5 / 52
真・らぶ・TRY・あんぐる 五
しおりを挟む「ねえ、育嶋くん……ううん、佑くん? ……もしつきあっている相手がいないのなら、留美とつきあってあげて?」
佑にとってはかなり残酷な由香の発言だった。
が、由香は佑が自分を好きなことはまるで知らない。
本当に知らない。
ちっとも知らない。
これっぽっちも知らない。
だから、仕方がないのであった。
いや、全くもって。
なぜか?と問うならば、
佑自身が由香を好きなことを自覚したのがついこの間……2週間ほど前だったからである。
とはいえ、流石に気の弱さにかけては人後に落ちない佑でも、2週間も指をくわえていたわけではない。
――1週間前、ある事件があった。
というか……、
佑の身にあることが降りかかった。
別に命に別状のあることではないが、それが原因で佑は悩んでいた。
だがしかし、声を大にして言えるようなことではなかったし、親や教師に相談できる事柄でもなかったのだ。
まして、由香や留美に言えることでもない。
…………………………えーつまり、要するに……
1週間は指をくわえていたわけである。(もちろん、比喩的な意味で)
――というわけで
佑はとうとう押し切られ、(由香も同伴することになったのが不幸中の幸いとはいえ)留美とデートすることになったのである。
時は五月。
ゴールデンウィーク真っ只中。
天気もよく、デート日和である。
……佑の心の中以外では。
はっきりいって、彼の心の中ではブリザードが吹き荒れていた。
だが、留美と由香はそんなことはまるで知らない。
「天気が良くて何よりね」
にこやかに由香が同意を求める。 流石に苦虫を12匹ほど噛みつぶしたような表情を見せるわけにもいかず、作り笑いをして
「う、うん。 本当にいい天気だよね」
「ウキウキしちゃうよね、佑クン?」
彼の心情とは対極のことを留美にも言われて、佑はもう精神的な拷問にあっている気分だった。
念のため申し添えるが、留美にも由香にも悪気はまるでない。
外見がそう見えるからといって、中身までそうとは限らない。
これは当たり前のことなのだが、世間というものは外見で判断するというクセがついているものらしく、外と中のギャップに驚くのである。
だが、それははっきり言って『勝手な思い込み』というものなのだった。
いうまでもないかも知れないが、留美は外見と中身のギャップが激しい。
佑は彼女とのデートで、いやというほどそれを思い知らされた。
佑としては、留美を理想視していなかったので、別段ショックでもなかったが、それがまた留美の恋心をつのらせるのだった。
皮肉、という他はない……。
ともあれ、佑の視線はついつい思い人であるところの由香の方へ行ってしまう。
それをどう解釈したのか、留美は
「あン、ユカちゃんのことは気にしないでもいいのに。 ね、ユカちゃん?」
「はいはい、あたしは留美が何かしでかしたときのフォローのためについてきてるだけなんだから。 佑くんもあたしのことは気にしないで留美に優しくしてあげてよ」
そんなこと言われても、気にしないでいられるはずがなかった。
由香のことが気になるのもそうだが、由香のセリフも気になった。
そう、
「何かしでかしたときのフォローのために」
という部分である。
0
お気に入りに追加
2
あなたにおすすめの小説
AV研は今日もハレンチ
楠富 つかさ
キャラ文芸
あなたが好きなAVはAudioVisual? それともAdultVideo?
AV研はオーディオヴィジュアル研究会の略称で、音楽や動画などメディア媒体の歴史を研究する集まり……というのは建前で、実はとんでもないものを研究していて――
薄暗い過去をちょっとショッキングなピンクで塗りつぶしていくネジの足りない群像劇、ここに開演!!
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
高校生なのに娘ができちゃった!?
まったりさん
キャラ文芸
不思議な桜が咲く島に住む主人公のもとに、主人公の娘と名乗る妙な女が現われた。その女のせいで主人公の生活はめちゃくちゃ、最初は最悪だったが、段々と主人公の気持ちが変わっていって…!?
そうして、紅葉が桜に変わる頃、物語の幕は閉じる。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
後宮の胡蝶 ~皇帝陛下の秘密の妃~
菱沼あゆ
キャラ文芸
突然の譲位により、若き皇帝となった苑楊は封印されているはずの宮殿で女官らしき娘、洋蘭と出会う。
洋蘭はこの宮殿の牢に住む老人の世話をしているのだと言う。
天女のごとき外見と豊富な知識を持つ洋蘭に心惹かれはじめる苑楊だったが。
洋蘭はまったく思い通りにならないうえに、なにかが怪しい女だった――。
中華後宮ラブコメディ。
元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~
おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。
どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。
そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。
その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。
その結果、様々な女性に迫られることになる。
元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。
「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」
今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。
小さなことから〜露出〜えみ〜
サイコロ
恋愛
私の露出…
毎日更新していこうと思います
よろしくおねがいします
感想等お待ちしております
取り入れて欲しい内容なども
書いてくださいね
よりみなさんにお近く
考えやすく
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる