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全てを奪われた姉

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あれ以来、アルフレッド様が私に会いに来ることもなく、当然誘われることも手紙が届くこともなく4ヶ月が経過していた。

ある日お父様から話があると呼ばれて応接間へ行くとお父様とお母様、アルフレッド様と伯爵、そしてアルフレッド様の隣にはレティシアが座っていてハンカチで目元を拭っていた。

挨拶をして着席すると伯爵が頭を下げた。

伯「エレノア嬢、申し訳ない」

私「何がでしょうか」

母「レティシアが妊娠したのよ」

私「はい?」

父「はぁ…こうなってしまってはレティシアをアルフレッド殿と婚姻させるしかない」

私「…そうですか。レティシアの婚約者には?」

父「謝罪と違約金を支払ってきた」

私「レティシアは伯爵家でお世話になるのですね」

父「いや、アルフレッド殿は跡継ぎではないから、レティシアにケンドル家を継がせる」

私「お父様!?」

父「おまえには改めて縁談を探す」

私「今更?何故婚約者を寝取った妹と不義の塊のアルフレッド様に跡継ぎの座を奪われなくてはならないのですか!」

母「エレノア、落ち着いて」

私「お父様もお母様も異常です!何故いつもレティシアを躾けないで同じことを繰り返させるのですか!
2人は伯爵家の領地に住まわせれば済むではありませんか!」

父「エレノア。もう決めたことだ」

私「お父様!」

父「当主の私に決定権がある」

私「ハッ!どうやら私だけ血が繋がっていなかったみたいですね」

母「エレノア!」

私「そうでなければ家族全員からこんな仕打ちを受けるはずがありませんもの」

父「エレノア!」

立ち上がった私をお父様が止めるが、

私「当主が既にお決めになったのですよね?私が居る意味がありますか?
こんな穢らわしい場に呼び付けず 今後は決定事項だけ後で教えてください。

アルフレッド様、慰謝料を請求させていただきます」

ア「は?」

私「私は21歳です。単独で訴訟を起こせる年齢です。もう浮気相手の胎に浮気の証拠がある以上、言い逃れはできませんわよ?」

ア「っ!」

妹「お姉様、ごめんなさい!許してください!」

私「何度も姉の婚約を壊して五回目は姉の婚約者を寝取って妊娠したアバズレを許すわけないじゃない」

父「エレノア!!」

母「なんてことを言うの!」

私「お母様は、お母様の妹とお父様が寝ても文句を言わずに出て行きますか?」

母「っ!」

私「隠し子がいると言われても、どうぞ妻の座を差し上げます 私はどこかに嫁ぎますと笑顔で仰るのですね?」

父「分かった、もう下がりなさい」

バタン!



私室に戻り閉じ籠った。

私は全部失った。
跡継ぎの座も、家族も婚約者も全部。

もう良縁なんて残っていない。手遅れだ。
難ありの令息の元へ嫁ぐしかない。

「もう疲れたわ…」

いっそのこと、この屋敷の居間か食堂で首を吊ってしまおう。
家族が集まる度に首を吊った私の姿を思い出すでしょうね。
 
夜中に紐を持って一階に降りた。

シャンデリアを見上げて、脚立が必要だなと思ったけど何処にあるのか分からない。探していたら使用人に気付かれてしまう。

仕方なく、椅子に乗ってカーテンレールに紐を掛けて首に紐を巻いて椅子から降りた。
 
バキッ! ドスン!

「痛っ」 

カーテンレールが壊れて首吊りに失敗してしまった。
慌てて紐を回収して私室に戻った。

翌朝、鏡を見ると顎の下の首に紐の痕が残っていた。



5日引きこもったところでお父様が部屋を訪ねてきた。

「エレノア、そろそろ気持ちを入れ替えて仕事を始めてくれないか」

正気なの!?

、私がケンベル子爵家の仕事を手伝っていたのは跡継ぎとしての役目だと思ったからです。ですが当主様は跡継ぎの変更をなさいました。
当主命令でレティシアを指名したのですから、レティシアに仰ってください。レティシアがやらないのなら婿入りするレティシアの新しい婚約者に仕事をさせてください。
私は1秒たりともケンベル家の仕事をする気はございません」

「エレノア…家族だろう」

「貴族籍では家族ですが実情は違います。
私は嫁に出される身。これからは今までのレティシアのような暮らしをさせていただきますわ。それが公平というものですよね?」

「……」

お父様は無言で退室した。


机の上に目を向けると出席の返事を出してあった夜会の招待状が置いてあった。

「今夜だったわね」

学友の婚約者のお屋敷で開く夜会で、招待状をもらっていたのを忘れていた。

もしかして最後の社交になる可能性が高いわね。

カーテンレールを壊してしまって犯人探しをしているみたいだから夜中に居間か食堂へ行くことができない。
落ち着いたらまた首を吊ろうと思っている。

衣装部屋でドレスを見たけど、どれも婚約者持ちの慎ましいドレスだった。

「買い物に出かけたいの」

「かしこまりました」

ドレス店に行き、手直しが必要にならなそうなドレスを持ってきてもらうことにした。

「今日の夜会に着て行きたいの。今までのような大人しいドレスは着たくないわ」

「かしこまりました」

サイズの合うドレスを何着か持ってきてもらった。
どれも着たことのない大人のドレスだった。多分これを着たら一夜の遊び相手として誘われるかもしれない。

ん? 私は死のうとしているのに そんなこと気にすることあるの?よくよく考えてみたら純潔を守って死ぬなんて馬鹿よね。慎ましくあろうと気を付けることはもうしなくていいのだわ。

オフショルダーでスリットの入ったドレスを選んだ。階段や激しいダンスでは脚が見えるデザインのものだった。

屋敷に帰ると メイドに全身のマッサージを頼んだ。浮腫やくすみを取ってもらわないと。
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