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第2章 フェアリーテイルの雫
第40話『フェアリーテイルの雫』
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「……えーと、なになに? 港街のニーコで魚類系の魔物が大量発生! 謎の魔法使いが参戦……?」
ある日の午後、ジークはレオンドール本部から届いた手紙を読みながら畑の草抜きをしていた。
てっきり、この前送ったジゼルの髪の毛についての言及かとおもいきや、意外にもすんなり流れているようだ。
定期的に送られてくる『ミラナ領のホットニュース』には、少し興味深いことが書かれている。詳細を読もうと視線を下に流していると、慌てたシャオロンが走ってきた。
「ジーク! 大変だヨ!」
「あれ、どうしたんだい?」
珍しいシャオロンの様子に、ジークは手紙を折りたたんでポケットにしまう。
「今、あっちの畑でならず者が来て、村長が人質になってル!」
のんびりしているジークにシャオロンは声を荒げる。
「ジークにしかどうにかできないんだヨ!」
「なんだって……すぐに行く!」
ただならぬ気配を感じたジークは、フィアを手に取るとシャオロンに続いて走って行った。
村長は恩人だ。もしものことがあったら――。
一抹の不安をかき消しながら、現場の畑へ向かえば、確かに村長の姿があった。
なぜか、ふんどし一枚の姿で。
対して、防御力ゼロの村長を取り囲むのはパンツ一丁のむさ苦しい男達。風貌からして、彼らがならず者だろう。
彼らはそれぞれ手に火が付いた棒を持っていて、逞しい肉体を見せつけながら激しく振り回して舞う。
「……何だい、あれ」
「ネ? ジークにしかナントカ出来ないって言ったデショ」
何か一種の呪われた儀式のような光景に真顔のジーク。あたかもジークだけが頼りだと鼓舞しておきながら、シャオロンは面倒ごとを押し付けていた。
「あの温和な村長があんなに険しい顔を……もしかしたら、ただ事じゃないかもなんだぞ」
「フンドシとパンツ一丁野郎の集団は、もう既に存在がただ事じゃないヨ」
今にも何かが起こりそうな予感にハラハラしているジークだが、シャオロンはズバン! とツッコミを入れた。
そこへ、騒ぎを聞きつけたハツも別の畑からやってきたが、例の集団の姿を見た瞬間に目を逸らしていた。
「よし、とにかく村長を助けよう……!」
気合を入れるように両腕の服の袖を上げたジークが向かう。振り返れば、シャオロンとハツは直立不動の姿勢を貫いていた。わかっていたことだが、応援はないようだ。
仕方ないので、ジークはひとりでならず者の男へ挑むことにした。
「そ、村長を放せ!」
「うるせぇ! この変態を殺されたくなければ、金目の物を出しやがれっ!」
大声で叫びながら、男は持っていた火の棒を振り回し踊る。上下左右に振り回される炎は、残影を残して美しい。
「あっつ!」
火の先端が腕に当たってしまい、ジークは怯んでしまう。
「何を! 我が村は守って見せましょうぞ!」
それに対抗して、何故か村長もふんどしの舞を舞う。飛び散る汗、気迫を示すような鋭い眼光。
両者一切譲らず、変態と変態の図が出来上がってしまっている。
「くっ、ファイヤーダンスか! これじゃあ危なくて近付けないぞ……」
「イヤ、背負ってる大鎌使いなヨ」
美しく狂い踊る、ならず者達を悔し気に見つめるジーク。シャオロンは彼が大切そうに背負っているフィアを指さした。
「フィアをあんな危ないおっさんに近付けて、火傷したらどうするんだい?」
「……そ、ソウ……」
大真面目な顔で聞き返してきたジークは、背中から下ろした大鎌を大事そうに撫でている。
シャオロンはそれ以上、何も言わずに死んだ魚のような目をしていた。
「つか、その農具はどっから盗ってきたさよ?」
「フィアは農具なんかじゃない、相棒だ!」
ついでに、ハツにまでこの調子なので呆れを通り越してしまう。
そうこうしていると、村長の野太い悲鳴が聞こえた。
「村長ぉお! おのれぇっ!」
すぐに気を持ち直したジークが村長の元へ駆け付けると、転んでしまった村長を奴らが追い詰めているところだった。
ジークは仲間達を振り返り、渾身の力を込めて呼びかける。
「くっ! こうなったら、こっちも魂のふんどしの舞を……」
「シナイネ」
シャオロン、拒否! ジークは次のターゲットに移る。
