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閑話
ジョアンナ・サンドル
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私はサンドル侯爵家の長女、ジョアンナ。
第二王子殿下との婚約は政略結婚だった。
エリアス様と同じ年頃で、家に問題がなく、婚約者のいなかった侯爵家以上の令嬢は私だけだった。
エリアス様とは滅多にお会いしない。王宮主催の茶会などは婚約者として扱ってくれた。
だけど私のことを好きでもないし興味も持ってくれていない事が分かった。
このまま結婚したら私は寂しく死んでいくのかもしれない。
ある日父が遠縁の男の子を養子に迎えた。
お兄様と呼んだ。私より5歳年上だった。
仲良くなって楽しく過ごしていたある日、兄様に婚約者ができた。美しい令嬢だった。
胸の痛みと悔しさで気がついた。
私は兄様を好きだったんだと。
兄様は婚約者に夢中でもう私のことは後回しだ。
卒業パーティのドレスを仲良く選んでいた。
悔しくて悔しくて。
両親の寝室に媚薬があるのを知っていた。
貴族夫婦向けの優しい媚薬だと説明書に書いてあった。。
両親が不在の夜に私は、兄様の飲み物に混ぜた。
そして時間を待ち、わざと兄様の部屋を訪ねた。
勉強で分からないところがあると言って。
兄様はずっと落ち着かなかった。
私はわざと兄様の部屋に忘れ物をした。
そして私には大胆で母には大人しめの母のナイトウェアを着て待った。
長けは膝上。
リボンを首の後ろで結んでいるだけの脱がしやすいデザインで透けはしない。
だが体のラインに沿って張り付くような布地だ。
ノックが聞こえた。
いかにも寝ていましたという感じにベッドを乱す。
薄明かりにして扉をあけた。
兄様は驚いて私の体から目が離せない。
「兄様」
「あ、これを忘れただろう」
「ありがとう…あっ」
パサッ
緩めておいたリボンが解けナイトウェアが落ちた。
胸が露わになりショーツだけになった。
慌てたフリをしてナイトウェアを拾い上げようとした時に兄様に抱き上げられベッドに寝かされた。
その日、私は兄様に純潔を捧げた。
とても痛かったけど兄様が必死で私を求めていることが胸を満たした。
あの媚薬は青年には効き目が増したようで、勃たなくなるまで私を抱いた。
朝、起きると兄様の姿が無かった。
身なりを整えた兄様が入ってきて跪いて私に謝罪をした。
過ちだと言われた。
婚約を解消して兄様と結婚したいと言ったが、王子の婚約はそんな簡単ではない。裏切りを知られたら私は養子縁組を取り消されるし、ジョアンナは修道院へ送られるかもしれない。侯爵家と呼ばれなくなるかもしれないと言われた。
避妊薬を渡され、沈黙が最善の解決法だと言われた。
私は中身を捨てた。妊娠すれば私を娶るしかない。
だけど妊娠していなかった。
その後は兄様を忘れたくて他の令息と関係を持った。侍従にも慰めてもらった。
私とエリアス様が2年生になって、しばらくすると噂が耳に入った。
オヌール公爵令息とエリアス様がひとりの令嬢を取り合っていると。
令嬢はオヌール公爵令息の婚約者だった。
茶会で見かけた彼女は存在感の薄い子だった。
妬みから多くの令嬢から嫌がらせを受けていた。
確か閉じ込められて大事になったはず。
その内転落事故がありしばらく休んでいた子だ。
あんな平凡過ぎる子をエリアス様が?
信じられなかった。
観察していると、令嬢はオヌール公爵令息を拒絶していた。段々綺麗になっていく気がした。
オヌール公爵令息は彼女が好きなのだと分かった。
お昼休みにエリアス様があの子と過ごしていることが分かった。
やましい事は無く、勉強を教えているだけだった。
気のせいかと思ったが、時折2人の間に入って令嬢を守っていた。
長期休暇で我が領地にエリアス様を招待した。
その時に聞いてみた。
「クロノス伯爵令嬢とは親しいのですか」
「友人になった。努力家で望まぬ婚約に苦しめられている。助けてやりたいと思った」
自分のことのように語り出した。
まるで私のと婚約を望んでおらず苦しんでいると聞こえた。
ひとりで夜を過ごすことができず、交代後の近衛騎士を誘い媚薬入りのお酒を飲ませた。2人は飲んで私を抱いたが1人は飲まなかった。
だけど見ているうちに我慢できなくなったようで慰めてあげた。
抱き潰されぐっすり眠った。
その後も2人の騎士とは関係を持っていた。
ある日のエリアス様とのお茶会でとんでもないことを知った。
処女じゃなければ結婚できない!?体を調べる!?
