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† 五の罪――運命(さだめ)との対峙(陸)
しおりを挟む「あ、いえなにも……それより、人外嫌いの茅原が怪魔を主役に持ってくるとは引っかかります。むしろ派手に暴れる彼らを捨て駒に、裏の裏をかくぐらいやりそうな男だ。実際、彼がどこにいるのか、つかめていないのでしょう?」
一握りの手勢で、二十一世紀のキューバ革命でもやるつもりだろうか。
見つかれば終わりの少人数だが、目立たなさすぎれば心配も無用。自分たちが陽動と思わせ、あえてマークを緩めさせる、一周回った戦法――考え過ぎのようで、彼は自らの手で的を一直線に射抜く者だと、あの日見かけただけに過ぎない相手の記憶が警鐘を鳴らしている。
いや、俺が茅原と一度しか会ったことがない、と思い込んでいるだけではないだろうか……?
「まあ用心するに越したことはない。本人の居場所を引き続き捜索させる」
「では、僕たちは持ち場につきますゆえ」
所長に頭を下げ、多聞さんの後に続く。
「――とは言ったものの、もうふところに入られちゃってるみたいだね」
埋立処分場のある小島へと渡る橋に差しかかろうとした直前、多聞さんが急ハンドルをきって、車は茂みへと滑り込んだ。
「きゃ……っ!」
存外に女の子らしい三条の悲鳴をかき消すようにして、銃弾が俺たちのいた路面を抉る。
「くっそ、先回りされてやがったか!」
気配は二十ほど。全員が軍人のようだが、この人数で防衛網に穴を開けたなんて信じられない。
(……まさか、穴は最初から開いていて――――)
そんなことが脳裏をよぎるも、殺気を感じて、ドアから飛び出すことに意識を切り替えた。
脱出から秒を待たずに、蜂の巣となる車。
「国の癌は殺処分する」
「ほぁ。そうなんすねー」
クレーマーに詰め寄られたやる気のないバイトのように、樹上の多聞さんが幹に寄りかかっている。
「いや、殺すのはやめとけよ。犯罪だし」
「うん、人殺しは良くないよ。そもそもアレだ。革命が国家転覆罪じゃん。ま、熱い想いがあるならキャバクラで語りな。悪いけどおじさんも暇じゃないんだ」
「な……っ!? 我々愛国者の血と涙を侮辱するか!」
「……どうします?」
激昂する、茅原と愉快な仲間たちの後半のほうを尻目に、三条が指示を仰いだ。
「あ、うん。もう突破するわ。なんか飽きてきたし」
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