「ハツ! 君なら……!」
「……」
当然のように目を逸らすハツ、拒否! そんな事をしている間にも村長にファイヤーダンスの火の手が迫る……。
「もうダメだ、絶体絶命なんだぞ……!」
深い絶望にジークは地面に膝をつく。現実はいつだって残酷なのだ。
「なぜだ……なぜ、俺はこんなにも無力なんだ……! 村長、すみません!」
ジークは己の無力さを呪い、魂から嘆き叫んだ。
やはり、本物の火には情熱は敵わないのか! ジークがよくわからない戦いに勝手に心折れそうになっていたその時。
混乱する空気を切り裂く、一発の銃声が鳴り響いた。
放たれた弾丸が宙に赤い魔法陣を描き、空から炎の矢が降り注ぐ。
村長もろとも、ならず者に向けた無差別の全体攻撃魔法。慌てて逃げ惑う彼らを横目に、ジークの顔に明るさが戻る。
「……なんだ、思ったより早いじゃないか!」
そう言って彼らを迎えるジーク。相手の予想はもうついていた。
「ったく、ダルいことやってんじゃねぇよ。クソ一般民!」
魔銃を放った東の魔法使い――レイズは、顔がいい男にしか許されない悪役さながらの邪悪な笑顔で、左手中指を立てていた。ちなみに、眼鏡をかけていないのでよく見えていなかっただけだったりする。
「レイズ! 帰って来たんだな? リズは……?」
辺りを見渡したジークがそう訊ねた時、残りのならず者たちが一斉に甲高い悲鳴を上げる。
振り返れば、見覚えのある瓶底ぐるぐるメガネが戦場(笑)を駆け抜けていく。
「小生もいますぞ! ホレホレェ!」
鋭い双剣を自在に振るい、次々とならず者たちの火が付いた棒を切り裂いていくのは、東の魔法使いの片割れ。
ついでに、村長はふんどしを切られそうになっていた。
「や、やめろ! これ高かったんだ……! これがなければ俺達は商売が出来ねぇ!」
「女神様に代わって、悪党は成敗ですぞ!」
大事な商売道具を次々と壊されてしまい、黄土色の悲鳴を上げながら、ならず者の男たちは逃げていく。
「お……おお……」
なんの茶番だったのかと思うほどアッサリとした引き際に、ジークは真顔のまま言葉を失う。
あいつらは何だったというのだろうか……ともあれ、村長が無事だったので細かい事はいいとしよう。
このままでは仕事が続けられない村長は、お礼を言って帰って行く。
「やはり、小生がいないといけませんなぁ!」
「眼鏡返せや。見えんわ」
とてつもなく誇らしげな顔で高笑いをするネクラーノン。もといリズだが、レイズに眼鏡を取り上げられると元の物静かな無表情に戻ってしまった。もはや一種の顔芸である。
「…………リズも戻ってきた」
たっぷり沈黙したあと、リズはそれだけ言った。眼鏡がスイッチなのか? 効果音をつけるならそう、「スン……」。
「今のドンな感情でやってたの!? ボケの火力強すぎなイ!?」
あまりの豹変ぶりに、たまらずツッコミを入れてしまうシャオロンだった。
「レイズ、リズ! こんな早く帰って来てどうしたんだい? 帰りもミラノ領に寄ると思わなかったんだぞ!」
早くに仲間と再会して嬉しいジークは、満面の笑みで彼らを迎える。
よく見れば、二人とも自分のサイズに合ったスペルの制服を着ている。
レイズは魔銃をしまうと、気まずさを誤魔化すように眼鏡の端を持ち上げて言う。
「どうしたもネェよ。仕事だ、仕事!」
「ルーク、家燃えたし、当主変わったし忙しい。ようするにお金ない」
荒っぽく話すレイズとは対照的にリズが冷静に説明する。
確かに、あの日ルークの館は全焼してしまったので財産もろとも燃え尽きてしまったのだろうが、四大貴族の彼らも色々と事情がある様子だ。
「そうなのかい、大変だな……。何か手伝えることがあれば言ってくれよ!」
なんとなく事情がわかってしまったジークは、頷きながらにこやかに彼らを励ます。
ここまで来ておいて、まさかの返しにレイズは怪訝な顔をし、ハツとシャオロンに向き直って平静を装い訊ねた。
「……おい。コイツ、マジで隊長にして大丈夫かよ。鈍感すぎんか?」
「ふ……大丈夫ジャないカラ、苦労してルヨ……」
あからさまにジークに疑いの目を向けているレイズに、シャオロンは今日何度目かの死んだ魚のような目で答える。
「ま、ジークはそんなヤツさ。だから組んでんさな」
呆れたように、けれど安心したように笑うハツは、ジト目になっているレイズに続ける。
「オメェらもそう思うから、ここに来たんさろ?」
そう言って同意を求めるように首を傾げたハツ。
「……まぁな」
