44 / 139
† 八の罪――剣戟の果てに(弌)
しおりを挟む俺が瞼を開けると、サンタの格好をしたルシファーと目が合った。もう少し寝ていたほうが良かったかもしれない。
「メリクリ」
こんなに涼しい声のメリクリを耳にしたのは初めてだ。
「……なんで悪魔がイエスの生誕を祝ってんだよ。あんたサンタっつーかサタンだろ」
「地獄に於いてもやっていたぞ。娘がプレゼントを心待ちにしておる故な」
「既婚者でその性格かよ。つーか、あんた外に出てこられるようになったんだ」
「きみが力尽きたあと、ルシファーさんが代わりに戦ってくれてたんだよ」
上体を起こすと、ベッドに腰かけている三条が目に入ってきた。
「そいつは有り難い。で、今ここにいるっつーことは勝ったんだよな!?」
「如何に――」
「好意的に見ても、判定勝ちかな。ルシファーさんが奥義を発動しようってところで横槍が入りそうになって中断したけど、おたがいダメージは少なかったし、茅原さんは余力をまだ残している感じだった」
ルシファーの返答を遮り、三条が説明してしまう。
「まあ悔しいけど、俺との対決はボーナスゲームだったんだろ。ウォーミングアップ代わりにボコボコに叩き潰されるとは、我ながら情けねーなあ」
「いや、味方が全員やられた時点でいったん退いて待つべきだったんだよ。人間が戦える相手じゃないことぐらいわかってるでしょ!」
真っ赤な顔で向き直って、喚き散らす彼女。
「……ごめん、けが人に怒鳴ったりして。ほんとーにきみが無茶して怪我するのは昔から変わらないね。そして、そうなったらだれにも止められないことも――」
「ん? 昔って、俺ここに入って一年もたってねーだろ」
今度は急にしゅんとしてみたり、今日の三条は何かおかしい。
「そっ……それはともかく! いちおう乱は明け方までに鎮圧されたよ。関係者はほとんどが死亡、または逮捕されてる。かんじんの茅原さんは行方不明だけど、怪魔も指揮者がおとなしくなったから落ちついたって。あの群れを操っていたのは、前にベルゼブブの言ってたなんとか四天王のベリアルって悪魔だったんだ。たいへんだったんだから」
「ああ、あの気味悪い結界はそいつのせいだったっつーわけね。まーた厄介なのが出てきやがったな。ルシファーの本体は地獄で氷づけになってんだろ? そいつも何らかの召喚者がいて、現世にコピーが呼び出されてるっつーことか」
「いや、魔力をたくわえたあやつの結界内とはいえ、吾輩と渡り合うまねはまがい物なぞにはふきゃのうじゃ」
不慣れな長文で噛みそうになりながらも、ベルゼブブが太ももに乗っかりつつ教えてくれる。身を乗り出しただけのつもりなのだろうけど、うちの隊長が黙ったまま横目で睨んで来たので、早めに降りていただきたい。
「そっちも痛み分けかー。あ、そうそう! ベリアルって、俺でも聞いたことぐらいあるぜ。ソロモン七十二柱の代表格だっけか……確か、壺と指環があれば存在を留めとける、みたいな感じじゃなかったっけ? にしても、いったい誰が用意したんだ……? 上の目を盗んで最強クラス二匹も飼ってる俺らが言うのもアレだが」
「それについてなんだけど――――」
気まずそうに、三条が切り出した。
0
お気に入りに追加
16
あなたにおすすめの小説

番から逃げる事にしました
みん
恋愛
リュシエンヌには前世の記憶がある。
前世で人間だった彼女は、結婚を目前に控えたある日、熊族の獣人の番だと判明し、そのまま熊族の領地へ連れ去られてしまった。それからの彼女の人生は大変なもので、最期は番だった自分を恨むように生涯を閉じた。
彼女は200年後、今度は自分が豹の獣人として生まれ変わっていた。そして、そんな記憶を持ったリュシエンヌが番と出会ってしまい、そこから、色んな事に巻き込まれる事になる─と、言うお話です。
❋相変わらずのゆるふわ設定で、メンタルも豆腐並なので、軽い気持ちで読んで下さい。
❋独自設定有りです。
❋他視点の話もあります。
❋誤字脱字は気を付けていますが、あると思います。すみません。

