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夜会での過去
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【 ディオンの視点 】
微妙な空気のまま茶会は終わり、帰り際にカシャード伯爵夫妻がロクサンヌに“諦めなさい”と諭していたが、
ロ『でも、ディオン様は婚約してないもの』
ア『まだ子供のうちから次々と男に声を掛けるとは。私が駄目ならディオンですか。せめて別の機会に申し込むなりなさらないと失礼ですよ。
ウィルソン侯爵家とは家族同然の付き合いで、ディオンは弟のようなものです。あまり軽く見ないでいただきたい。ディオンは次期侯爵。貴女が相応しいとはとても思えません。
ディオン。早くお見送りを』
さっさと馬車に乗せて帰してしまった。
元々予定があった両親が屋敷に戻ったのは夜だった。
母『やっぱりアレクサンドル様が居れば問題無いわね』
父『流石にロクサンヌ嬢は侯爵家には難しいからな』
母『明日、レティシアちゃんの髪飾りでも買いましょう』
父『そうだな』
学園が始まる前に婚約者選びが始まった。
正直、侯爵家に害をなさない子なら誰でも良かった。
何件か釣書が届いたが、消去法を使うと1人しか残らなかった。それがミリアナ・ボロンだった。
会ってみると平凡だ。多分ロクサンヌあたりのレベルだろう。
母『ミリアナ様はロクサンヌ様より可愛いと思うわ』
俺『外見は世間でいう普通以上ならそれでいいですよ。レティシアじゃなければ皆同じです』
父『ミリアナ嬢と婚約したら愛想良く相手をしなさい。レティシアだとでも思えばいい。
妻になりウィルソン家を支えてくれる人になるんだから、そのくらいの演技は出来るだろう?』
俺『やってみます』
ミリアナとの婚約はこんな感じで決まった。
学園に入ると更にレティシアの世話のことしか考えていなかった。
アレク兄さんから、“公子に頼みたくない。寧ろ公子からも守って欲しい。レティシアを頼めるのはディオンだけだ。私は学園で見張ってやれないからな”と言われ、昼休みは厳選したクラスメイトを誘ってレティシアと一緒に過ごし、送り迎えして隙を与えなかった。
アレク兄さんがボイズ公子を認めていない、もしくは信用していないと分かったし、レティシアの側にいることを認められた気になって嬉しかった。
一緒に育ったから近過ぎて分からなかったが今は違う。レティシアは飛び抜けて美しいしどんどん大人の女になろうとしている。
パートナーとしてエスコートできない腹いせに、レティシアを口説くつもりでダンスに誘う。体を引き寄せ目で気持ちを伝えようとするが レティシアは一向に気付かない。
あの日、ボイズ公子がレティシアの唇を奪った日、決闘を申し込みたいくらいに憎かった。
ブレーズが察して、せっかくだから婚約者を使ったらどうだと言ったが、気を遣いたくなかった。
ブレーズは夜会の招待状を手に入れた。
『これは大人の夜会だ。友人の兄が回してくれた。
恋人探し、もしくはそういう相手を求める男女しか集まらない』
『誘ったことなんか…』
『私も一緒に行くから大丈夫だ』
数日後、馬車の中で黒い仮面を渡された。
『白は恋人探し、黒は一夜限りの相手探し、赤は愛人探しだ。だから黒い仮面の女に声をかければいい』
仮面をつけ、馬車を降り、招待状を見せて会場に入り見渡した。
『年齢層が幅広いな』
『マダムを当てたとしても失礼のないように相手をしろよ。仮面をつけていても正体がバレていて、後々痼りになることもあるからな』
『分かった』
だが、酒を飲み過ぎてソファで休んでいると赤い仮面の女が隣に座った。
『部屋に行かない?』
『俺の仮面は黒ですよ』
『それでもいいわ』
『経験も無いですよ』
『教えてあげるわ』
メイドに小金貨を渡し、部屋に案内してもらった。
ソファに脱いだ服を置いて女のドレスを脱がせた。
キスを強請られそうになったが押し倒して彼女の準備を整えた。
挿入しようとしたときレティシアの顔が浮かんだ。
だけど あいつとキスをしていた姿を思い出して事に及んだ。
高めて胸の上に吐精し、次に女が上に乗っても最後は体勢を入れ替えて腹の上に吐精した。
『もしかして、好きな子がいるの?』
『え?』
『叶わぬ恋なのね』
『……』
『来週も来ているから、良かったら声を掛けて』
すっかり酔いは覚め、身支度をしてブレーズと帰った。
次に行ったのは1ヶ月以上後だった。
『あの…』
横を見ると白い仮面の女が立っていた。
『私、ここに来るの初めてなんです』
『そうですか』
『今夜、私を召してくださいませんか』
『君は白い仮面だろう』
『できればってだけで必ずしもではないんです』
『…関係を持つのが初めてなら他を当たってくれ』
『初めてではないです』
『分かった』
俺と同じくらいか歳下か。そんな若い子がこんな場所で男を探すなんて。
抱いているうちに彼女の仮面が取れてしまったが、顔を見ても誰なのかは分からなかった。
事が済み、身支度をしていると女は背中に抱き付いた。
『恋人にはなれませんか』
『悪いが好きな女がいる』
『好きな人のために断るのに 夜会で他の女性と?』
『別の男と婚約したんだ。今夜はありがとう』
『待って!』
