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プリュム家

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プリュム家には長期計画があった。 

お祖父様の代で見つけた薬草は、領地の一部に生えていた。

動物が食べていたので食用か薬草か。

持ち帰り、擦り潰し、絞ってみたお祖父様はネズミに与えてみた。元気だった。瀕死のネズミに与えてみた。瀕死のまま息絶えた。

お祖母様が気が付いた。部分的に手に艶が出て手触りがいい。

変わったことといえば、お祖父様が持ち帰った草を絞る時に使った布を濯いだこと。

そこから研究が始まり、美容品や傷薬にして儲けられると判断した。特に美容品に絞ることにした。
傷薬だと価格を下げるよう促されてしまうが、美容品なら値付けは自由。

だが、問題は量産するには生えている量が乏しいこと。別の場所で育てようとすると枯れてしまうこと。

生えていた場所の何かしらの環境が影響しているのだろうが、それが全く分からなかった。

他所に頼ると奪われてしまうし、プリュム子爵家は困ってはいなかったが余裕は無かった。

父の代になり4年前にやっと薬草の量産に成功した。
そこからどうするか家族会議をして、賭けに出ることにした。

効果は間違いない。

本格的な量産に向けて領地を担保に借金をした。


そして一昨年、売り方も考えて王都に店を出した。
オープンの数日前に社交界の中心である侯爵夫人に、プリュム家の商品だと他言しないようにお願いして1セットプレゼントした。

当たりだった。

直ぐに連絡が来て、王妃様が試すための1セットを預けて欲しいと言われた。夫人と母が一緒に登場し、安全のためにプリュム家の名を出さないで欲しいとお願いしながら献上した。

王妃様は母の肌に触ると微笑んだ。

2日後に、王妃様の方から呼び出しがあった。
肌に合わなかったのかとビクビクしながら母と一緒に出向くと国王陛下も同席なさっていた。

そしてテーブルの上に“王家御用達”のプレートが置かれた。

『売り方はそのままでいい。これを付ければ格上の貴族が絡むこともない。まあ、このまま名を伏せるのもいいだろう』

報われた瞬間だった。


開店したばかりの店が即プレートを付けたことで瞬時に完売となった。




「エミリアン様、少しは運動しないといけないってお医者様が、」

「では30分散歩に行こう」

2ヶ月前に婚姻したラナは妊娠5ヶ月だ。

長かった。

昔を思い出す。



彼女は平民で領民だ。
お祖父様の頃から秘密を守りながら支えてくれた家の生まれだ。
幼い頃から行儀見習いをさせ、勉強もさせた。

俺はラナが好きだったし、両親も反対しなかった。
事業が軌道に乗ったら求婚しようとしていた。
だけど借金をしたあたりで、ボヴァン伯爵家に目を付けられてしまった。
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