レイズはハツに見抜かれていた事に驚きつつも認め、鼻を鳴らした。
こっちの話を全く聞いていないジークは、リズと旅の話をして盛り上がっている。
ジークは正直言って頼りない。けれど、根拠のない自信とアホほどお人よしな性格が強みになり、何故か頼ってしまうのだ。
頭が固い自分とは反対なジークは、人を惹きつける不思議な奴だ。
だからリズはそんなジークを信用したのだと、今ならわかる。
「……敵わねぇな」
苛立ちを噛み潰したレイズは不敵に笑うと、持っていた荷物の中から一通の手紙を取り出し、ジークを始め仲間達に見えるように広げる。
「エリュシオン傭兵団、スペル部隊。レイズウェル・ルーク及び、リズウェル・ルーク。本日付でジーク・リトルヴィレッジ率いるAHOU隊に配属されました」
丁寧に発語し、正式なレオンドール本部からの辞令を読み上げたレイズは、手紙を両手で握りつぶすと右手を胸の前にやり、貴族式の最敬礼をしてみせた。
「以後、よろしく!」
炎の狼を象徴とするルークの血は衰えることなく、ギラギラと力強い夕空色の凛とした瞳をしていた。
「そう、リズは言わないといけないことがあった」
タイミングを探していたリズは、自分より背の低いシャオロンの前に立つと、彼を見下ろしながら変わらずの無表情で言う。
みんなが何を言い出すのだろうかと思っていると、ぽつぽつと話し始めた。
「シャオロン、仕事とはいえ殺そうとしてごめんなさい。本当は勝てないってわかっていたから手が出せなかったし、あの時はありがとう」
リズは空気が読めない、読もうとも思っていない。
「い、いま言うノ……?」
タイミングも何もない唐突な話に若干引いていたシャオロンだが、年長者らしく穏やかに微笑み返す。
「僕は命が狙われるのはもう慣れてるし、イイよ。でも、キミ自身の気持ちは、もう忘れちゃダメだヨ」
年下の子に言うように優しいシャオロンは、そう言ってリズの頭を撫でてあげたのだった。
暖かい手に撫でられ、リズは嬉しそうに目を細める。
「シャオロン、優しい亜人なの好き」
「ヨシヨシ、僕もちょっとダケ態度が悪かったし、オアイコダヨ!」
ポカポカと穏やかな雰囲気の中、ハツとジークは真顔でいた。
「なんか、ジジイと孫に見えるさ」
「アレで、ちょっとなのかい……?」
あんなに威圧していたシャオロンだが、本人としては「ちょっと」だったらしい……。
ハツはリズを指差し、ムッとした顔で言う。
「俺様は他の奴らがどうなろうと関係ねぇさが、お人形ちゃんとは決着をつけたいさな!」
「リズはリズで、人形じゃない。お前には謝らない」
無表情で言い返すリズ。
左手中指を立てようとしているのは気のせいだろうか。
「そ、そうだ! レイズ、君から何かあるかい?」
ジークは何だか嫌な予感がしたので、話を切り替える。
話を振られたレイズは、顎に手を当て考えると、悪いことを思い付いて笑う。
「ま、せいぜい退屈させないでくれや!」
レイズは、本当に四大貴族のお坊ちゃんかと疑うほどの悪い顔でそう言ったのだった。
スペルが二人いれば、大抵の場合は切り抜けられるだろう。
ちょっとアレだが、この二人が改めて仲間になったということは心強い。
ジークは、そんな彼らを歓迎するように手を合わせ、全身で喜びを表現する。
「さぁ! という事は、これから一緒に仕事が出来るんだな? 嬉しいんだぞ!」
勢いあまって、足を捻ってしまいゾンビのように「ア……アァ……ッ」と呻きながら悶絶するまでがワンセットだ。
この一人コントのようなボケには、誰もつっこんでくれなかったという……。
ひととおり悶絶した後、ジークはレイズとリズをはじめとする仲間達に手を差し出す。
「よ、よろしくな、みんな!」
太陽のような満面の笑みを浮かべるジーク。
何とも締まらない再会だが、五人の仲間達は握手を交わし、友情を誓い合うのだった。
――――――
その日の夜、ジーク達が暮らすボロい宿舎では歓迎会が開かれていた。
といっても、ジゼルが綺麗に掃除してくれていたはずの室内は、すでにハツの持ち帰った薬草臭が充満しており、ジークが集めて来た本が積み重ねられていて見る影もない。
裏手では亜人の彼らとウシが仲良く一緒に寝ている。長く人に飼われていた彼らを今さら放しても生きてはいけない事がわかっているので、このまま一緒に暮らそうとしている。
シャオロンが見よう見まねで作った料理がテーブルに並び、さりげなく呪いの薬草スープも鎮座している。
