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六話 作戦1
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「ってことで、協力者できたよ」
「まて、何がどうしてそうなった」
設定どおり京訛りで晴明に報告すると鋭いツッコミを頂いた。
今はお昼を食べる時間帯で、晴明と翔と俺とで三人で食堂のテーブルに着いていた。
俺の右隣に翔、向かい側に晴明が座っている。
珍しい組み合わせなのかチラチラと視線を感じる。それも仕方ないとは思う。
晴明は学園でも屈指のイケメンで風紀委員長。復讐対象で学園の生徒会長で一番の人気を誇る芦屋 帝と並んでかなりの美形。ライバルと言ってもいいだろう。ただし風紀委員なため親衛隊は存在しないが、もしあったとしたらかなりの規模になるだろう。
一方翔も負けていない。晴明ほどではないにしてもかなりのイケメン。チャラいけれど頼りになって明るいクラスのムードメーカー的存在でもある。後に聞いたがやはり親衛隊もちだった。復讐対象が一人会計の一宮 美澄もチャラくて緩いやつだが断然翔の方が良い男だと断言できる。あんな自分が楽しければ良いみたいな愉快犯なんていくら金を積まれてもいらない。
真面目な風紀とチャラい翔と平凡系美人なんて異色すぎると思う。チラチラみてしまう気持ちも分かる。俺だったらじろじろ見ていただろうから。
晴明のきちんと説明しろ、という視線を感じながらも俺はテーブルに付いている液晶型電子パネルでお昼ご飯を注文する。
ちなみにフライドポテトとショートケーキとミルクティーの砂糖なし。
主食ないけれど仕方ない。もともと人間みたいな食事は嗜好品であって腹を満たすものではない。無理に詰め込んでも怠くなるだけ。晴明はケーキだけは駄目と言っていたからポテトと飲み物も頼んだし、問題ないはず。
更に視線が鋭くなる晴明と、それを気にしない俺を見て翔はオロオロとしている。
「なぁひぃちゃん、ちゃんと話た方がええんやないか?」
何とかこのピリピリした空気を換えようと翔が話を切り出すもそれも無残に切り捨てられる。
「ひぃちゃん、だと……?」
鋭い視線で翔を睨みつける晴明によって。
晴明もなんでそこに反応するのだろう。怖すぎて翔が涙目になってこちらに助けてくれと視線を送ってくる。
チャラ男イケメンからワンコになってしまっている翔の涙目は、面白いからもう少し見ていたいが流石にそれは酷だろうと助け船を出すことにした。
「まぁまぁ落ち着きぃ、晴明。話しするから」
「だが……」
晴明は不満げな顔をして警戒心がどうのうこのと何か言った後、キッと翔を再び睨んだあと俺の方を見た。
「うわー、男の嫉妬って怖いわぁ」
ぼそりと翔が何か呟いたが俺には聞こえなかった。
「話の前に雅斗、さっき頼んだのはなんだった? 俺が見た所ジャンクフードとケーキと飲み物だったがソレが昼食なんて言わないよな?」
「え、そうだけど」
俺が即答すると晴明は米神を抑えた。
「約束守ったよ? ケーキだけじゃないでしょ」
「はぁ、お前に何を言っても意味がなかったか……。栄養面で心配だと言いたいところだがお前は関係ないからな。量的には腹が膨れるくらいだし、今日の所はよしとしよう。話しもあるしな」
晴明は諦めた風にして溜息を着いた。この攻防結構1000年前の平安時代から続いている。
妖怪の食事事情をしらなかった当時の晴明は俺によく食べろと五月蠅かった。当時はきちんと食べないと生きるのが難しかったから仕方ないけれど。
でも考えてみてほしい。当時の、それも平安時代の食事が、食が豊かな平成で生きた俺を満足させられるわけがないのだ。
今でいう白米ご飯の姫飯やアワビの酢の物とか汁物やチーズみたいな味がする蘇を食べられたのは上級貴族だけだ。甘いものなんてそれこそ食べることなどできなかった。甘味の代わりに桃や杏の干物、現代で言うドライフルーツを食べていた。
