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夜会
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一人で会場に入ると男たちの視線が降り注いだ。
間違いなく誘われると確信した。
痛いのは嫌だから媚薬も持ってきた。
避妊薬は要らない。どうせ死ぬから。
お酒を受け取り一気に飲み干した後、友人を探した。
「ミシェル」
「エレノア!?」
「久しぶりね」
「どうしたのよ」
今までとは全く違う装いに友人ミシェルは驚いていた。
「五人目の婚約者もレティシアに盗られちゃったの」
「また!?」
「今回は妊娠していて、しかも跡継ぎもレティシアに変更されちゃったわ」
「信じられない…」
「だから我慢することは止めたの。婚約者のいる慎ましい令嬢も卒業よ」
「でも次の縁談があるでしょう」
「訳アリしか残っていないわ。まあ、私もそのうちの一人よね」
「エレノア…」
「いいのよ。ケンドル家で生きてはきたけど、私だけ家族ではなかったのよ。そう思ったら納得できたわ。
今夜は思いっきり楽しむことにしたの。もしかして似合っていない?」
「もちろん似合ってるわよ」
「ミシェルもよく似合っているわ。素敵なドレスね」
「ありがとう」
夜会に来て1時間以上経った。何人か男性から誘いがあったけどダンスでおしまい。
だってヤケになっていたって、体を許す相手は誰でもいいわけじゃない。舐め回すようにいやらしく見てくる男も息の臭い男も嫌だった。
多分最初で最後の交わりになるはずだから、少しは拘りたかった。
次第に酔ってきたのが分かり、一旦風にあたろうとバルコニーに出た。
「はぁ~」
深呼吸をした後、気配に気付いた。バルコニーの端に先客がいたのだ。
身なりからすると身分が高そうだった。
「気付きませんでした…失礼しました」
軽くカーテシーをして会場に戻り掛けたけど、自分の目的を思い出した。
「あの、今夜のお相手を探しています?」
「は?」
「違うならいいんです。他所を当たります」
扉に手を掛けると引き止められた。
「誘ってるということで合っているか?」
「いえ、誘われるのを待っています」
「……では私が誘おう」
「貴方のお名前は?」
「……」
「なんでも構いません。今夜だけ呼ぶ名前ですので、貴方のお父様のお名前でもお祖父様のお名前でもペットの名前でも構いません。もちろん家名は必要ありません。私の名は…ロリエにします」
「ロリエ?」
「私の人生そのものです。貴方は?」
「……」
「では私が名付けますね、カイザーはどうですか」
「カイザー?」
「領地にいる一番値の張る馬の名前です」
「…そんな期待をかけられても困る」
「はい?」
「ハデス」
「ハデス?」
「そうだ。ハデスにする」
「ではハデス様」
「ロリエ」
彼の手を取って会場となっていた屋敷を出てホテルに到着した。
こんなにいい部屋をとってくれなくてもいいのに。
お酒を注いで貰って飲んでいるとハデス様がカーテンを閉めている間にポケットの媚薬を出して飲み干した。洗面室に入り空き瓶を捨て、お花を摘んで軽く洗浄して戻った。
グラスに残ったお酒を飲み干して彼に近寄った。
上着を脱いで装飾品を外したハデス様は私のドレスを脱がせた。
しまった。下着まで考えていなかった。
慎ましい令嬢といった感じの下着を見られて少し恥ずかしかった。
その後は彼のなすがままに乱され、破瓜の痛みは快楽に混じって打ち消された。
そしてハデス様が果てると、レティシアとアルフレッドのことが頭を過ぎった。
あの二人はこんな濃密な時間を過ごしていたのね…
不覚にも涙が溢れてしまった。
「痛いのか?」
「いいえ、夢のような時間でしたわ」
そういうと、私と繋がったまま腰に手を回して状態を起こし向かい合わせに座った。
すごく恥ずかしい。
「ん…」
さっきはしなかったキスをしながら抱きしめ、再び抽送を始めた。
目を覚ますと まだ夜中のようだった。
ベッドから抜け出し下着を身に付けて、ドアから廊下を覗くとメイドがいたので手招きした。
小声でドレスを着るのを手伝って欲しいと告げると静かに入室して着せてくれた。
部屋を出てフロントへ行くと念のために持っていた金貨で支払いをして ホテルの馬車で屋敷まで送ってもらった。
翌朝、お父様にいろいろ聞かれた。
「昨夜は何をしていた」
「友人が招待してくれた夜会に出かけたのはご存知ありませんでしたか?」
「帰りが遅かったと聞いたが」
「婚約者が盗られたので気にする必要は無いと思い、ゆっくり楽しんでいました」
「嫁入り前の娘なのだから行動に気を付けなさい」
「それはレティシアに一度でも言いましたか?