仕事はこなせど、給料は低いのでごちそうは作れないが、野菜がたっぷり入ったクリームスープに焼きたての大きなパン、ハツが集めて来た茶葉を煮出した紅茶、デザートは果物としっかりしたメニューが輝く。
乾杯をして食事を始めたところで、ジークが話を振る。
「そういえば、どうしてリズは初めて会った時にレイズの名前を名乗っていたんだい?」
「ブッ!」
思わぬところへの直球な質問に、レイズは飲んでいた紅茶を噴き出してしまった。
「君は、自分の評価の為にリズといたんじゃないんだろう? 変じゃないかい?」
「ほーん、確かに、オメェらは俺様が知ってるお貴族サマとは違うさなぁ」
確かに、とハツは果物の木の実を皮ごと頬張る。
「リズは、わからないけど、レイがそうしろってずっと言ってた」
もくもくとパンを食べ続けるリズは、そう言って野菜がいっぱい入ったスープ皿を覗き込んでいた。
空の皿に切ったパンを乗せていくシャオロンが、さらりと話を進めていく。
「レイズの名前を使っテ仕事をしていれば、万が一失敗しても報復されるのはレイズだカラ。わざと冷たくした理由も情を持たせない為とかだったりするんじゃないノ? よくあるコトだヨ」
「な……! うるせぇ、何か悪いのかよ!」
本当にその通りで、図星を突かれたレイズは恥ずかしさで顔を真っ赤にして怒る。
感情まかせに、飲みかけのカップを乱暴にソーサーに叩きつけた。
「別に。いい兄さんだネ!」
嫌味を言うでもなく、シャオロンは笑う。
「おお! そんな考え方もあるんだな、すごいぞ!」
そんな会話を聞いて素直に驚いていたジークは、片割れを守り切ったレイズがなんだかちょっとだけ羨ましく見えた。
「君はリズが大好きなんだな!」
そう言うと、てっきり怒鳴られると思っていたジークだが、レイズの反応は意外なものだった。
「当たり前だ。コイツは、薬を初めて飲んだ日から精神が止まっている。そのうち追い付くだろうが、まだガキなんだよ」
レイズは、紅茶に何十杯目の砂糖を入れるリズに優しい眼差しを向けた。
「リズは美味しいも知りたい。甘いは美味しいって本で読んだから」
もはや砂糖の味しかしない液体を口に運ぶリズは、人に合わせることはやめて自分自身で感覚を知ろうとしている。
「だからって、味音痴すぎさ……」
ちなみに、ハツは砂糖茶に引いている。
「そういうことだ。くれぐれも、変な気起こすなよ。ちなみ、俺らは便宜上、双子って事になってるから頼むわ」
軽くサラッとレイズはそう言い、紅茶を飲み切った。
「リズは水と氷の魔法を使う。癒しの魔力もあるから、怪我をしたら助ける」
砂糖茶を味わいながら、リズは得意げな無表情を向ける。
「スゴいヨネ! 助かルヨー!」
喜ぶシャオロンとは反対に、ハツは「くだらんさ」と鼻を鳴らす。
「魔法なんて、結局はお貴族サマの権力を見せるだけのもんさな」
「リズはお前を助けない」
「なんなんさ、コイツは!」
「だーっ! やめるんだぞ!」
再び喧嘩の火種が生まれてしまい、ジークは慌てて止めに入る。
「人間っておもしろ!」
「ぶははははっ! やれ、リズ!」
シャオロンはニマニマしており、レイズは腹を抱えて笑って、止める気なんてない。
どうにも、ハツとリズの相性は悪いようだ。
ため息をついたジークは、思い出したように席を立つ。
「そういえば、レイズとリズには紹介してなかったな!」
壁に立てかけていた相棒の大鎌を手に取り、仲間達に見せつけた。
「剣から鎌に変わっちゃったけど、俺の相棒のフィアだ! 良い匂いで優しくて何度も助けてくれた最高の女の子なんだぞ!」
その瞬間、和やかだった食卓に吹雪が吹いた……。
「武器に好きな女の名をつける奴はいるが……ヤツは正気か?」
「正気ダヨ。なんなら、見えない女の子を紹介されたネ」
「イマジナリー彼女さ。優しくしてやろうさな」
「よろしく、フィア」
思わず半笑いになってしまったレイズに残りの三人は頷き返す。
ジークは知らないうちに、『見えないガールフレンドに惚れている男』に加えて、『武器そのものを女と認識している思い込みの激しい男』の称号を手に入れてしまったのだった。
そんなこんなで盛り上がった楽しい宴は翌朝まで続き、見事に仕事に支障をきたすこととなるが、これはまた別のお話で。
雨が上がり、花が咲き、大地に新しい命が芽吹くように。
今、五人になったAHOU隊の新しい物語は、まだまだ続くのだった。
『ELYSION』第二章 fin.
