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回顧(学園)
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王宮のお茶会に参加したのは11歳のとき。
王女殿下の話し相手にと王都に屋敷を持つ伯爵家以上の11歳から14歳迄の令息令嬢が集められた。
ソフィア王女は12歳。金髪碧眼の美しい方だった。あまりの美しさに見惚れていて、同席の令嬢達に話しかけられていたのに気が付かなかった。
パシャッ
「あら、ごめんなさい」
水の入ったコップを私の方に倒したのは隣の侯爵令嬢だった。向かいの公爵令嬢も意地悪そうな笑みを浮かべていた。
イリザス家でそのようなことをする家族はいなかったから、どうしていいのか分からず、泣いてしまった。
「ちょ、ちょっと!こんなことぐらいで泣くなんて卑怯よ!そもそも貴方が私達を無視したんじゃない」
「無視なんて…」
「2回も話しかけたのに無視したじゃない!」
「私は、」
「この子はずっと王女殿下を見つめていたよ。お美しい方に意識が向いて、周りの音が耳に入らなかったんじゃないかな。そうだよね?」
隣のテーブルから話に割って入った彼こそ私の初恋の人 ウィリアム・フルノー侯爵令息だった。優しく微笑みハンカチを差し出してくれた。
「2人は私と同い歳の13歳だろう。小さな少女に対して恥ずかしくないのかい?」
「「 っ! 」」
「私にも10歳の従弟がいるから分かるけど、一点に集中して周囲の声が聞こえないことがまだある頃なんだ。そういうときは肩に手を置くなりして気付かせてから話すといいよ」
「わ、悪かったわ」
「私も悪かったわ」
「つい、お美しい方ばかりでボーッとしてしまいました。お茶会も初めてでご迷惑をおかけしました。
私の方こそ申し訳ございませんでした」
「初めてか。私も初めてのときは緊張してケーキを溢してしまったよ。君はこれからは同じテーブルの人には気を配らなくちゃね」
「ありがとうございます」
このとき、こんな素敵な人はいないと思ってしまった。
それを見ていたのか、王女殿下の話し相手として、私を含む同じテーブルの令嬢達と、助けてくれた令息と団長の男孫の5人が選ばれた。
心配だったけど、あのお茶会以降、平凡に生きてきた私を妹のように可愛がってもらえた。
ウィリアム様達が16歳になると学園が始まり、話し相手を卒業してしまった。王女殿下も成長されたということで、定例茶会は止めることになった。
私はウィリアム様と会えなくなって、毎週手紙を書いた。最初は出せば返事が返ってきたが、直ぐに2回に一度、3回に一度、月に一度と返信の頻度は下がっていった。
やっと16歳になり、学園に入った。
会いたいと手紙に書いても学業で忙しいといって会ってくれなかった。どこかのお茶会で会えて話しかけても、すぐに話を切り上げて“他の人とも話しておいで”と言われてしまう。だから学園で昼食を一緒にと夢を見ていた。
入学してみると学年毎に階も使う階段も分かれていて、学生食堂も座れるテーブルが学年毎に分かれていた。
でも、家からパンなどを持ってきて、裏の庭園で食べる人達もいる。だから思い切って3年生の教室に行き、ウィリアム様を捕まえた。
「ウィリアム様」
「サラちゃん。どうしたの?」
「明日、裏の庭園で昼食を一緒にと、」
「ごめんね。同級生の友達と食べて」
「でも、」
「昼食の時間も社交なんだよ。君も勉強と社交をしに通っているんだから学生としての務めを果たした方がいい。もう子供という扱いで庇ってあげられないよ。それに、他学年のフロアに来ることが許されているのは緊急時だけだ。入学のときに説明を受けたと思うけど?」
「受けました」
「君の行為に私も連帯責任を問われかねない。そろそろ相手に与える影響のことも考えないと」
「ごめんなさい」
「早く1年生のフロアに戻りなさい」
「失礼しました」