関わりたくなくて部屋から出た。
それ以来、あの夜会には行かなかった。
微妙な空気のまま茶会は終わり、帰り際にカシャード伯爵夫妻がロクサンヌに“諦めなさい”と諭していたが、
ロ『でも、ディオン様は婚約してないもの』
ア『まだ子供のうちから次々と男に声を掛けるとは。私が駄目ならディオンですか。せめて別の機会に申し込むなりなさらないと失礼ですよ。
ウィルソン侯爵家とは家族同然の付き合いで、ディオンは弟のようなものです。あまり軽く見ないでいただきたい。ディオンは次期侯爵。貴女が相応しいとはとても思えません。
ディオン。早くお見送りを』
さっさと馬車に乗せて帰してしまった。
元々予定があった両親が屋敷に戻ったのは夜だった。
母『やっぱりアレクサンドル様が居れば問題無いわね』
父『流石にロクサンヌ嬢は侯爵家には難しいからな』
母『明日、レティシアちゃんの髪飾りでも買いましょう』
父『そうだな』
学園が始まる前に婚約者選びが始まった。
正直、侯爵家に害をなさない子なら誰でも良かった。
何件か釣書が届いたが、消去法を使うと1人しか残らなかった。それがミリアナ・ボロンだった。
会ってみると平凡だ。多分ロクサンヌあたりのレベルだろう。
母『ミリアナ様はロクサンヌ様より可愛いと思うわ』
俺『外見は世間でいう普通以上ならそれでいいですよ。レティシアじゃなければ皆同じです』
父『ミリアナ嬢と婚約したら愛想良く相手をしなさい。レティシアだとでも思えばいい。
妻になりウィルソン家を支えてくれる人になるんだから、そのくらいの演技は出来るだろう?』
俺『やってみます』
ミリアナとの婚約はこんな感じで決まった。
学園に入ると更にレティシアの世話のことしか考えていなかった。
アレク兄さんから、“公子に頼みたくない。寧ろ公子からも守って欲しい。レティシアを頼めるのはディオンだけだ。私は学園で見張ってやれないからな”と言われ、昼休みは厳選したクラスメイトを誘ってレティシアと一緒に過ごし、送り迎えして隙を与えなかった。
アレク兄さんがボイズ公子を認めていない、もしくは信用していないと分かったし、レティシアの側にいることを認められた気になって嬉しかった。
一緒に育ったから近過ぎて分からなかったが今は違う。レティシアは飛び抜けて美しいしどんどん大人の女になろうとしている。
パートナーとしてエスコートできない腹いせに、レティシアを口説くつもりでダンスに誘う。体を引き寄せ目で気持ちを伝えようとするが レティシアは一向に気付かない。
あの日、ボイズ公子がレティシアの唇を奪った日、決闘を申し込みたいくらいに憎かった。
ブレーズが察して、せっかくだから婚約者を使ったらどうだと言ったが、気を遣いたくなかった。
ブレーズは夜会の招待状を手に入れた。
『これは大人の夜会だ。友人の兄が回してくれた。
恋人探し、もしくはそういう相手を求める男女しか集まらない』
『誘ったことなんか…』
『私も一緒に行くから大丈夫だ』
数日後、馬車の中で黒い仮面を渡された。
『白は恋人探し、黒は一夜限りの相手探し、赤は愛人探しだ。だから黒い仮面の女に声をかければいい』
仮面をつけ、馬車を降り、招待状を見せて会場に入り見渡した。
『年齢層が幅広いな』
『マダムを当てたとしても失礼のないように相手をしろよ。仮面をつけていても正体がバレていて、後々痼りになることもあるからな』
『分かった』
だが、酒を飲み過ぎてソファで休んでいると赤い仮面の女が隣に座った。
『部屋に行かない?』
『俺の仮面は黒ですよ』
『それでもいいわ』
『経験も無いですよ』
『教えてあげるわ』
メイドに小金貨を渡し、部屋に案内してもらった。
ソファに脱いだ服を置いて女のドレスを脱がせた。
キスを強請られそうになったが押し倒して彼女の準備を整えた。
挿入しようとしたときレティシアの顔が浮かんだ。
だけど あいつとキスをしていた姿を思い出して事に及んだ。
高めて胸の上に吐精し、次に女が上に乗っても最後は体勢を入れ替えて腹の上に吐精した。
『もしかして、好きな子がいるの?』
『え?』
『叶わぬ恋なのね』
『……』
『来週も来ているから、良かったら声を掛けて』
すっかり酔いは覚め、身支度をしてブレーズと帰った。
次に行ったのは1ヶ月以上後だった。
『あの…』
横を見ると白い仮面の女が立っていた。
『私、ここに来るの初めてなんです』
『そうですか』
『今夜、私を召してくださいませんか』
『君は白い仮面だろう』
『できればってだけで必ずしもではないんです』
『…関係を持つのが初めてなら他を当たってくれ』
『初めてではないです』
『分かった』
俺と同じくらいか歳下か。そんな若い子がこんな場所で男を探すなんて。
抱いているうちに彼女の仮面が取れてしまったが、顔を見ても誰なのかは分からなかった。
事が済み、身支度をしていると女は背中に抱き付いた。
『恋人にはなれませんか』
『悪いが好きな女がいる』
『好きな人のために断るのに 夜会で他の女性と?』
『別の男と婚約したんだ。今夜はありがとう』
『待って!』
関わりたくなくて部屋から出た。
それ以来、あの夜会には行かなかった。
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