ある日の午後、ジークはレオンドール本部から届いた手紙を読みながら畑の草抜きをしていた。
てっきり、この前送ったジゼルの髪の毛についての言及かとおもいきや、意外にもすんなり流れているようだ。
定期的に送られてくる『ミラナ領のホットニュース』には、少し興味深いことが書かれている。詳細を読もうと視線を下に流していると、慌てたシャオロンが走ってきた。
「ジーク! 大変だヨ!」
「あれ、どうしたんだい?」
珍しいシャオロンの様子に、ジークは手紙を折りたたんでポケットにしまう。
「今、あっちの畑でならず者が来て、村長が人質になってル!」
のんびりしているジークにシャオロンは声を荒げる。
「ジークにしかどうにかできないんだヨ!」
「なんだって……すぐに行く!」
ただならぬ気配を感じたジークは、フィアを手に取るとシャオロンに続いて走って行った。
村長は恩人だ。もしものことがあったら――。
一抹の不安をかき消しながら、現場の畑へ向かえば、確かに村長の姿があった。
なぜか、ふんどし一枚の姿で。
対して、防御力ゼロの村長を取り囲むのはパンツ一丁のむさ苦しい男達。風貌からして、彼らがならず者だろう。
彼らはそれぞれ手に火が付いた棒を持っていて、逞しい肉体を見せつけながら激しく振り回して舞う。
「……何だい、あれ」
「ネ? ジークにしかナントカ出来ないって言ったデショ」
何か一種の呪われた儀式のような光景に真顔のジーク。あたかもジークだけが頼りだと鼓舞しておきながら、シャオロンは面倒ごとを押し付けていた。
「あの温和な村長があんなに険しい顔を……もしかしたら、ただ事じゃないかもなんだぞ」
「フンドシとパンツ一丁野郎の集団は、もう既に存在がただ事じゃないヨ」
今にも何かが起こりそうな予感にハラハラしているジークだが、シャオロンはズバン! とツッコミを入れた。
そこへ、騒ぎを聞きつけたハツも別の畑からやってきたが、例の集団の姿を見た瞬間に目を逸らしていた。
「よし、とにかく村長を助けよう……!」
気合を入れるように両腕の服の袖を上げたジークが向かう。振り返れば、シャオロンとハツは直立不動の姿勢を貫いていた。わかっていたことだが、応援はないようだ。
仕方ないので、ジークはひとりでならず者の男へ挑むことにした。
「そ、村長を放せ!」
「うるせぇ! この変態を殺されたくなければ、金目の物を出しやがれっ!」
大声で叫びながら、男は持っていた火の棒を振り回し踊る。上下左右に振り回される炎は、残影を残して美しい。
「あっつ!」
火の先端が腕に当たってしまい、ジークは怯んでしまう。
「何を! 我が村は守って見せましょうぞ!」
それに対抗して、何故か村長もふんどしの舞を舞う。飛び散る汗、気迫を示すような鋭い眼光。
両者一切譲らず、変態と変態の図が出来上がってしまっている。
「くっ、ファイヤーダンスか! これじゃあ危なくて近付けないぞ……」
「イヤ、背負ってる大鎌使いなヨ」
美しく狂い踊る、ならず者達を悔し気に見つめるジーク。シャオロンは彼が大切そうに背負っているフィアを指さした。
「フィアをあんな危ないおっさんに近付けて、火傷したらどうするんだい?」
「……そ、ソウ……」
大真面目な顔で聞き返してきたジークは、背中から下ろした大鎌を大事そうに撫でている。
シャオロンはそれ以上、何も言わずに死んだ魚のような目をしていた。
「つか、その農具はどっから盗ってきたさよ?」
「フィアは農具なんかじゃない、相棒だ!」
ついでに、ハツにまでこの調子なので呆れを通り越してしまう。
そうこうしていると、村長の野太い悲鳴が聞こえた。
「村長ぉお! おのれぇっ!」
すぐに気を持ち直したジークが村長の元へ駆け付けると、転んでしまった村長を奴らが追い詰めているところだった。
ジークは仲間達を振り返り、渾身の力を込めて呼びかける。
「くっ! こうなったら、こっちも魂のふんどしの舞を……」
「シナイネ」
シャオロン、拒否! ジークは次のターゲットに移る。
「ハツ! 君なら……!」
「……」
当然のように目を逸らすハツ、拒否! そんな事をしている間にも村長にファイヤーダンスの火の手が迫る……。
「もうダメだ、絶体絶命なんだぞ……!」
深い絶望にジークは地面に膝をつく。現実はいつだって残酷なのだ。
「なぜだ……なぜ、俺はこんなにも無力なんだ……! 村長、すみません!」
ジークは己の無力さを呪い、魂から嘆き叫んだ。
やはり、本物の火には情熱は敵わないのか! ジークがよくわからない戦いに勝手に心折れそうになっていたその時。