当主様が躾けていれば、嫁入り前に 姉の婚約者に股を広げて妊娠などすることはなかったでしょう」
「エレノア!!」
「一つも間違えておりませんが」
「もういい!釣書が届いているから目を通しておきなさい!」
「かしこまりました」
部屋に戻って封筒を開けた。
田舎の男爵家とケチで有名な子爵家と騎士。
“全部断ります”という伝言付きでメイドに全部お父様の元へ釣書を持って行かせた。
間違いなく誘われると確信した。
痛いのは嫌だから媚薬も持ってきた。
避妊薬は要らない。どうせ死ぬから。
お酒を受け取り一気に飲み干した後、友人を探した。
「ミシェル」
「エレノア!?」
「久しぶりね」
「どうしたのよ」
今までとは全く違う装いに友人ミシェルは驚いていた。
「五人目の婚約者もレティシアに盗られちゃったの」
「また!?」
「今回は妊娠していて、しかも跡継ぎもレティシアに変更されちゃったわ」
「信じられない…」
「だから我慢することは止めたの。婚約者のいる慎ましい令嬢も卒業よ」
「でも次の縁談があるでしょう」
「訳アリしか残っていないわ。まあ、私もそのうちの一人よね」
「エレノア…」
「いいのよ。ケンドル家で生きてはきたけど、私だけ家族ではなかったのよ。そう思ったら納得できたわ。
今夜は思いっきり楽しむことにしたの。もしかして似合っていない?」
「もちろん似合ってるわよ」
「ミシェルもよく似合っているわ。素敵なドレスね」
「ありがとう」
夜会に来て1時間以上経った。何人か男性から誘いがあったけどダンスでおしまい。
だってヤケになっていたって、体を許す相手は誰でもいいわけじゃない。舐め回すようにいやらしく見てくる男も息の臭い男も嫌だった。
多分最初で最後の交わりになるはずだから、少しは拘りたかった。
次第に酔ってきたのが分かり、一旦風にあたろうとバルコニーに出た。
「はぁ~」
深呼吸をした後、気配に気付いた。バルコニーの端に先客がいたのだ。
身なりからすると身分が高そうだった。
「気付きませんでした…失礼しました」
軽くカーテシーをして会場に戻り掛けたけど、自分の目的を思い出した。
「あの、今夜のお相手を探しています?」
「は?」
「違うならいいんです。他所を当たります」
扉に手を掛けると引き止められた。
「誘ってるということで合っているか?」
「いえ、誘われるのを待っています」
「……では私が誘おう」
「貴方のお名前は?」
「……」
「なんでも構いません。今夜だけ呼ぶ名前ですので、貴方のお父様のお名前でもお祖父様のお名前でもペットの名前でも構いません。もちろん家名は必要ありません。私の名は…ロリエにします」
「ロリエ?」
「私の人生そのものです。貴方は?」
「……」
「では私が名付けますね、カイザーはどうですか」
「カイザー?」
「領地にいる一番値の張る馬の名前です」
「…そんな期待をかけられても困る」
「はい?」
「ハデス」
「ハデス?」
「そうだ。ハデスにする」
「ではハデス様」
「ロリエ」
彼の手を取って会場となっていた屋敷を出てホテルに到着した。
こんなにいい部屋をとってくれなくてもいいのに。
お酒を注いで貰って飲んでいるとハデス様がカーテンを閉めている間にポケットの媚薬を出して飲み干した。洗面室に入り空き瓶を捨て、お花を摘んで軽く洗浄して戻った。
グラスに残ったお酒を飲み干して彼に近寄った。
上着を脱いで装飾品を外したハデス様は私のドレスを脱がせた。
しまった。下着まで考えていなかった。
慎ましい令嬢といった感じの下着を見られて少し恥ずかしかった。
その後は彼のなすがままに乱され、破瓜の痛みは快楽に混じって打ち消された。
そしてハデス様が果てると、レティシアとアルフレッドのことが頭を過ぎった。
あの二人はこんな濃密な時間を過ごしていたのね…
不覚にも涙が溢れてしまった。
「痛いのか?」
「いいえ、夢のような時間でしたわ」
そういうと、私と繋がったまま腰に手を回して状態を起こし向かい合わせに座った。
すごく恥ずかしい。
「ん…」
さっきはしなかったキスをしながら抱きしめ、再び抽送を始めた。
目を覚ますと まだ夜中のようだった。
ベッドから抜け出し下着を身に付けて、ドアから廊下を覗くとメイドがいたので手招きした。
小声でドレスを着るのを手伝って欲しいと告げると静かに入室して着せてくれた。
部屋を出てフロントへ行くと念のために持っていた金貨で支払いをして ホテルの馬車で屋敷まで送ってもらった。
翌朝、お父様にいろいろ聞かれた。
「昨夜は何をしていた」
「友人が招待してくれた夜会に出かけたのはご存知ありませんでしたか?」
「帰りが遅かったと聞いたが」
「婚約者が盗られたので気にする必要は無いと思い、ゆっくり楽しんでいました」
「嫁入り前の娘なのだから行動に気を付けなさい」
「それはレティシアに一度でも言いましたか?
当主様が躾けていれば、嫁入り前に 姉の婚約者に股を広げて妊娠などすることはなかったでしょう」
「エレノア!!」
「一つも間違えておりませんが」
「もういい!釣書が届いているから目を通しておきなさい!」
「かしこまりました」
部屋に戻って封筒を開けた。
田舎の男爵家とケチで有名な子爵家と騎士。
“全部断ります”という伝言付きでメイドに全部お父様の元へ釣書を持って行かせた。
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