そんなことをされたら私は…。
親睦を深めると言って王族の血筋のオヌール公爵家、その婚約者のクロノス伯爵令嬢。
王族の血筋のカザハ公爵一家とエリアス様の婚約者の私と両親が呼ばれた。
始まる前にエリアス様に媚薬を染み込ませた菓子を渡した。既成事実を作らなくては。
登場した令嬢は平凡だったはずなのにとても美しかった。気品のあるとても美しい礼で周囲を魅了した。
エリアス様もオヌール公爵令息も見惚れていた。
彼女のドレス…エリアス様が贈ったのね。
エリアス様の瞳の色にエリアス様の髪の色の刺繍。
まるで婚約者はあの子だと言っているようなもの。
きっと王宮メイドが変身させたんだわ。
でも晩餐会で話についてこられるわけがない、そう思っていた。
ついていけなかったのは私の方だった。
北の国境付近の病気?
私は振られた質問に適当に濁して返したのが裏目に出た。
国境の新聞なんか読まないし、王宮新聞は令嬢達が好みそうなゴシップと美容の記事しか読まない。
皆、私を蔑んでいる目をしていた。エリアス様なんて見もしない。
侍女長…私なんてまともに会話などしたこともない。笑顔を見たこともない。外食?高級茶葉?
もう惨めでしかなかった。
晩餐会が終わると両親の客室で怒られた。
「王子妃になるのになんてことなの!」
「新聞くらい読め!」
自室に戻り悔しさからお酒を口にした。
体がおかしい。きっとイライラしてお酒を飲んだから疼くのだろう。
王族と令嬢の距離が近かった。
エリアス様は“リリ”と呼ぶときがあった。
日頃は愛称で呼んでいるからつい出てしまうのだろう。それを誰も咎めない。
陛下でさえ“リリアーナ”と親しげに呼ぶ。
私はエリアス様からジョアンナと呼ばれたこともない。
あの子を娶るつもりなのか。
私はお飾りの正妻になるのね。
夜更けに、エリアス様の部屋に行こうとするが近衛騎士に止められた。失敗か。
だが、体が火照って仕方がない。
私は教えられた騎士の控室へ忍び込んだ。1人しか居なかったが、食事でもしに行っているのだろうと思った。
全裸になり、男に抱きつくと男も寝巻きを脱いだ。
騎士にしては細い。まだ若い青年騎士だろう。なら可愛がってあげないと。
まずは彼の好きにさせた。あっという間に果てた。2度目は上に乗った。一生懸命男に快楽を与え喜ばせた。動きすぎて息切れがしてきたと思ったら部屋が少し明るくなっていたことに気が付いた。
声がして振り向くと王太子殿下達が立っていた。
慌てて退いて枕で隠す。男の顔が見えた。
オヌール公爵令息!?
そこからはもう転落するだけだった。
侯爵家は子爵家に降格。多額の慰謝料をエリアス様とクロノス伯爵令嬢に支払った。領地も3分の1以上売らなければならなくなった。
兄様の縁談は破断。
だけど兄様が手に入ると思っていた。
数日後、エリアス殿下が話があると訪ねてきた。
家族全員同席するようにとのことだった。
1枚の紙が渡された。
これは!!
「子爵。このリストは子爵令嬢が肉体関係をもった相手の名前と日付けです。
うちには優秀な影がおりまして、調べ上げました。
そして晩餐会の夜に令嬢から渡された菓子です。
調べさせたら媚薬入りでした。お返ししますね」
「まさか」
「養子にとったご令息が令嬢の純潔を散らしたようですね。結婚させて婿養子にしてはいかがですか。
処女ではないと王子妃にはなれないし、式前日に処女かどうか調べる決まりだと教えたら令嬢は真っ青になりました。
教えていなかったのですね。
この媚薬入りの菓子で私と既成事実を作ろうとしていたみたいですが、これは大罪ですよ?
