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† 特別篇――トランシルヴァニア編・序章 “闇夜ニ咲クハ鮮血ノ薔薇” (後)
しおりを挟む(ってなわけで来てはみたが、どういうことだ……?)
数百メートルの距離にある丘から、本部の大広間をまずは覗いてみたのだが――――
(なんでイタ公がぞろぞろと!?)
私服なので所属、階級までは判らないが、その佇まいから人目で上級の軍人だということが察せられた。奴らを招いて宴でも催しているわけではなさそうだ。
オイゲンの傍らには世界二位の妖屠・渕上業平が控えている。そして、発言しているのが四位のクロムウェル。東京湾でのベリアル戦で五位の赤崎権兵衛が殉職した件について、共同任務にあたっていた彼から説明でもしているのだろうか。
だとしたら、なぜイタリア軍の関係者が……?
(席順から力関係を予測すると…………)
日本では上座下座だが、キリスト教圏では右が同等を示す。おそらく将官クラス、威厳のある老紳士がオイゲンの右隣。代表席の左側には佐官にはなっているだろう壮年男が二人並んでいる。
(ん!? 今、渕上が消え――――)
オイゲンの身辺警護をしていたはずの彼の姿が突如として見えなくなってしまった。
「盗み見とは趣味が悪い」
棘が込められていながらも、清澄な武芸者然とした声が耳に入り、反射的に俺は飛び退く。
(ルシファーも反応できなかっただと……!?)
向き直ると目に入ってきたのは、魔王に迎撃する間も与えずこちらに白刃をつきつけた、接近戦では七騎士最強と名高い達人。
「こらこら、渕上君。主賓に暴力とは無粋じゃないか」
俺の双唇が驚嘆の一言を紡ぐに先んじて、本部の壁が外側四方に倒れ、遥か彼方からにこやかにこちらを見つめるオイゲンと目が合った。
「やあ、待ってたよ。早く来てくれて有り難い」
人間だった頃も含めて、こんなにデカい展開図は見たことがない。
闇夜ニ咲クハ鮮血ノ薔薇 序章 ――了――
これにて特別篇も終了です!
最後までお付き合いくださり、ありがとうございます。
今はただ、込み上げる感謝の想いをお伝えさせていただければ幸いです。
各サイト上でコメントしてくださった皆さん、ご意見・ご感想をTwitterやニコ生にお寄せくださった方々、オフ会などでアドバイスをしていただいた同志諸君、先輩方、素敵なイラストを提供してくださったラプターちゃん、そして――本作くらぐらを読んでいただいた全ての方、本当にありがとうございました!
小説カキコで本作の原型である“昏き黎蔭の鉐眼叛徒”を投稿し始めてから、早くも1年になろうとしています。
すべては、あのサイトで連載したことからでした。
カキコのシリアス・ダーク部門で4位に入賞したことがきっかけで、今こうして色々な投稿サイトで活動しています。
当時から応援してくださっている方々へ、重ねてお礼を言わせてください。
皆さん、本当にありがとうございます!
そして、まだまだ“トランシルヴァニア編”、“ローマ編”と続く今後の本シリーズと新作も、どうか気長にお付き合いください!
もっともっと皆さんに楽しんでいただける物語をお送りできるよう、精進し続けてゆきます。
作品だけでなく良き知らせもお届けできたら、嬉しい限りです。
以降もここやツイッ○ターに寄せられた感想、質問、アドバイスなどは必ず全てお返事させていただきますし、いつでもお待ちしています!
では皆さん、香ばしさに定評のある我が文体が再び上がってきたときは、また読んでみてください。
必ずや、期待に応えられる濃度をお届けさせていただきます。
作者 LucifeR
挿絵 白狼識さん
表紙 ラプターちゃん
Special Thanks
アルファポリスさん
小説家になろうさん
小説カキコさん
エブリスタさん
ミラクリエさん
taskeyさん
ライトノベル作法研究所さん
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