ちなみに蘇だが蜂蜜につけて、今で言うチーズケーキみたいな感じで食べられることもあった。
閑話休題。
「話をする前に、食べるもの頼んで。来たら隠蔽の術を使って晴明」
「分かった」
晴明は天丼定食、翔はスタミナ定食を頼み、暫くすると俺たちの頼んだものがきた。
その後すぐ晴明は隠蔽の術をかける。相変わらず完璧な仕事をするものだと感心する。それは翔も同じようで感嘆していた。
これで周囲には俺たちがただ談笑をしながら食事をしている様にしか見えないし聞こえない。
俺はポテトをもそもそと食べながら口を開いた。
「要約すると翔は自分の予知の力で俺を知って、お互いに目的が同じだから協力することになった。信頼はまだできなにけど信用はできると思う」
「雅斗……、お前は人を信用しすぎだ。こいつがあいつ等の伏兵だったらどうするきだ」
「その可能性は無きにしも非ずだけど、今の所だ丈夫よ。それにもしそうだったとしても、速攻で排除するから問題なし」
「そうか」
俺の言葉に満足げに頷く晴明。それを見た翔はすぐさま反応した。
「そこあっさり認めんといて! 排除って酷いやんひぃちゃん!」
「五月蠅い」
俺は翔にチョップをくらわす。
「痛いわぁ! ドメスティックバイオレンスぅ! フグッ」
なお騒ぐ翔の口にポテトを一気に詰め込んでいく。
翔は何故か至極幸せそうな顔をしながらもぐもぐと食べていた。何だか餌付けをしている気分である。
「で、復讐についてだけど誰から落とすのが得策だと思う? というか今は接点が特にないんだよね」
俺の質問に二人は考え込むも、すぐに晴明が口を開いた。
「まずは相手の情報が必要だな」
「それなら任せとき。今攻略するのに丁度いい復讐対象ピックアップするわ」
真剣な顔で話す姿に、何だか二人が頼もしく感じる。
すると翔はスマホを取り出した。
「俺の情報によるとやな。今一番攻略するのに向いとるんは一匹狼で有名な不良、武井 総司や」
武井 総司。復讐対象の中でも俺に暴力を振っていた回数が大い奴だ。
回数もさることながら一端に不良なため拳も強くて、よく当時の俺は骨折しなかったものだと思う。
かなりの美形で、跳ねた赤い髪と赤みがかったオレンジ色の瞳が特徴だ。制服も着崩し、シルバーアクセサリーやピアスをじゃらじゃらとつけていたっけ。
転校生にはさも忠犬といった感じだった。転校生に近づく奴、害をなす者を徹底的に排除しようとしていた。だから俺も暴力を振われたわけだが、あれはどっちかと言うと嫉妬の方が強かったように思う。
「まずは武井 総司のプロフィールやな。現在高校2年、歳は17、誕生日は8月23日、獅子座、身長188センチ。好きなものは家庭料理と家事と静かな場所。嫌いなのは煩いのと気に入らない奴やな。……よくこれで転校生好きになったわぁ」
確かにそうだ。あの転校生は話の通じない騒音宇宙人だ。変に力も強くて掴まれた腕を振りほどけなかった記憶がある。
武井 総司、面倒くさいからこれからは狼と呼ぼう。その狼の好みと転校生とでは一致するどころか嫌悪対象になっていてもおかしくない。
翔じゃないけど、何で転校生に惚れたのか甚だ疑問だ。
翔もよくここまで詳しく調べたものだ。ストーカーか何かかと思ってしまう。
「でも最近、なんかごっつう疲れとる顔しとるんよ。暗いゆうか。転校生ともあまりつるんどらん見たいやし。でも転校生に誘われて普通に付いて行っとるし仲違いした風でもなかったけど、付け入る隙はあると思うんよ」
転校生に引っ付いていないのかは謎だが、それならそれで丁度いい。
「確かに先に攻略する方がいいね。うん、そうしよう」
「話を完結したところ悪いが、あともう一つやっといた方が良いことがあるぞ」
満足げに頷いていた所を晴明の冷静な声が遮る。
「雅斗は特進コースに入った方が良い。とは言ってもそのうち入ることになるだろうが早いうちが良い。誰か俺たち以外の、できれば成績がいい奴の前で力を使った方が手っ取り早いな」
力を使う、か……。そんな力を使う場面なんてあるだろうか?
