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翌朝、早起きしてせっせと編み物をしていた。
「サラ様、眠れませんでしたか?」
「大丈夫よ、コニー。頑張れば残りは今日中に仕上がるかなと思って頑張っているだけだから」
「今日中ですか!?」
「多分この縁談は断られると思うの。長居しては申し訳ないから仕上げてしまうわ」
「そんなことはありません。大旦那様はサラ様の体調を気にしておられました。ご気分は悪くありませんか?」
「大丈夫よ。二日酔いはしていないわ」
「朝食は食堂でよろしいでしょうか」
「アシル様が嫌でなければ」
「では、お支度をさせていただきます」
コニーは髪をハーフアップにして編み込んでくれた。
部屋のドアを開けるとアシル様が立っていた。
「あ、おはようございます」
「おはよう」
「昨夜は失礼いたしました」
「私が飲ませたのだから気にしなくていい。気分は悪くないか?」
「はい。何ともありません」
腕に掴まれと合図を送られたので手を添えた。
こんなことをしてもらうのは初めてだった。
公爵家のような高位貴族だと当たり前なのだろうか。
食事を楽しみ、その後は庭園のお散歩に連れて行ってもらえた。
「良かったら領地内の見学に行くか?」
「いいのですか」
「今日は近くの町に行こう」
“今日は”?
「あの、それはお見合いを続けてくださるということでしょうか」
「気が変わったのか?」
「アシル様が昨日の私を見て断ると思っておりました」
「そんなことは無い。君がいいならゆっくりしてくれ。その間に交流をしようと思う」
「ありがとうございます!すごく嬉しいです!」
「そうか。昼食後、少し休んでから出かけよう」
「はい」
屋敷から一番近い町に行き、お店を見て回った。
「い、いえいえ 結構です」
「何故 嫌がる」
「(アシル様とはお見合い中なだけで 買っていただくわけには参りません)」
宝飾店に入り、アシル様が“プレゼントをするから好きな物を選びなさい”と言い出していた。
アシル様の側に寄り、耳打ちをした。
「サルファール領の店では駄目か」
「ちょっと!昨日会ったばかりの私に買い与えるのはおかしいと言っているのです!変なことを言わないでください!」
お店の人に失礼じゃないの!
「(サラ様、ここは大旦那様の顔を立てて選んでくださいませんか。お願いいたします!)」
付き添いのコニーが私に小声で後ろからお願いをしてきた。
「見て回ってもいいかしら」
「勿論でございます」
一通り見て回った後、コニーを呼んだ。
「コニー。こっちに来て」
「はい、サラ様」
イヤリングを手に取りコニーの耳に近付けた。
「うん。これがいいわ。
すみません、これを包んでください」
「これがいいのか?」
「これは私からコニーへのプレゼントです。ですから私が支払います」
「そ、そんなサラ様っ」
「ではサラの分は私が選ぼう」
結局ネックレスを買ってもらった。公爵領家だとお見合いに来ただけで買ってくれるのかもしれない。
朝は庭園散歩、午後は領地見学。もしくは朝から領地見学。ときにはお泊りで領地見学をして過ごすこと20日。流石に帰らなくてはと別れを切り出した。
「母から手紙が届きました。長居してご迷惑になっていると叱られました。そろそろ帰りたいと思います」
「王都にか」
「はい」
「では私も一緒に向かおう」
「一緒にですか?」
「私が引き留めたのに君が叱られては可哀想だし、挨拶をするのが筋だからな」
「分かりました」
私はアシル様と公爵家の馬車に乗り、我が家の馬車にはコニーとアシル様の侍従が乗って王都へ移動した。
イリザス邸に到着すると両親と兄が出迎えた。
「お久しぶりでございます。娘がご迷惑をお掛けいたしました」
「母アメリーと申します。厚かましく長々と娘が居座り申し訳ございません」
「サラの兄フィリップと申します。お目にかかれて光栄にございます。どうぞ応接間へご案内いたします」
「伯爵は昔何度かお会いしておりますね。お元気そうで何よりです。夫人、彼女を引き留めて領地を連れ回していたのは私です。その様に仰らないでください。
フィリップ殿、はじめまして。
アシル・サルファールと申します」
