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ライアン(生まれ変わり)

覚醒

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 グレースは神の前で誓いを立ててグレース・バトラーズとなった。

初夜も大事に抱いた。

だけどそれ以降、グレースの態度が少しおかしい。
使用人達に聞いても分からないという。

次の夜にグレースと話し合いをした。

「何か気に入らないことがあるのか?
私との交わりが嫌なのか?」

「……」

「言ってくれないと対処できない」

「ライアン様は想い人がいらしたのですね。
それでも構いませんが嘘はつかれたくありませんでした。
ライアン様に愛する人がいるならそう仰っていただければ邪魔にならないようにすることだってできますわ」

「グレース、何を根拠にそんな事を?」

「初夜の後、ライアン様は寝言で仰いました。
 “ミーシェ、愛してる”と」

「……すまない。

これから説明をする。信じてもらえないかもしれないが事実だ。ある意味グレースを純粋な目で見てきたわけでもないことも認める。だけど、ミーシェとは君のことなんだ、グレース」

「はい?」

私は前世でのことを話した。生まれ変わったことも。そしてグレースがミーシェの生まれ変わりだということも。

「信じ難いお話ですね」

「グレース」

「前世のお話が本当でも、私がミーシェ様だという保証はありません。
もし、ミーシェ様が前世を覚えていたとしたら兄妹であったミーシェ様が兄上のライアン様を受け入れるとは思えません。白い結婚だったはず」

「それでも構わない」

「バトラーズ公爵家の血は残さなくてはならないのに?妾でも娶るおつもりですか」

「嫁いだ妹の子を養子にもらうか、血縁の明確な親戚の子を養子に貰えばいい」

「私は子爵家の娘ですし、支援もしていただいております。ライアン様とは政略結婚をしたのだと思って務めを果たしますわ」

その日から私はグレースに触れられなくなってしまった。
グレースが拒絶しているわけではない。

初夜以降、抱けなくなってしまった。

もしかしたら生まれ変わらない方が良かったのかもしれない。そんなことを思いながら数ヶ月が過ぎた。
途中、グレースが“離縁してもいい”、“妾や愛人を迎えてもいい”と言い出した。
その度に拒否をしてきた。


「ライアン様、お医者様がお呼びです」

気分の優れないグレースの為に医師を呼んでいた。

グレースの部屋へ入ると

「ライアン様、夫人はご懐妊でございます」

「胎に子が?」

「左様でございます」

初夜の、たった1回で授かった子だった。

「できるだけ安全に不快な症状を緩和するようにしてくれ。週に一度診察にも来て欲しい」

「かしこまりました」


医師が様々な説明を、私とグレースと専属メイドとメイド長と執事にした後、薬を調合しに帰った。

「グレース、ありがとう。
無理せず言い付けを守って健やかに過ごしてくれ」

「ありがとうございます。

ライアン様、もしどなたかお相手を作らないのでしたら娼館をご利用ください。
私は身重になりましたし、そうでなくても…」

「グレース。そんなつもりはない。
全ては私が原因だ。ゆっくり休んでくれ」




腹がしっかり目立ち、悪阻も治った頃にグレースの両親を招いた。

「まあ、グレース。素晴らしいわ」

「元気な子を産めるよう体調に気を使うんだぞ」

グレースの両親もとても喜んでくれた。




出産予定日が近付くと、毎日のようにオイルマッサージをして解した。

1度しか閨もなかったし、出産の時に裂けてしまわないようにする処置だ。
メイドにやらせる家が多いらしいが、私がした。
グレースは恥ずかしがって嫌がったが、非常に大事なことだと説明した。

始めてから3週間後にグレースは産気づいた。

痛みが軽減できるよう、できる限りのことをしてもらったが、まるで手足を切り落としているかのように痛がる。

前世のイザベルが出産した時は使用人に任せていた。産婆が呼ばれ、子が産まれてから私が呼ばれた。だから出産中のことは見ていなかった。

お産は痛い。常識として知っていたが、グレースを見て、こんなに辛く苦しむものなのだと驚いた。

手を握り、必死に祈った。


「グレース様、ライアン様、男の子です。おめでとうございます」

「グレース、ありがとう……グレース!?」

「大変だ!息が止まっている!」

「グレース!!」

医師と一緒に蘇生法を施すとすぐに息を吹き返した。

「良かった…」

「改めて診察をいたします」

離れて待った。
医師は診察を終えると、大丈夫だろうと言った。
念のために丸一日滞在してくれるそうだ。



メイド長が医師を客間に案内し、乳母が子を清めに行き、別のメイドも両親に知らせに行った。

グレースの手を握っていると瞼が開いた。

「……ライアン?」

「グレース気分はどうだ」

「あれ?ライアンなのにライアンじゃない。
 …グレース?」

「まさか、」

グレースは直ぐに意識を失った。
医師は少し熱があるが眠っているだけだろうと言った。

怖くて仕方ない。

もしミーシェの記憶が戻ったのだとしたら、男として娶った私を拒否するのではないかと。

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