人生を共にしてほしい、そう言った最愛の人は不倫をしました。
松茸
恋愛
どうか僕と人生を共にしてほしい。
そう言われてのぼせ上った私は、侯爵令息の彼との結婚に踏み切る。
しかし結婚して一年、彼は私を愛さず、別の女性と不倫をした。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
【完結】転生7年!ぼっち脱出して王宮ライフ満喫してたら王国の動乱に巻き込まれた少女戦記 〜愛でたいアイカは救国の姫になる
三矢さくら
ファンタジー
【完結しました】異世界からの召喚に応じて6歳児に転生したアイカは、護ってくれる結界に逆に閉じ込められた結果、山奥でサバイバル生活を始める。
こんなはずじゃなかった!
異世界の山奥で過ごすこと7年。ようやく結界が解けて、山を下りたアイカは王都ヴィアナで【天衣無縫の無頼姫】の異名をとる第3王女リティアと出会う。
珍しい物好きの王女に気に入られたアイカは、なんと侍女に取り立てられて王宮に!
やっと始まった異世界生活は、美男美女ぞろいの王宮生活!
右を見ても左を見ても「愛でたい」美人に美少女! 美男子に美少年ばかり!
アイカとリティア、まだまだ幼い侍女と王女が数奇な運命をたどる異世界王宮ファンタジー戦記。

婚約破棄?一体何のお話ですか?
リヴァルナ
ファンタジー
なんだかざまぁ(?)系が書きたかったので書いてみました。
エルバルド学園卒業記念パーティー。
それも終わりに近付いた頃、ある事件が起こる…
※エブリスタさんでも投稿しています
スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活
昼寝部
ファンタジー
この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。
しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。
そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。
しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。
そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。
これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。

家の庭にレアドロップダンジョンが生えた~神話級のアイテムを使って普通のダンジョンで無双します~
芦屋貴緒
ファンタジー
売れないイラストレーターである里見司(さとみつかさ)の家にダンジョンが生えた。
駆除業者も呼ぶことができない金欠ぶりに「ダンジョンで手に入れたものを売ればいいのでは?」と考え潜り始める。
だがそのダンジョンで手に入るアイテムは全て他人に譲渡できないものだったのだ。
彼が財宝を鑑定すると驚愕の事実が判明する。
経験値も金にもならないこのダンジョン。
しかし手に入るものは全て高ランクのダンジョンでも入手困難なレアアイテムばかり。
――じゃあ、アイテムの力で強くなって普通のダンジョンで稼げばよくない?

当て馬悪役令息のツッコミ属性が強すぎて、物語の仕事を全くしないんですが?!
犬丸大福
ファンタジー
ユーディリア・エアトルは母親からの折檻を受け、そのまま意識を失った。
そして夢をみた。
日本で暮らし、平々凡々な日々の中、友人が命を捧げるんじゃないかと思うほどハマっている漫画の推しの顔。
その顔を見て目が覚めた。
なんと自分はこのまま行けば破滅まっしぐらな友人の最推し、当て馬悪役令息であるエミリオ・エアトルの双子の妹ユーディリア・エアトルである事に気がついたのだった。
数ある作品の中から、読んでいただきありがとうございます。
幼少期、最初はツラい状況が続きます。
作者都合のゆるふわご都合設定です。
1日1話更新目指してます。
エール、お気に入り登録、いいね、コメント、しおり、とても励みになります。
お楽しみ頂けたら幸いです。
***************
2024年6月25日 お気に入り登録100人達成 ありがとうございます!
100人になるまで見捨てずに居て下さった99人の皆様にも感謝を!!
2024年9月9日 お気に入り登録200人達成 感謝感謝でございます!
200人になるまで見捨てずに居て下さった皆様にもこれからも見守っていただける物語を!!
2025年1月6日 お気に入り登録300人達成 感涙に咽び泣いております!
ここまで見捨てずに読んで下さった皆様、頑張って書ききる所存でございます!これからもどうぞよろしくお願いいたします!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる