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愛しています、きっと誰より

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澄んだ声をした、長い髪の君に、私は一目惚れだった。
少しの緊張が感じ取れる表情。風に舞う桜の花びらに劣らないほど綺麗だった。暫く見惚れていると、彼女は此方に気付いて、「友達になろう」と笑って言ってくれた。
それが嬉しくて、緊張して。何故かと問われれば答えられないけれど、「よろしくね」と言う声は震えていた。
お互い名を名乗る。可愛らしくも心の通った声で自己紹介をしている彼女は、とても綺麗だった。

私達が仲良くなるのに、それほど時間はかからなくて。あなたは私を見付けると、手を振ってくれる。
そのたびに跳ねる心臓、赤くなる顔。
すべて隠してしまおうとも思う。大きく手を振り返す。
どうか、この幸せな日々が続きますように。そう祈っていた。
彼女には長い髪が似合う。そう思った私は、それをそのまま、素直に口にした。
そうしたら、彼女は「伸ばしてみるね、」とはにかんでみせた。
彼女の髪は、桜が散って、緑の葉が茂って来た頃には、もう結えるほどの長さになっていた。
櫛を通して、君の髪を結う。ふわりと甘く心地の良いものが香る。
そんな毎日は、特別な色をしていた、大切な日々の記憶だった。

私は知っている。幸せは長くは続かないと。
私の愛した人は、世間では受け入れてもらえない人だということを。
澄んだ声が知らない名前を呼ぶ。仲良く手をつなぐ貴女と、知らない人。
「恋人ができたの」と頬を染めて言う貴方の声も、笑顔も、全てが私を、私の胸を、苦しめた。でも、それでも、貴方がそれで幸せならば、良かった。そう素直に思えたと思う。

彼女と私の知らない彼の初めての喧嘩は、仲直りまでの道が長くて、彼女は私にくっついてくしゃ、と顔を歪めると泣き出した。
そっと短くなってしまった髪を撫でる。"私なら君を泣かせたりしないのに。"そんな言葉は飲み込んで。
短い髪が好きだといった彼の為か、彼女は髪を切ってしまった。私の大好きな、愛した彼女は私の知らない彼のもの。
それは酷く残酷で、辛い日々の記憶だった。
あの時私はどんな顔をしていただろう。震える小さな身体を抱き締める。
「私なら君を守れるよ」って言ってみたら、彼女は困ったように微笑んだ。
大好きな、愛してる人。長い髪のほうが好きだったな、ともう一度言ってみたら、君ははにかんでみせた。

遠く愛しい日々を思い出す。幼く、未熟だった私。結局何も言えないまま、今日を迎えた。
雪のような純白のドレスを纏う貴方の髪は、ショートカット。
「やっぱりショートが君には似合うね」と自分に言い聞かせるように言ってみたら、涙が止まらなかった。
なんで泣くの、と困ったような笑みで君が言う。
貴方は何も知らない。綺麗な何も変わらない声で、私を苦しめる。
私のほうがずっとずっと、好きなのに。愛しているのに。
「君が幸せなのが、嬉しくて。」
顔は隠したまま、世界で一番大切な嘘をついた。
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