討妖の執剣者 ~魔王宿せし鉐眼叛徒~ (とうようのディーナケアルト)

LucifeR

文字の大きさ
上 下
107 / 139

† 十七の罪――ともだち(陸)

しおりを挟む

「空間ねじ曲げてつくられた迷宮っつーことは、あっちのさじ加減に委ねられてんだろ。ま、どう好意的に解釈しても、倉庫の地下にんなスペースねーもんな。あー、どこまで行ってもこの調子なんて新手の嫌がらせかよ」
「ラービリンスッ、ラッラッラ、ラービリンス」
 この蝿っ子は自分から話し始めといて、もう聞いてない。それはそうと、腹の立つ歌だ。
「うるさい」
「ふぐぅ…………」
 あまりの音痴っぷりにより平生に引き戻されたらしい我らが隊長の一声によって、ラビリンス音頭は鎮圧させられた。
「……アダマースの地下で見たのを発展させた感じだけど……不思議なのは、こんなに力入れて準備してたのに、なんで最初わざわざ東の果てに陣どったのかな」
 眉を傾け、考え込む三条。
「意外とロマンチストで記念にタワー登りたかったっつー訳でもなさそうだしなあ。やっぱ各国への対応で電波を押さえたかったのか……国盗り成功させる前提とは自信満々じゃねーか」

 そうこう喋っているうちに、行く手が二又になっているのが見えてきて、足を止めた。
「分かれ道か」
「さっきまでずっと先までいっても一本道だったのに…………」
 彼女の言う通り、視認できる限り続いていたはずだが、俺たちの前に現れたのは紛れもない分岐点である。
「幻術のたぐいではないな。なんらかの接近に反応して、さそいこむように変化するしくみじゃろう」
「どちらにしろ、どっちか選ばないとね…………」
「たぶん右だわ」
「えッ!?」
 二人が同時に振り返った。
「なんでわかるの……?」
「呼んでんだわ。俺を――――」
 甘い囁きのように、それは先ほどから俺のなかを駆け巡っている。
「……象山がきみをおびきだそうとしてるってこと? それって罠じゃないの」
「確かにノリは気持ち悪ぃんだけど、引っかけって感じはしねーんよな……昔こういう見え見えのヒントをわざと出してくるような遊びが好きな人間がいたんだわ。裏をかこうとして、考えすぎた俺はいつも自爆してた――そいつと同じタイプの人種だとしたら、ここは乗ってやるべきかもってさ」


              † † † † † † †

 無数の悪魔たちは姿を消し、茅原の見物する神殿前は、今や動くものが皆無となっていた。
「雑魚除けの為に揃えただけとはいえ、魔王の前では足止めにもならんかったか」
 猛煙が晴れてゆく中、深紅の外套を靡かせて佇む痩身。珍しく乱れた着衣が、死闘の激しさを物語る。
「余としたことが、暫し戯れが過ぎた様だ。なれど――――」
 おもむろに歩き出すと、彼は双唇を開いた。銀灰の長髪が流れ、垣間見える双眸は鋭い。
「其れ故に、良き下馴らしと相成った」
 射抜くような視線を向けられた茅原は、上機嫌そうに嗤う。
「……いい目じゃんか。今度は全力を引き出させてやるよ」
「ほう。失望させて呉れるなよ、つわもの
 ルシファーも応じると、十数メートルの距離で歩みを止めた。
 声を落とし、彼は続ける。
「……最後に問う」


しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

【完結】転生7年!ぼっち脱出して王宮ライフ満喫してたら王国の動乱に巻き込まれた少女戦記 〜愛でたいアイカは救国の姫になる

三矢さくら
ファンタジー
【完結しました】異世界からの召喚に応じて6歳児に転生したアイカは、護ってくれる結界に逆に閉じ込められた結果、山奥でサバイバル生活を始める。 こんなはずじゃなかった! 異世界の山奥で過ごすこと7年。ようやく結界が解けて、山を下りたアイカは王都ヴィアナで【天衣無縫の無頼姫】の異名をとる第3王女リティアと出会う。 珍しい物好きの王女に気に入られたアイカは、なんと侍女に取り立てられて王宮に! やっと始まった異世界生活は、美男美女ぞろいの王宮生活! 右を見ても左を見ても「愛でたい」美人に美少女! 美男子に美少年ばかり! アイカとリティア、まだまだ幼い侍女と王女が数奇な運命をたどる異世界王宮ファンタジー戦記。

番から逃げる事にしました

みん
恋愛
リュシエンヌには前世の記憶がある。 前世で人間だった彼女は、結婚を目前に控えたある日、熊族の獣人の番だと判明し、そのまま熊族の領地へ連れ去られてしまった。それからの彼女の人生は大変なもので、最期は番だった自分を恨むように生涯を閉じた。 彼女は200年後、今度は自分が豹の獣人として生まれ変わっていた。そして、そんな記憶を持ったリュシエンヌが番と出会ってしまい、そこから、色んな事に巻き込まれる事になる─と、言うお話です。 ❋相変わらずのゆるふわ設定で、メンタルも豆腐並なので、軽い気持ちで読んで下さい。 ❋独自設定有りです。 ❋他視点の話もあります。 ❋誤字脱字は気を付けていますが、あると思います。すみません。

人生を共にしてほしい、そう言った最愛の人は不倫をしました。

松茸
恋愛
どうか僕と人生を共にしてほしい。 そう言われてのぼせ上った私は、侯爵令息の彼との結婚に踏み切る。 しかし結婚して一年、彼は私を愛さず、別の女性と不倫をした。

神様に嫌われた神官でしたが、高位神に愛されました

土広真丘
ファンタジー
神と交信する力を持つ者が生まれる国、ミレニアム帝国。 神官としての力が弱いアマーリエは、両親から疎まれていた。 追い討ちをかけるように神にも拒絶され、両親は妹のみを溺愛し、妹の婚約者には無能と罵倒される日々。 居場所も立場もない中、アマーリエが出会ったのは、紅蓮の炎を操る青年だった。 小説家になろうでも公開しています。 2025年1月18日、内容を一部修正しました。

スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活

昼寝部
ファンタジー
 この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。  しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。  そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。  しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。  そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。  これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。

家の庭にレアドロップダンジョンが生えた~神話級のアイテムを使って普通のダンジョンで無双します~

芦屋貴緒
ファンタジー
売れないイラストレーターである里見司(さとみつかさ)の家にダンジョンが生えた。 駆除業者も呼ぶことができない金欠ぶりに「ダンジョンで手に入れたものを売ればいいのでは?」と考え潜り始める。 だがそのダンジョンで手に入るアイテムは全て他人に譲渡できないものだったのだ。 彼が財宝を鑑定すると驚愕の事実が判明する。 経験値も金にもならないこのダンジョン。 しかし手に入るものは全て高ランクのダンジョンでも入手困難なレアアイテムばかり。 ――じゃあ、アイテムの力で強くなって普通のダンジョンで稼げばよくない?

魔力∞を魔力0と勘違いされて追放されました

紗南
ファンタジー
異世界に神の加護をもらって転生した。5歳で前世の記憶を取り戻して洗礼をしたら魔力が∞と記載されてた。異世界にはない記号のためか魔力0と判断され公爵家を追放される。 国2つ跨いだところで冒険者登録して成り上がっていくお話です 更新は1週間に1度くらいのペースになります。 何度か確認はしてますが誤字脱字があるかと思います。 自己満足作品ですので技量は全くありません。その辺り覚悟してお読みくださいm(*_ _)m

処理中です...