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† 十七の罪――ともだち(陸)
しおりを挟む「空間ねじ曲げてつくられた迷宮っつーことは、あっちのさじ加減に委ねられてんだろ。ま、どう好意的に解釈しても、倉庫の地下にんなスペースねーもんな。あー、どこまで行ってもこの調子なんて新手の嫌がらせかよ」
「ラービリンスッ、ラッラッラ、ラービリンス」
この蝿っ子は自分から話し始めといて、もう聞いてない。それはそうと、腹の立つ歌だ。
「うるさい」
「ふぐぅ…………」
あまりの音痴っぷりにより平生に引き戻されたらしい我らが隊長の一声によって、ラビリンス音頭は鎮圧させられた。
「……アダマースの地下で見たのを発展させた感じだけど……不思議なのは、こんなに力入れて準備してたのに、なんで最初わざわざ東の果てに陣どったのかな」
眉を傾け、考え込む三条。
「意外とロマンチストで記念にタワー登りたかったっつー訳でもなさそうだしなあ。やっぱ各国への対応で電波を押さえたかったのか……国盗り成功させる前提とは自信満々じゃねーか」
そうこう喋っているうちに、行く手が二又になっているのが見えてきて、足を止めた。
「分かれ道か」
「さっきまでずっと先までいっても一本道だったのに…………」
彼女の言う通り、視認できる限り続いていたはずだが、俺たちの前に現れたのは紛れもない分岐点である。
「幻術のたぐいではないな。なんらかの接近に反応して、さそいこむように変化するしくみじゃろう」
「どちらにしろ、どっちか選ばないとね…………」
「たぶん右だわ」
「えッ!?」
二人が同時に振り返った。
「なんでわかるの……?」
「呼んでんだわ。俺を――――」
甘い囁きのように、それは先ほどから俺の頭を駆け巡っている。
「……象山がきみをおびきだそうとしてるってこと? それって罠じゃないの」
「確かにノリは気持ち悪ぃんだけど、引っかけって感じはしねーんよな……昔こういう見え見えのヒントをわざと出してくるような遊びが好きな人間がいたんだわ。裏をかこうとして、考えすぎた俺はいつも自爆してた――そいつと同じタイプの人種だとしたら、ここは乗ってやるべきかもってさ」
† † † † † † †
無数の悪魔たちは姿を消し、茅原の見物する神殿前は、今や動くものが皆無となっていた。
「雑魚除けの為に揃えただけとはいえ、魔王の前では足止めにもならんかったか」
猛煙が晴れてゆく中、深紅の外套を靡かせて佇む痩身。珍しく乱れた着衣が、死闘の激しさを物語る。
「余としたことが、暫し戯れが過ぎた様だ。なれど――――」
おもむろに歩き出すと、彼は双唇を開いた。銀灰の長髪が流れ、垣間見える双眸は鋭い。
「其れ故に、良き下馴らしと相成った」
射抜くような視線を向けられた茅原は、上機嫌そうに嗤う。
「……いい目じゃんか。今度は全力を引き出させてやるよ」
「ほう。失望させて呉れるなよ、兵」
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声を落とし、彼は続ける。
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