討妖の執剣者 ~魔王宿せし鉐眼叛徒~ (とうようのディーナケアルト)

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† 十三の罪――崩壊への序曲(漆)

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「みんながこれからどうするかは、それぞれが好きに決めなさい。一緒に来てほしくないと言ったら嘘になるけど、もう隊長じゃないのに巻き込むような野暮な真似はさすがにしないよ。背負う者がいる人はすぐに決められないだろうし、あくまで忠誠心を貫き通すって生き方もあることでしょう。ただ、考えることをやめないで。歴史が動こうとしている今、自分がなにをするべきか。それがぼくの歩む道と違った答えだったとしても、ぼくに非難する権利はない。ぼくが間違っていると思うのなら、全力で立ち向かえばいい。遠慮は無用。戦場で会えばこちらも手加減はしない。今まで身につけたすべての技でかかってきなさい」
 身を強張らせていた部下たちも、いつの間にか、涙ながらに聞き入っていた。
「……じゃあ、最後に――」
 一同を見渡し、表情を崩す元隊長。
「みんなに会えて、ほんとーによかった。最後までこんな陳腐なことしか言えない隊長を許してね。みんなといろんな任務につき、いろんな経験をした。この先どうなろうと、ぼくたちの心にある思い出は嘘じゃない。どうしようもなくなった時は、一緒に過ごした日々を思い出してくれたら嬉しいな。みんなはどうだったか、わからない。人それぞれ思うことはあるでしょう。でも、ぼくは楽しかった。どんなときも全力で生きた。大切な仲間とともに生きてきた。全力で鍛錬し、全力で戦い、全力でご飯を食べた」
「俺より食ってたんじゃねーか?」
 信雄に構うことなく、彼女は続ける。
「まあ人生ってのは思い通りにいかないものだね。これから困難に直面することもあるでしょう。つらいこと、苦しいこともきっとあるでしょう。それでもたちむかわなければならない。だから――最後の最後まで一生懸命に生き抜きなさい。人生に勝ち負けなんてないけど、後悔のない一生だって最後に本人が思えたら、少なくとも負けては無いでしょ」
 少し照れくさそうにはにかむと――――
「今まで……ほんとーに、ほんとーにありがとう。みんな」
 三条桜花はそう言い残して、戦友たちの元を後にした。

「良かったのかよ、あれで」
「別れはつらいけど、笑顔で終われてよかった。やっぱりさ、ぼくの隊はしめっぽいの合わないじゃん」
「……ま、おまえがいいならいっか。さて、二手に分かれよう。象山のこともある。俺はルシファーの知覚があるし先に行って様子を見てくる」
「気をつけてね。ぼくたちも被害者の救助をしながら向かうよ。ベルゼブブ、追える?」
 彼女に尋ねられ、ベルゼブブは当然とばかりに鼻を鳴らす。
「フン――同じ世にあって、吾輩がご主人さまを見失うはずがないじゃろ。付き合ってやるから好きにせよ」


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