今かけている隠蔽の術も晴明がやっているものだし、この学園で俺以外でそれを感知できるものはいないだろう。
いっそ俺が術を掛ければ良かったな。ばれる程度で力を使って力があることをこの食堂で示せばあっという間に特進コース入りが可能だったかもしれないのに。
少し考え込んでいた翔が、静かに口を開いた。
「それなら妙案があるで」
思わず晴明と一緒に翔に顔を向けた。
一体どんな策があるというのだろうか。
「まて、何がどうしてそうなった」
設定どおり京訛りで晴明に報告すると鋭いツッコミを頂いた。
今はお昼を食べる時間帯で、晴明と翔と俺とで三人で食堂のテーブルに着いていた。
俺の右隣に翔、向かい側に晴明が座っている。
珍しい組み合わせなのかチラチラと視線を感じる。それも仕方ないとは思う。
晴明は学園でも屈指のイケメンで風紀委員長。復讐対象で学園の生徒会長で一番の人気を誇る芦屋 帝と並んでかなりの美形。ライバルと言ってもいいだろう。ただし風紀委員なため親衛隊は存在しないが、もしあったとしたらかなりの規模になるだろう。
一方翔も負けていない。晴明ほどではないにしてもかなりのイケメン。チャラいけれど頼りになって明るいクラスのムードメーカー的存在でもある。後に聞いたがやはり親衛隊もちだった。復讐対象が一人会計の一宮 美澄もチャラくて緩いやつだが断然翔の方が良い男だと断言できる。あんな自分が楽しければ良いみたいな愉快犯なんていくら金を積まれてもいらない。
真面目な風紀とチャラい翔と平凡系美人なんて異色すぎると思う。チラチラみてしまう気持ちも分かる。俺だったらじろじろ見ていただろうから。
晴明のきちんと説明しろ、という視線を感じながらも俺はテーブルに付いている液晶型電子パネルでお昼ご飯を注文する。
ちなみにフライドポテトとショートケーキとミルクティーの砂糖なし。
主食ないけれど仕方ない。もともと人間みたいな食事は嗜好品であって腹を満たすものではない。無理に詰め込んでも怠くなるだけ。晴明はケーキだけは駄目と言っていたからポテトと飲み物も頼んだし、問題ないはず。
更に視線が鋭くなる晴明と、それを気にしない俺を見て翔はオロオロとしている。
「なぁひぃちゃん、ちゃんと話た方がええんやないか?」
何とかこのピリピリした空気を換えようと翔が話を切り出すもそれも無残に切り捨てられる。
「ひぃちゃん、だと……?」
鋭い視線で翔を睨みつける晴明によって。
晴明もなんでそこに反応するのだろう。怖すぎて翔が涙目になってこちらに助けてくれと視線を送ってくる。
チャラ男イケメンからワンコになってしまっている翔の涙目は、面白いからもう少し見ていたいが流石にそれは酷だろうと助け船を出すことにした。
「まぁまぁ落ち着きぃ、晴明。話しするから」
「だが……」
晴明は不満げな顔をして警戒心がどうのうこのと何か言った後、キッと翔を再び睨んだあと俺の方を見た。
「うわー、男の嫉妬って怖いわぁ」
ぼそりと翔が何か呟いたが俺には聞こえなかった。
「話の前に雅斗、さっき頼んだのはなんだった? 俺が見た所ジャンクフードとケーキと飲み物だったがソレが昼食なんて言わないよな?」
「え、そうだけど」
俺が即答すると晴明は米神を抑えた。
「約束守ったよ? ケーキだけじゃないでしょ」
「はぁ、お前に何を言っても意味がなかったか……。栄養面で心配だと言いたいところだがお前は関係ないからな。量的には腹が膨れるくらいだし、今日の所はよしとしよう。話しもあるしな」
晴明は諦めた風にして溜息を着いた。この攻防結構1000年前の平安時代から続いている。
妖怪の食事事情をしらなかった当時の晴明は俺によく食べろと五月蠅かった。当時はきちんと食べないと生きるのが難しかったから仕方ないけれど。
でも考えてみてほしい。当時の、それも平安時代の食事が、食が豊かな平成で生きた俺を満足させられるわけがないのだ。
今でいう白米ご飯の姫飯やアワビの酢の物とか汁物やチーズみたいな味がする蘇を食べられたのは上級貴族だけだ。甘いものなんてそれこそ食べることなどできなかった。甘味の代わりに桃や杏の干物、現代で言うドライフルーツを食べていた。
ちなみに蘇だが蜂蜜につけて、今で言うチーズケーキみたいな感じで食べられることもあった。
閑話休題。
「話をする前に、食べるもの頼んで。来たら隠蔽の術を使って晴明」