混乱する空気を切り裂く、一発の銃声が鳴り響いた。
放たれた弾丸が宙に赤い魔法陣を描き、空から炎の矢が降り注ぐ。
村長もろとも、ならず者に向けた無差別の全体攻撃魔法。慌てて逃げ惑う彼らを横目に、ジークの顔に明るさが戻る。
「……なんだ、思ったより早いじゃないか!」
そう言って彼らを迎えるジーク。相手の予想はもうついていた。
「ったく、ダルいことやってんじゃねぇよ。クソ一般民!」
魔銃を放った東の魔法使い――レイズは、顔がいい男にしか許されない悪役さながらの邪悪な笑顔で、左手中指を立てていた。ちなみに、眼鏡をかけていないのでよく見えていなかっただけだったりする。
「レイズ! 帰って来たんだな? リズは……?」
辺りを見渡したジークがそう訊ねた時、残りのならず者たちが一斉に甲高い悲鳴を上げる。
振り返れば、見覚えのある瓶底ぐるぐるメガネが戦場(笑)を駆け抜けていく。
「小生もいますぞ! ホレホレェ!」
鋭い双剣を自在に振るい、次々とならず者たちの火が付いた棒を切り裂いていくのは、東の魔法使いの片割れ。
ついでに、村長はふんどしを切られそうになっていた。
「や、やめろ! これ高かったんだ……! これがなければ俺達は商売が出来ねぇ!」
「女神様に代わって、悪党は成敗ですぞ!」
大事な商売道具を次々と壊されてしまい、黄土色の悲鳴を上げながら、ならず者の男たちは逃げていく。
「お……おお……」
なんの茶番だったのかと思うほどアッサリとした引き際に、ジークは真顔のまま言葉を失う。
あいつらは何だったというのだろうか……ともあれ、村長が無事だったので細かい事はいいとしよう。
このままでは仕事が続けられない村長は、お礼を言って帰って行く。
「やはり、小生がいないといけませんなぁ!」
「眼鏡返せや。見えんわ」
とてつもなく誇らしげな顔で高笑いをするネクラーノン。もといリズだが、レイズに眼鏡を取り上げられると元の物静かな無表情に戻ってしまった。もはや一種の顔芸である。
「…………リズも戻ってきた」
たっぷり沈黙したあと、リズはそれだけ言った。眼鏡がスイッチなのか? 効果音をつけるならそう、「スン……」。
「今のドンな感情でやってたの!? ボケの火力強すぎなイ!?」
あまりの豹変ぶりに、たまらずツッコミを入れてしまうシャオロンだった。
「レイズ、リズ! こんな早く帰って来てどうしたんだい? 帰りもミラノ領に寄ると思わなかったんだぞ!」
早くに仲間と再会して嬉しいジークは、満面の笑みで彼らを迎える。
よく見れば、二人とも自分のサイズに合ったスペルの制服を着ている。
レイズは魔銃をしまうと、気まずさを誤魔化すように眼鏡の端を持ち上げて言う。
「どうしたもネェよ。仕事だ、仕事!」
「ルーク、家燃えたし、当主変わったし忙しい。ようするにお金ない」
荒っぽく話すレイズとは対照的にリズが冷静に説明する。
確かに、あの日ルークの館は全焼してしまったので財産もろとも燃え尽きてしまったのだろうが、四大貴族の彼らも色々と事情がある様子だ。
「そうなのかい、大変だな……。何か手伝えることがあれば言ってくれよ!」
なんとなく事情がわかってしまったジークは、頷きながらにこやかに彼らを励ます。
ここまで来ておいて、まさかの返しにレイズは怪訝な顔をし、ハツとシャオロンに向き直って平静を装い訊ねた。
「……おい。コイツ、マジで隊長にして大丈夫かよ。鈍感すぎんか?」
「ふ……大丈夫ジャないカラ、苦労してルヨ……」
あからさまにジークに疑いの目を向けているレイズに、シャオロンは今日何度目かの死んだ魚のような目で答える。
「ま、ジークはそんなヤツさ。だから組んでんさな」
呆れたように、けれど安心したように笑うハツは、ジト目になっているレイズに続ける。
「オメェらもそう思うから、ここに来たんさろ?」
そう言って同意を求めるように首を傾げたハツ。
「……まぁな」
レイズはハツに見抜かれていた事に驚きつつも認め、鼻を鳴らした。
こっちの話を全く聞いていないジークは、リズと旅の話をして盛り上がっている。
ジークは正直言って頼りない。けれど、根拠のない自信とアホほどお人よしな性格が強みになり、何故か頼ってしまうのだ。
頭が固い自分とは反対なジークは、人を惹きつける不思議な奴だ。
だからリズはそんなジークを信用したのだと、今ならわかる。
「……敵わねぇな」
苛立ちを噛み潰したレイズは不敵に笑うと、持っていた荷物の中から一通の手紙を取り出し、ジークを始め仲間達に見えるように広げる。
