

公爵令嬢で殿下のお気に入り。
表に現れなくなって以来、数年ぶりに見かけたのは学園の教室だった。

窓際の席で一人座る彼女は凛としていて美しかった。
そして、彼女と近付きたいと思うのに時間はかからなかった。
だけど学生食堂で殿下がいつも側にいて、無視はしないが素っ気ない彼女に尻込みをしてしまった。

だって。
あんな風に冷たくされたらショックで登校拒否しそうだったから。
しかも、そのうち彼女はキレて殿下に不満を言い放ったから。


ある日お姉様の体調が優れず、休むかもしれないから先に行きなさいと母に促されて学園に登校した。
帰宅後に、お姉様が倒れたことを知った。

『休めと言ったのに無理するからだ』

『旦那様、学園長よりお手紙が届きました』

執事がお父様に手紙を渡した。

『助けてくれたのはバトラーズ家のご令嬢だ。
仰向けに倒れたところを駆け寄って、周囲に指示を出し、二度目の嘔吐に備えて体を横向けにしてくれたらしい。意識のないナディアが上を向いたまま戻したら窒素していただろう。
ナディアはその後直ぐにまた戻したそうだ。

その後もハンカチで汚れた顔を拭いてくれたようだ。こんなご令嬢がいたとはな』

『明日、バトラーズ家に訪問します』

『くれぐれもよろしく伝えてくれ』

『お母様、バトラーズ公爵令嬢はクラスメイトです』

『お友達なの?』

『…いいえ』

『カトリーヌ。ご令嬢が困っていたら助けてやりなさい』

『はい、お父様』


その後、食堂での騒動があった。

何故この令嬢達が執拗に彼女に付き纏い嫌がらせをするのか理解できなかった。
しかも格上。伯爵や子爵家の娘が公爵令嬢にとっていい態度ではない。
第一王子殿下の婚約者の友人というだけで許される行為ではない。

だから水をかけてやった。

そこから次々と令息方が加勢してくださった。
主に上級生だった。


屋敷に帰り、食堂での出来事を報告すると褒められた一方で、

『その三人は異常だな』

お父様は険しい顔をした。


そしてその後、決闘申し込みを馬鹿がしていた。
それはお姉様も登校を再開していて見ていた。

『お父様、セロン・マキシアがリリアン様に決闘を申し込みました! しかも顔に投げ付けたのです!』

『自分で投げ付けておいて、代理で伯爵家の私兵を出すみたいです』

私とお姉様がお父様を挟んで不安を口にした。

『マキシア家は一家心中でもするつもりなのか?
ただでさえ、社交から弾き出されているのに』

『心中ですか?』

『今の状態で重症なのに、逆恨みして決闘を申し込んだ。バトラーズ公爵家を本気にさせたら没落するだろう』

お父様のこの言葉は、ある意味当たった。


伯爵令嬢が決闘の翌週に登校しておらず、退学したことが掲示板に貼り出されていた。

決闘を受けたとき、彼女は自分自身で闘う素振りだったし、伯爵令嬢は代理を立てることを認めていた。
つまり、彼女は伯爵家の私兵に勝ったということになる。

騎士を輩出した家門や自身が騎士になりたい者は、彼女を羨望の眼差しで見るようになった。


私は少しずつ、頑張って彼女に話しかけていた。
だけどみんなのように話題を振って話しかけることができず、“落ちましたわよ” “お友達がお迎えにいらしていますわよ”

お節介令嬢と嫌がられるかと思ったら嬉しそうに微笑んでくれた。

そしてやっと、会話ができた。
決闘についての会話だったけど、嬉しかった。



少しして、 

『王都のマキシア伯爵邸は焼失した。一家全員亡くなったそうだ』

お父様が教えてくれた。



お姉様が私の部屋に来た。

『リリアン様をお招きしてくれない?』

『ええっ!?』

次の土曜日に、連れて帰って来てよ。支度して待ってるからか』

『私がですか?』

『チャンスを逃すつもり?』

『…頑張ってみます』


そして、(自称)話しかけようとすること7回目。

『もしかして、私にご用意ですか?』

向こうから話しかけて来た!

『あ、あの。これ、姉からのっ…お昼とか、お茶とか、お礼とか…』

恥ずかしい!緊張して上手く話せない!

『次の土曜授業の後ですね。お姉様に伺いますとお伝えください』

『ほ、本当に!?』

『はい。カトリーヌ様もご一緒かしら』

『え?…あ、はい!』

『楽しみにしていますね』

くう~!! やったわ!! ついに誘えたわ!!


という感じで、任務を達成し、帰って家族に褒められた。



そして当日。下校の馬車の中で、平静を装うのが大変だった。

「そういえば、ナディア様とカトリーヌ様はあまり似ておられませんね。うちも似ていませんが」

「私、養女なんです。
母は早くに亡くなって、父が三年前に事故で。

親戚のヴェルモット侯爵家に、兄と一緒に引き取られました。

兄は今は父の爵位を継いで伯爵になっています。
間があいている期間はヴェルモット侯爵が代理で繋いでくださいました。

その時に伯爵籍に戻るか検討をされましたが、私は侯爵籍で守られた方が私のためでもあるし、兄の負担を減らすためでもあるということで、嫁ぐまでは侯爵令嬢です」

「疎くてごめんなさい」

「謝らないでください。引き取ってもらえて、娘と同じように扱ってもらえて、伯爵位や財産を守ってくださって。私達は幸運でした」

「きっとお二人もヴェルモット家も素敵な方達なのですね」

「っ!」

「やだ、ちょっと! 泣かないで!」

「ふぇ~っ」















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