「さあ、どうぞ」
「サラ様、眠れませんでしたか?」
「大丈夫よ、コニー。頑張れば残りは今日中に仕上がるかなと思って頑張っているだけだから」
「今日中ですか!?」
「多分この縁談は断られると思うの。長居しては申し訳ないから仕上げてしまうわ」
「そんなことはありません。大旦那様はサラ様の体調を気にしておられました。ご気分は悪くありませんか?」
「大丈夫よ。二日酔いはしていないわ」
「朝食は食堂でよろしいでしょうか」
「アシル様が嫌でなければ」
「では、お支度をさせていただきます」
コニーは髪をハーフアップにして編み込んでくれた。
部屋のドアを開けるとアシル様が立っていた。
「あ、おはようございます」
「おはよう」
「昨夜は失礼いたしました」
「私が飲ませたのだから気にしなくていい。気分は悪くないか?」
「はい。何ともありません」
腕に掴まれと合図を送られたので手を添えた。
こんなことをしてもらうのは初めてだった。
公爵家のような高位貴族だと当たり前なのだろうか。
食事を楽しみ、その後は庭園のお散歩に連れて行ってもらえた。
「良かったら領地内の見学に行くか?」
「いいのですか」
「今日は近くの町に行こう」
“今日は”?
「あの、それはお見合いを続けてくださるということでしょうか」
「気が変わったのか?」
「アシル様が昨日の私を見て断ると思っておりました」
「そんなことは無い。君がいいならゆっくりしてくれ。その間に交流をしようと思う」
「ありがとうございます!すごく嬉しいです!」
「そうか。昼食後、少し休んでから出かけよう」
「はい」
屋敷から一番近い町に行き、お店を見て回った。
「い、いえいえ 結構です」
「何故 嫌がる」
「(アシル様とはお見合い中なだけで 買っていただくわけには参りません)」
宝飾店に入り、アシル様が“プレゼントをするから好きな物を選びなさい”と言い出していた。
アシル様の側に寄り、耳打ちをした。
「サルファール領の店では駄目か」
「ちょっと!昨日会ったばかりの私に買い与えるのはおかしいと言っているのです!変なことを言わないでください!」
お店の人に失礼じゃないの!
「(サラ様、ここは大旦那様の顔を立てて選んでくださいませんか。お願いいたします!)」
付き添いのコニーが私に小声で後ろからお願いをしてきた。
「見て回ってもいいかしら」
「勿論でございます」
一通り見て回った後、コニーを呼んだ。
「コニー。こっちに来て」
「はい、サラ様」
イヤリングを手に取りコニーの耳に近付けた。
「うん。これがいいわ。
すみません、これを包んでください」
「これがいいのか?」
「これは私からコニーへのプレゼントです。ですから私が支払います」
「そ、そんなサラ様っ」
「ではサラの分は私が選ぼう」
結局ネックレスを買ってもらった。公爵領家だとお見合いに来ただけで買ってくれるのかもしれない。
朝は庭園散歩、午後は領地見学。もしくは朝から領地見学。ときにはお泊りで領地見学をして過ごすこと20日。流石に帰らなくてはと別れを切り出した。
「母から手紙が届きました。長居してご迷惑になっていると叱られました。そろそろ帰りたいと思います」
「王都にか」
「はい」
「では私も一緒に向かおう」
「一緒にですか?」
「私が引き留めたのに君が叱られては可哀想だし、挨拶をするのが筋だからな」
「分かりました」
私はアシル様と公爵家の馬車に乗り、我が家の馬車にはコニーとアシル様の侍従が乗って王都へ移動した。
イリザス邸に到着すると両親と兄が出迎えた。
「お久しぶりでございます。娘がご迷惑をお掛けいたしました」
「母アメリーと申します。厚かましく長々と娘が居座り申し訳ございません」
「サラの兄フィリップと申します。お目にかかれて光栄にございます。どうぞ応接間へご案内いたします」
「伯爵は昔何度かお会いしておりますね。お元気そうで何よりです。夫人、彼女を引き留めて領地を連れ回していたのは私です。その様に仰らないでください。
フィリップ殿、はじめまして。
アシル・サルファールと申します」
「さあ、どうぞ」
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