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ライアン(生まれ変わり)

最初から転生

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「おぎゃあ」


「ねえ、あなた。どうもこの子、赤ちゃんのフリをしている気がするの」

「フリ?確かに賢そうだけど可愛い赤ちゃんじゃないか」

「おぎゃあ」

「ほら。おぎゃあの言い方が棒読みな気がするもの」

「ふえっ」

「ライアンをあまり虐めるな。母親に疑われて悲しそうだぞ」

「ばぶっ」




 私はライアン。この家に産まれた待望の男児だが、中身はライアン・サルトだ。

神への祈りが届いたのか、どうやら生まれ変わったらしい。だけどいつの時代なのか、ミーシェは生まれ変わったのかさえも分からない。

私は世界記録でも出すかのように、早く寝返り、早くハイハイをし、早く掴まり立ちをし、早く一人歩きをして、言葉を話せるよう努力した。


生後2ヶ月で、

“奥様!ライアン様が寝返りをうちました!”

生後3ヶ月で、

“奥様!ライアン様がジュースと仰いました!”

生後4ヶ月で、

“奥様!ライアン様がハイハイと掴まり立ちに成功しました!”




そして生後6ヶ月、

ラ「トイレ」

全「……」



夜の家族会議

母「ねえ。おかしいわよね」

父「きっとただの神童だろう」

執事「旦那様、稀な神童でございます」

乳母「まだ頭が重くてバランスが良くありませんが、ライアン様は早くも独り立ちに向けて頑張っておられます」

父「まさか」

母「子供用のカトラリーをお祝いにいただいたのだけど、欲しがるから渡してみたら自分で完璧に並べたのよ!?」

父「偶然だろう」

執事「まだ上手に持てませんが、有り得ないほどテーブルマナーをご存知です。
フィンガーボールも要求なさいました」

父「真似をしたんだろう」



そして8ヶ月になる前に歩けるようになった。



1年後には、

「新しい本に入れ替えて。
あとこれを手に入れて」

「サルト男爵家と王家の家系図ですか」

「200年前から載っているものがいい。
それを見た上で別の家系図も頼むことになる」

「……かしこまりました」



夜の家族会議

母「ねえ。誰が字を教えたの?」

父「絵本は読んでやったが」

乳母「絵本だと不満気で、ライアン様に選んでもらって読んでいます」

母「どんな本?」

乳母「歴史、貴族法などです」

母父「は!?」

執事「実は家系図のお取り寄せも頼まれました」




翌日、何かがとり憑いているかもしれないと教会に連れて行かれた。

「ライアン様は何歳ですか?」

「いっさいです」

「お名前は?」

「ライアンです」

「家名は?」

「かめい?」

その他いくつか質問され、聖水もかけられた。
なんとか誤魔化せた。


「ライアン様は賢いというだけで何かが乗り移ったり悪魔だったりということはありません」

「そうですか」

「稀な個性だと思えばいいと思います。貴族の跡継ぎであれば喜ばしいことではありませんか」

「そうですね。馬鹿だと困りますからね。
ありがとうございました」

「こちらこそ寄付をありがとうございます、バトラーズ公爵」


私はバトラーズ公爵家の長男に生まれた。
それを知ったのは数日前。

確かアネット母上の以前の婚約者がバトラーズだったはず。

つまり権力がある程度ある。サルトほどではないが金もある。ミーシェが生まれ変わっているのか、そうだとしても同じ時代なのか分からないが、もしものために勉強して鍛え上げないとならない。

勉強は空白の歴史の部分と復習で大丈夫だろう。
後は筋肉を付けたり体幹を鍛えなければ。









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