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クロネック子爵家の闇
しおりを挟む【 カインの視点 】
調査報告書がやっと届いた。
父親のアダム・クロネックは典型的な貴族。
妻がいながら愛人を作って子まで産ませていた。
一歳下の異母妹のメリッサは愛人である母ミネルヴァと一緒に、子爵夫人の亡き後に屋敷に連れてこられた。
ミネルヴァは後妻に収まり、メリッサはクロネック子爵家の次女として届けられた。
後妻は子爵がいないときにアリサを虐め、少しずつ環境を悪くした。
一部のメイド達はアリサの世話を怠けた。
子爵が泊まりで屋敷をあけるときは食事を与えないなどの虐待もした。
ミネルヴァはアリサには質素なものしか買い与えなかった。
アダムは嫡男のことは注視したが、娘二人は完全にミネルヴァに任せていた。
そして、デビュータントから三日後、アダムは闘病の末に死んだ。嫡男マークは急いで手続きをして子爵となり、子爵家や領地の把握に多忙となり、後妻や妹達のことを構う余裕は無かった。
マークは同腹の妹が婚約解消しても、義母が“アリサが嫌がるから”というと鵜呑みにした。
アリサの元婚約者がメリッサと婚姻したいと言っていて、アリサも承諾したと後妻が説明したので了承した。
アリサの閨係も、アリサの希望で妾を目指したいと言われたと後妻から説明を受けて了承した。
マークを含む使用人に聴取して、あるメイドが事実を話した。
冷遇され続けていたこと。婚約解消も騙されて円満解消にしたこと。閨係も後妻が勝手に申し込んだことで、アリサは妾など狙っていなかったことが明らかになった。
後妻とアリサとメリッサの予算と実際の使用記録を確認すると、アリサの予算の8割を後妻とメリッサが使い込んでいた。
子爵の死も病死ではなかった。
マークは共謀はしておらず、言われるまま信じてしまった。
……酷い内容だった。
報告書を引き出しにしまった。
そして問題はもう一つ、初夜だ。
アリサの心が欲しいのに時間を与えてもらえない。
初夜を済ませろと侍女長からお小言を言われたばかりだし、純潔のままだと分かれば閨係の件は取り消しとなると側近は忠告した。
だから俺はアリサを抱くことにした。
取り上げられるなんて絶対に許さない。
アリサを採用してから一週間後の夜、貴賓室のアリサに会いに行き、はっきりと伝えた。
「アリサ。これから初夜となる。具合は悪くないか」
「はい、カイン様」
「アリサには酷かもしれないが、自然な交わりを望んでいる」
「…はい」
分かっていなさそうだな。
「つまり、感覚を麻痺させたり高めたりするようなものは使わない。使った方が処女には楽だ。
だけど痛みも疲れも全て、ありのまま感じて欲しい。
初夜は一生に一度しかない。
優しくするように努めるし、丁寧に解すから、アリサに痛みを与えることを許してくれないか」
「カイン様の仰せのままに」
「アリサ。嫌がることはしたくない。嫌だと思うなら薬を使う」
「少し…怖いです。カイン様が優しくしてくださるなら、お応えしたいと思います」
「ありがとう、アリサ」
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