王族に薬を盛ったら処刑です」
「あ…」
「まぁ、この件は穏便に済ませます」
「感謝いたします」
「子爵令嬢。
私は君を愛していなかった。政略結婚のための婚約だし、王子である以上仕方ないと思っていた。
だから私は、貴女を愛せなくても誠実でいようと、どんな誘いも断って純潔を守ってきた。
式をあげたら、恋愛感情はなくても尊敬しあえる夫婦になればいいと。
だがある時気が付いた。貴女は男を知っていると」
「ううっ…」
「調査を入れた結果がそれだ。
貴女が恥をかかないよう学園でも首席をとってきたし、貴女以外とはダンスもしなかった。贈り物には心を込めたつもりだった」
「ごめんなさい…ううっ…ごめんなさい」
「話は以上だ。失礼する」
その後はまた一悶着あった。
兄様が養子を解消させられそうになった。
「私が兄様に媚薬を飲ませたの。兄様が好きで」
父に殴られた。
母は泣いていた。
兄は部屋へ行ってしまった。
新聞に大きく掲載されて益々窮地に追い込まれた。
そして妊娠が発覚した。避妊薬は飲んだのにどうして…。
オヌール公爵令息、いや、今はオヌール伯爵令息の子だ。
話し合い、産まれてから判断するとのことだった。
婚約だけはした。
産まれた子はオヌール伯爵令息というよりはオヌール伯爵にそっくりだった。
親族の誰かに似ることがあるというやつだった。
私はオヌール伯爵令息と結婚した。
オヌール家はクロノス伯爵家に莫大な慰謝料を支払っていた。長年虐めや暴力に耐え、2度も殺されかけるまでに至ってしまった理由は息子が助長させたから。
そして複数人の不貞。
王家の分の慰謝料はクロノス伯爵家に渡して欲しいと言われたようだ。
元々金持ちの家だったのでそれでも裕福だが、収益が激減しているので、今後のことを考えて質素な生活をしている。
茶会には呼ばれず、友人達は去っていった。
王宮の催しでは爪弾きだ。
そのうち、エリアス様とクロノス伯爵令嬢の婚約が発表された。
王家の婚約パーティで、
夫は元婚約者を目で追っている。
私の元婚約者は令嬢にべったりと寄り添っている。
そしてまた妊娠が判明した。私の人生は一体…。
第二王子殿下との婚約は政略結婚だった。
エリアス様と同じ年頃で、家に問題がなく、婚約者のいなかった侯爵家以上の令嬢は私だけだった。
エリアス様とは滅多にお会いしない。王宮主催の茶会などは婚約者として扱ってくれた。
だけど私のことを好きでもないし興味も持ってくれていない事が分かった。
このまま結婚したら私は寂しく死んでいくのかもしれない。
ある日父が遠縁の男の子を養子に迎えた。
お兄様と呼んだ。私より5歳年上だった。
仲良くなって楽しく過ごしていたある日、兄様に婚約者ができた。美しい令嬢だった。
胸の痛みと悔しさで気がついた。
私は兄様を好きだったんだと。
兄様は婚約者に夢中でもう私のことは後回しだ。
卒業パーティのドレスを仲良く選んでいた。
悔しくて悔しくて。
両親の寝室に媚薬があるのを知っていた。
貴族夫婦向けの優しい媚薬だと説明書に書いてあった。。
両親が不在の夜に私は、兄様の飲み物に混ぜた。
そして時間を待ち、わざと兄様の部屋を訪ねた。
勉強で分からないところがあると言って。
兄様はずっと落ち着かなかった。
私はわざと兄様の部屋に忘れ物をした。
そして私には大胆で母には大人しめの母のナイトウェアを着て待った。
長けは膝上。
リボンを首の後ろで結んでいるだけの脱がしやすいデザインで透けはしない。
だが体のラインに沿って張り付くような布地だ。
ノックが聞こえた。
いかにも寝ていましたという感じにベッドを乱す。
薄明かりにして扉をあけた。
兄様は驚いて私の体から目が離せない。
「兄様」
「あ、これを忘れただろう」
「ありがとう…あっ」
パサッ