「エリュシオン傭兵団、スペル部隊。レイズウェル・ルーク及び、リズウェル・ルーク。本日付でジーク・リトルヴィレッジ率いるAHOU隊に配属されました」
丁寧に発語し、正式なレオンドール本部からの辞令を読み上げたレイズは、手紙を両手で握りつぶすと右手を胸の前にやり、貴族式の最敬礼をしてみせた。
「以後、よろしく!」
炎の狼を象徴とするルークの血は衰えることなく、ギラギラと力強い夕空色の凛とした瞳をしていた。
「そう、リズは言わないといけないことがあった」
タイミングを探していたリズは、自分より背の低いシャオロンの前に立つと、彼を見下ろしながら変わらずの無表情で言う。
みんなが何を言い出すのだろうかと思っていると、ぽつぽつと話し始めた。
「シャオロン、仕事とはいえ殺そうとしてごめんなさい。本当は勝てないってわかっていたから手が出せなかったし、あの時はありがとう」
リズは空気が読めない、読もうとも思っていない。
「い、いま言うノ……?」
タイミングも何もない唐突な話に若干引いていたシャオロンだが、年長者らしく穏やかに微笑み返す。
「僕は命が狙われるのはもう慣れてるし、イイよ。でも、キミ自身の気持ちは、もう忘れちゃダメだヨ」
年下の子に言うように優しいシャオロンは、そう言ってリズの頭を撫でてあげたのだった。
暖かい手に撫でられ、リズは嬉しそうに目を細める。
「シャオロン、優しい亜人なの好き」
「ヨシヨシ、僕もちょっとダケ態度が悪かったし、オアイコダヨ!」
ポカポカと穏やかな雰囲気の中、ハツとジークは真顔でいた。
「なんか、ジジイと孫に見えるさ」
「アレで、ちょっとなのかい……?」
あんなに威圧していたシャオロンだが、本人としては「ちょっと」だったらしい……。
ハツはリズを指差し、ムッとした顔で言う。
「俺様は他の奴らがどうなろうと関係ねぇさが、お人形ちゃんとは決着をつけたいさな!」
「リズはリズで、人形じゃない。お前には謝らない」
無表情で言い返すリズ。
左手中指を立てようとしているのは気のせいだろうか。
「そ、そうだ! レイズ、君から何かあるかい?」
ジークは何だか嫌な予感がしたので、話を切り替える。
話を振られたレイズは、顎に手を当て考えると、悪いことを思い付いて笑う。
「ま、せいぜい退屈させないでくれや!」
レイズは、本当に四大貴族のお坊ちゃんかと疑うほどの悪い顔でそう言ったのだった。
スペルが二人いれば、大抵の場合は切り抜けられるだろう。
ちょっとアレだが、この二人が改めて仲間になったということは心強い。
ジークは、そんな彼らを歓迎するように手を合わせ、全身で喜びを表現する。
「さぁ! という事は、これから一緒に仕事が出来るんだな? 嬉しいんだぞ!」
勢いあまって、足を捻ってしまいゾンビのように「ア……アァ……ッ」と呻きながら悶絶するまでがワンセットだ。
この一人コントのようなボケには、誰もつっこんでくれなかったという……。
ひととおり悶絶した後、ジークはレイズとリズをはじめとする仲間達に手を差し出す。
「よ、よろしくな、みんな!」
太陽のような満面の笑みを浮かべるジーク。
何とも締まらない再会だが、五人の仲間達は握手を交わし、友情を誓い合うのだった。
――――――
その日の夜、ジーク達が暮らすボロい宿舎では歓迎会が開かれていた。
といっても、ジゼルが綺麗に掃除してくれていたはずの室内は、すでにハツの持ち帰った薬草臭が充満しており、ジークが集めて来た本が積み重ねられていて見る影もない。
裏手では亜人の彼らとウシが仲良く一緒に寝ている。長く人に飼われていた彼らを今さら放しても生きてはいけない事がわかっているので、このまま一緒に暮らそうとしている。
シャオロンが見よう見まねで作った料理がテーブルに並び、さりげなく呪いの薬草スープも鎮座している。
仕事はこなせど、給料は低いのでごちそうは作れないが、野菜がたっぷり入ったクリームスープに焼きたての大きなパン、ハツが集めて来た茶葉を煮出した紅茶、デザートは果物としっかりしたメニューが輝く。
乾杯をして食事を始めたところで、ジークが話を振る。
「そういえば、どうしてリズは初めて会った時にレイズの名前を名乗っていたんだい?」
「ブッ!」
思わぬところへの直球な質問に、レイズは飲んでいた紅茶を噴き出してしまった。
「君は、自分の評価の為にリズといたんじゃないんだろう? 変じゃないかい?」
「ほーん、確かに、オメェらは俺様が知ってるお貴族サマとは違うさなぁ」
確かに、とハツは果物の木の実を皮ごと頬張る。