確かにウィリアム様の言う通り。だけど会いたくて 話したくて仕方がなかった。
王女殿下の話し相手にと王都に屋敷を持つ伯爵家以上の11歳から14歳迄の令息令嬢が集められた。
ソフィア王女は12歳。金髪碧眼の美しい方だった。あまりの美しさに見惚れていて、同席の令嬢達に話しかけられていたのに気が付かなかった。
パシャッ
「あら、ごめんなさい」
水の入ったコップを私の方に倒したのは隣の侯爵令嬢だった。向かいの公爵令嬢も意地悪そうな笑みを浮かべていた。
イリザス家でそのようなことをする家族はいなかったから、どうしていいのか分からず、泣いてしまった。
「ちょ、ちょっと!こんなことぐらいで泣くなんて卑怯よ!そもそも貴方が私達を無視したんじゃない」
「無視なんて…」
「2回も話しかけたのに無視したじゃない!」
「私は、」
「この子はずっと王女殿下を見つめていたよ。お美しい方に意識が向いて、周りの音が耳に入らなかったんじゃないかな。そうだよね?」
隣のテーブルから話に割って入った彼こそ私の初恋の人 ウィリアム・フルノー侯爵令息だった。優しく微笑みハンカチを差し出してくれた。
「2人は私と同い歳の13歳だろう。小さな少女に対して恥ずかしくないのかい?」
「「 っ! 」」
「私にも10歳の従弟がいるから分かるけど、一点に集中して周囲の声が聞こえないことがまだある頃なんだ。そういうときは肩に手を置くなりして気付かせてから話すといいよ」
「わ、悪かったわ」
「私も悪かったわ」
「つい、お美しい方ばかりでボーッとしてしまいました。お茶会も初めてでご迷惑をおかけしました。
私の方こそ申し訳ございませんでした」
「初めてか。私も初めてのときは緊張してケーキを溢してしまったよ。君はこれからは同じテーブルの人には気を配らなくちゃね」
「ありがとうございます」
このとき、こんな素敵な人はいないと思ってしまった。
それを見ていたのか、王女殿下の話し相手として、私を含む同じテーブルの令嬢達と、助けてくれた令息と団長の男孫の5人が選ばれた。
心配だったけど、あのお茶会以降、平凡に生きてきた私を妹のように可愛がってもらえた。
ウィリアム様達が16歳になると学園が始まり、話し相手を卒業してしまった。王女殿下も成長されたということで、定例茶会は止めることになった。
私はウィリアム様と会えなくなって、毎週手紙を書いた。最初は出せば返事が返ってきたが、直ぐに2回に一度、3回に一度、月に一度と返信の頻度は下がっていった。
やっと16歳になり、学園に入った。
会いたいと手紙に書いても学業で忙しいといって会ってくれなかった。どこかのお茶会で会えて話しかけても、すぐに話を切り上げて“他の人とも話しておいで”と言われてしまう。だから学園で昼食を一緒にと夢を見ていた。
入学してみると学年毎に階も使う階段も分かれていて、学生食堂も座れるテーブルが学年毎に分かれていた。
でも、家からパンなどを持ってきて、裏の庭園で食べる人達もいる。だから思い切って3年生の教室に行き、ウィリアム様を捕まえた。
「ウィリアム様」
「サラちゃん。どうしたの?」
「明日、裏の庭園で昼食を一緒にと、」
「ごめんね。同級生の友達と食べて」
「でも、」
「昼食の時間も社交なんだよ。君も勉強と社交をしに通っているんだから学生としての務めを果たした方がいい。もう子供という扱いで庇ってあげられないよ。それに、他学年のフロアに来ることが許されているのは緊急時だけだ。入学のときに説明を受けたと思うけど?」
「受けました」
「君の行為に私も連帯責任を問われかねない。そろそろ相手に与える影響のことも考えないと」
「ごめんなさい」
「早く1年生のフロアに戻りなさい」
「失礼しました」
確かにウィリアム様の言う通り。だけど会いたくて 話したくて仕方がなかった。
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