緩めておいたリボンが解けナイトウェアが落ちた。
胸が露わになりショーツだけになった。
慌てたフリをしてナイトウェアを拾い上げようとした時に兄様に抱き上げられベッドに寝かされた。
その日、私は兄様に純潔を捧げた。
とても痛かったけど兄様が必死で私を求めていることが胸を満たした。
あの媚薬は青年には効き目が増したようで、勃たなくなるまで私を抱いた。
朝、起きると兄様の姿が無かった。
身なりを整えた兄様が入ってきて跪いて私に謝罪をした。
過ちだと言われた。
婚約を解消して兄様と結婚したいと言ったが、王子の婚約はそんな簡単ではない。裏切りを知られたら私は養子縁組を取り消されるし、ジョアンナは修道院へ送られるかもしれない。侯爵家と呼ばれなくなるかもしれないと言われた。
避妊薬を渡され、沈黙が最善の解決法だと言われた。
私は中身を捨てた。妊娠すれば私を娶るしかない。
だけど妊娠していなかった。
その後は兄様を忘れたくて他の令息と関係を持った。侍従にも慰めてもらった。
私とエリアス様が2年生になって、しばらくすると噂が耳に入った。
オヌール公爵令息とエリアス様がひとりの令嬢を取り合っていると。
令嬢はオヌール公爵令息の婚約者だった。
茶会で見かけた彼女は存在感の薄い子だった。
妬みから多くの令嬢から嫌がらせを受けていた。
確か閉じ込められて大事になったはず。
その内転落事故がありしばらく休んでいた子だ。
あんな平凡過ぎる子をエリアス様が?
信じられなかった。
観察していると、令嬢はオヌール公爵令息を拒絶していた。段々綺麗になっていく気がした。
オヌール公爵令息は彼女が好きなのだと分かった。
お昼休みにエリアス様があの子と過ごしていることが分かった。
やましい事は無く、勉強を教えているだけだった。
気のせいかと思ったが、時折2人の間に入って令嬢を守っていた。
長期休暇で我が領地にエリアス様を招待した。
その時に聞いてみた。
「クロノス伯爵令嬢とは親しいのですか」
「友人になった。努力家で望まぬ婚約に苦しめられている。助けてやりたいと思った」
自分のことのように語り出した。
まるで私のと婚約を望んでおらず苦しんでいると聞こえた。
ひとりで夜を過ごすことができず、交代後の近衛騎士を誘い媚薬入りのお酒を飲ませた。2人は飲んで私を抱いたが1人は飲まなかった。
だけど見ているうちに我慢できなくなったようで慰めてあげた。
抱き潰されぐっすり眠った。
その後も2人の騎士とは関係を持っていた。
ある日のエリアス様とのお茶会でとんでもないことを知った。
処女じゃなければ結婚できない!?体を調べる!?
そんなことをされたら私は…。
親睦を深めると言って王族の血筋のオヌール公爵家、その婚約者のクロノス伯爵令嬢。
王族の血筋のカザハ公爵一家とエリアス様の婚約者の私と両親が呼ばれた。
始まる前にエリアス様に媚薬を染み込ませた菓子を渡した。既成事実を作らなくては。
登場した令嬢は平凡だったはずなのにとても美しかった。気品のあるとても美しい礼で周囲を魅了した。
エリアス様もオヌール公爵令息も見惚れていた。
彼女のドレス…エリアス様が贈ったのね。
エリアス様の瞳の色にエリアス様の髪の色の刺繍。
まるで婚約者はあの子だと言っているようなもの。
きっと王宮メイドが変身させたんだわ。
でも晩餐会で話についてこられるわけがない、そう思っていた。
ついていけなかったのは私の方だった。
北の国境付近の病気?
私は振られた質問に適当に濁して返したのが裏目に出た。
国境の新聞なんか読まないし、王宮新聞は令嬢達が好みそうなゴシップと美容の記事しか読まない。
皆、私を蔑んでいる目をしていた。エリアス様なんて見もしない。
侍女長…私なんてまともに会話などしたこともない。笑顔を見たこともない。外食?高級茶葉?