「分かった」
晴明は天丼定食、翔はスタミナ定食を頼み、暫くすると俺たちの頼んだものがきた。
その後すぐ晴明は隠蔽の術をかける。相変わらず完璧な仕事をするものだと感心する。それは翔も同じようで感嘆していた。
これで周囲には俺たちがただ談笑をしながら食事をしている様にしか見えないし聞こえない。
俺はポテトをもそもそと食べながら口を開いた。
「要約すると翔は自分の予知の力で俺を知って、お互いに目的が同じだから協力することになった。信頼はまだできなにけど信用はできると思う」
「雅斗……、お前は人を信用しすぎだ。こいつがあいつ等の伏兵だったらどうするきだ」
「その可能性は無きにしも非ずだけど、今の所だ丈夫よ。それにもしそうだったとしても、速攻で排除するから問題なし」
「そうか」
俺の言葉に満足げに頷く晴明。それを見た翔はすぐさま反応した。
「そこあっさり認めんといて! 排除って酷いやんひぃちゃん!」
「五月蠅い」
俺は翔にチョップをくらわす。
「痛いわぁ! ドメスティックバイオレンスぅ! フグッ」
なお騒ぐ翔の口にポテトを一気に詰め込んでいく。
翔は何故か至極幸せそうな顔をしながらもぐもぐと食べていた。何だか餌付けをしている気分である。
「で、復讐についてだけど誰から落とすのが得策だと思う? というか今は接点が特にないんだよね」
俺の質問に二人は考え込むも、すぐに晴明が口を開いた。
「まずは相手の情報が必要だな」
「それなら任せとき。今攻略するのに丁度いい復讐対象ピックアップするわ」
真剣な顔で話す姿に、何だか二人が頼もしく感じる。
すると翔はスマホを取り出した。
「俺の情報によるとやな。今一番攻略するのに向いとるんは一匹狼で有名な不良、武井 総司や」
武井 総司。復讐対象の中でも俺に暴力を振っていた回数が大い奴だ。
回数もさることながら一端に不良なため拳も強くて、よく当時の俺は骨折しなかったものだと思う。
かなりの美形で、跳ねた赤い髪と赤みがかったオレンジ色の瞳が特徴だ。制服も着崩し、シルバーアクセサリーやピアスをじゃらじゃらとつけていたっけ。
転校生にはさも忠犬といった感じだった。転校生に近づく奴、害をなす者を徹底的に排除しようとしていた。だから俺も暴力を振われたわけだが、あれはどっちかと言うと嫉妬の方が強かったように思う。
「まずは武井 総司のプロフィールやな。現在高校2年、歳は17、誕生日は8月23日、獅子座、身長188センチ。好きなものは家庭料理と家事と静かな場所。嫌いなのは煩いのと気に入らない奴やな。……よくこれで転校生好きになったわぁ」
確かにそうだ。あの転校生は話の通じない騒音宇宙人だ。変に力も強くて掴まれた腕を振りほどけなかった記憶がある。
武井 総司、面倒くさいからこれからは狼と呼ぼう。その狼の好みと転校生とでは一致するどころか嫌悪対象になっていてもおかしくない。
翔じゃないけど、何で転校生に惚れたのか甚だ疑問だ。
翔もよくここまで詳しく調べたものだ。ストーカーか何かかと思ってしまう。
「でも最近、なんかごっつう疲れとる顔しとるんよ。暗いゆうか。転校生ともあまりつるんどらん見たいやし。でも転校生に誘われて普通に付いて行っとるし仲違いした風でもなかったけど、付け入る隙はあると思うんよ」
転校生に引っ付いていないのかは謎だが、それならそれで丁度いい。
「確かに先に攻略する方がいいね。うん、そうしよう」
「話を完結したところ悪いが、あともう一つやっといた方が良いことがあるぞ」
満足げに頷いていた所を晴明の冷静な声が遮る。
「雅斗は特進コースに入った方が良い。とは言ってもそのうち入ることになるだろうが早いうちが良い。誰か俺たち以外の、できれば成績がいい奴の前で力を使った方が手っ取り早いな」
力を使う、か……。そんな力を使う場面なんてあるだろうか?
今かけている隠蔽の術も晴明がやっているものだし、この学園で俺以外でそれを感知できるものはいないだろう。
いっそ俺が術を掛ければ良かったな。ばれる程度で力を使って力があることをこの食堂で示せばあっという間に特進コース入りが可能だったかもしれないのに。
少し考え込んでいた翔が、静かに口を開いた。
「それなら妙案があるで」
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