「リズは、わからないけど、レイがそうしろってずっと言ってた」
もくもくとパンを食べ続けるリズは、そう言って野菜がいっぱい入ったスープ皿を覗き込んでいた。
空の皿に切ったパンを乗せていくシャオロンが、さらりと話を進めていく。
「レイズの名前を使っテ仕事をしていれば、万が一失敗しても報復されるのはレイズだカラ。わざと冷たくした理由も情を持たせない為とかだったりするんじゃないノ? よくあるコトだヨ」
「な……! うるせぇ、何か悪いのかよ!」
本当にその通りで、図星を突かれたレイズは恥ずかしさで顔を真っ赤にして怒る。
感情まかせに、飲みかけのカップを乱暴にソーサーに叩きつけた。
「別に。いい兄さんだネ!」
嫌味を言うでもなく、シャオロンは笑う。
「おお! そんな考え方もあるんだな、すごいぞ!」
そんな会話を聞いて素直に驚いていたジークは、片割れを守り切ったレイズがなんだかちょっとだけ羨ましく見えた。
「君はリズが大好きなんだな!」
そう言うと、てっきり怒鳴られると思っていたジークだが、レイズの反応は意外なものだった。
「当たり前だ。コイツは、薬を初めて飲んだ日から精神が止まっている。そのうち追い付くだろうが、まだガキなんだよ」
レイズは、紅茶に何十杯目の砂糖を入れるリズに優しい眼差しを向けた。
「リズは美味しいも知りたい。甘いは美味しいって本で読んだから」
もはや砂糖の味しかしない液体を口に運ぶリズは、人に合わせることはやめて自分自身で感覚を知ろうとしている。
「だからって、味音痴すぎさ……」
ちなみに、ハツは砂糖茶に引いている。
「そういうことだ。くれぐれも、変な気起こすなよ。ちなみ、俺らは便宜上、双子って事になってるから頼むわ」
軽くサラッとレイズはそう言い、紅茶を飲み切った。
「リズは水と氷の魔法を使う。癒しの魔力もあるから、怪我をしたら助ける」
砂糖茶を味わいながら、リズは得意げな無表情を向ける。
「スゴいヨネ! 助かルヨー!」
喜ぶシャオロンとは反対に、ハツは「くだらんさ」と鼻を鳴らす。
「魔法なんて、結局はお貴族サマの権力を見せるだけのもんさな」
「リズはお前を助けない」
「なんなんさ、コイツは!」
「だーっ! やめるんだぞ!」
再び喧嘩の火種が生まれてしまい、ジークは慌てて止めに入る。
「人間っておもしろ!」
「ぶははははっ! やれ、リズ!」
シャオロンはニマニマしており、レイズは腹を抱えて笑って、止める気なんてない。
どうにも、ハツとリズの相性は悪いようだ。
ため息をついたジークは、思い出したように席を立つ。
「そういえば、レイズとリズには紹介してなかったな!」
壁に立てかけていた相棒の大鎌を手に取り、仲間達に見せつけた。
「剣から鎌に変わっちゃったけど、俺の相棒のフィアだ! 良い匂いで優しくて何度も助けてくれた最高の女の子なんだぞ!」
その瞬間、和やかだった食卓に吹雪が吹いた……。
「武器に好きな女の名をつける奴はいるが……ヤツは正気か?」
「正気ダヨ。なんなら、見えない女の子を紹介されたネ」
「イマジナリー彼女さ。優しくしてやろうさな」
「よろしく、フィア」
思わず半笑いになってしまったレイズに残りの三人は頷き返す。
ジークは知らないうちに、『見えないガールフレンドに惚れている男』に加えて、『武器そのものを女と認識している思い込みの激しい男』の称号を手に入れてしまったのだった。
そんなこんなで盛り上がった楽しい宴は翌朝まで続き、見事に仕事に支障をきたすこととなるが、これはまた別のお話で。
雨が上がり、花が咲き、大地に新しい命が芽吹くように。
今、五人になったAHOU隊の新しい物語は、まだまだ続くのだった。
『ELYSION』第二章 fin.
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本当に、ありがとうございます(*´u`*人)
更新お疲れ様です。
第二章の完結おめでとうございます!
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ほわっと読んでいただければ😉
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あの子の物語として見守ってください☺️
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ハツもまた、抱えているものがあるのでお楽しみにしててください☺️笑
嬉しいなあ。ありがとうございます😊