もう惨めでしかなかった。
晩餐会が終わると両親の客室で怒られた。
「王子妃になるのになんてことなの!」
「新聞くらい読め!」
自室に戻り悔しさからお酒を口にした。
体がおかしい。きっとイライラしてお酒を飲んだから疼くのだろう。
王族と令嬢の距離が近かった。
エリアス様は“リリ”と呼ぶときがあった。
日頃は愛称で呼んでいるからつい出てしまうのだろう。それを誰も咎めない。
陛下でさえ“リリアーナ”と親しげに呼ぶ。
私はエリアス様からジョアンナと呼ばれたこともない。
あの子を娶るつもりなのか。
私はお飾りの正妻になるのね。
夜更けに、エリアス様の部屋に行こうとするが近衛騎士に止められた。失敗か。
だが、体が火照って仕方がない。
私は教えられた騎士の控室へ忍び込んだ。1人しか居なかったが、食事でもしに行っているのだろうと思った。
全裸になり、男に抱きつくと男も寝巻きを脱いだ。
騎士にしては細い。まだ若い青年騎士だろう。なら可愛がってあげないと。
まずは彼の好きにさせた。あっという間に果てた。2度目は上に乗った。一生懸命男に快楽を与え喜ばせた。動きすぎて息切れがしてきたと思ったら部屋が少し明るくなっていたことに気が付いた。
声がして振り向くと王太子殿下達が立っていた。
慌てて退いて枕で隠す。男の顔が見えた。
オヌール公爵令息!?
そこからはもう転落するだけだった。
侯爵家は子爵家に降格。多額の慰謝料をエリアス様とクロノス伯爵令嬢に支払った。領地も3分の1以上売らなければならなくなった。
兄様の縁談は破断。
だけど兄様が手に入ると思っていた。
数日後、エリアス殿下が話があると訪ねてきた。
家族全員同席するようにとのことだった。
1枚の紙が渡された。
これは!!
「子爵。このリストは子爵令嬢が肉体関係をもった相手の名前と日付けです。
うちには優秀な影がおりまして、調べ上げました。
そして晩餐会の夜に令嬢から渡された菓子です。
調べさせたら媚薬入りでした。お返ししますね」
「まさか」
「養子にとったご令息が令嬢の純潔を散らしたようですね。結婚させて婿養子にしてはいかがですか。
処女ではないと王子妃にはなれないし、式前日に処女かどうか調べる決まりだと教えたら令嬢は真っ青になりました。
教えていなかったのですね。
この媚薬入りの菓子で私と既成事実を作ろうとしていたみたいですが、これは大罪ですよ?
王族に薬を盛ったら処刑です」
「あ…」
「まぁ、この件は穏便に済ませます」
「感謝いたします」
「子爵令嬢。
私は君を愛していなかった。政略結婚のための婚約だし、王子である以上仕方ないと思っていた。
だから私は、貴女を愛せなくても誠実でいようと、どんな誘いも断って純潔を守ってきた。
式をあげたら、恋愛感情はなくても尊敬しあえる夫婦になればいいと。
だがある時気が付いた。貴女は男を知っていると」
「ううっ…」
「調査を入れた結果がそれだ。
貴女が恥をかかないよう学園でも首席をとってきたし、貴女以外とはダンスもしなかった。贈り物には心を込めたつもりだった」
「ごめんなさい…ううっ…ごめんなさい」
「話は以上だ。失礼する」
その後はまた一悶着あった。
兄様が養子を解消させられそうになった。
「私が兄様に媚薬を飲ませたの。兄様が好きで」
父に殴られた。
母は泣いていた。
兄は部屋へ行ってしまった。
新聞に大きく掲載されて益々窮地に追い込まれた。
そして妊娠が発覚した。避妊薬は飲んだのにどうして…。
オヌール公爵令息、いや、今はオヌール伯爵令息の子だ。
話し合い、産まれてから判断するとのことだった。
婚約だけはした。
産まれた子はオヌール伯爵令息というよりはオヌール伯爵にそっくりだった。
親族の誰かに似ることがあるというやつだった。
私はオヌール伯爵令息と結婚した。
オヌール家はクロノス伯爵家に莫大な慰謝料を支払っていた。長年虐めや暴力に耐え、2度も殺されかけるまでに至ってしまった理由は息子が助長させたから。
そして複数人の不貞。
王家の分の慰謝料はクロノス伯爵家に渡して欲しいと言われたようだ。
元々金持ちの家だったのでそれでも裕福だが、収益が激減しているので、今後のことを考えて質素な生活をしている。
茶会には呼ばれず、友人達は去っていった。
王宮の催しでは爪弾きだ。
そのうち、エリアス様とクロノス伯爵令嬢の婚約が発表された。
王家の婚約パーティで、
夫は元婚約者を目で追っている。
私の元婚約者は令嬢にべったりと寄り添っている。
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