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真・らぶ・TRY・あんぐる 十三

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さて、
言葉巧みに……とはとても言いがたい、はっきり言って勢いだけの会長のペテン説教に、ものの見事に絶賛ぜっさん騙され中の佑は
「今日のデートはね……佑クンのウチに行きたいなあ!」
急にそんなことを言い出した留美に逆らえなかった。
『媚薬』がそう言わせている……そう思っていたからである。
しかし、井沢正調合の媚薬は佑に惹かれる状況を作り出すだけなのであって、リモコンのように意志を奪って動かしてしまうようなものではないのだ。
だが、詳しい説明を聞いていない佑には疑心暗鬼にとらわれそう思い込んでいた。

しかも、
恐るべきことに、今回のデートは留美と2人きりなのだ。

言うまでもないが、普通デートというものは2人きりでするもので、第三者がついてくるのはあまりデートとは言わない。
だから、これが本来の姿なのだが、今まで何度かの
『3人そろってのデート』
に慣れかけていた佑にとっては初体験なのだった。
なお、ダブルデートとかは話が別であるので念のため。

「いくらなんでも約束もなしに2人で押しかけるの悪いわよね?」
という珍しく正論な留美の言葉に、由香も強いて
「ついていく!」
とは言いづらい。 まして佑が
「由香ちゃん……大丈夫だよ、来てくれなくても……それに家なら家族もいるし……」
と言うのだから、一応部外者の由香には手も足も出なかった。

しかし、自分で言った言葉ながら
「家族もいる」
というのは、佑にとって逆に困ったものであった。
留美の勢いだと、下手をすると本当に責任をとけっこんさせられることになりかねないからである。

「佑くん……あたし、佑くんのこと、信じてるからね?」
そう言って釘を刺す由香。 しかし、佑にはその意味に思い至る余裕はまるでなかった。
「うん……ありがとう」

かくて、
内心、いやいやながらも留美を連れて家についた佑は、本気で胸を撫で下ろした。
たまたま家族が留守だったのである。 妹の冴英の買い物に両親がついていったのだろう、と佑は推測した。
そしてその推測は正しかったが、正しかったからといって別段どうということではない。 佑もバカではない、というだけの話だ。

しかし、佑は思い違いをしていた。
別に『両親と妹が出掛けたことについて』ではない。
それはつまり、自分が今どういう状況にいるか……ということであった。
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