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真・らぶ・TRY・あんぐる 五

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「ねえ、育嶋くん……ううん、佑くん? ……もしつきあっている相手がいないのなら、留美とつきあってあげて?」
佑にとってはかなり残酷な由香の発言だった。


が、由香は佑が自分を好きなことはまるで知らない。
本当に知らない。
ちっとも知らない。
これっぽっちも知らない。
だから、仕方がないのであった。
いや、全くもって。


なぜか?と問うならば、

佑自身が由香を好きなことを自覚したのがついこの間……2週間ほど前だったからである。

とはいえ、流石に気の弱さにかけては人後に落ちない佑でも、2週間も指をくわえていたわけではない。

――1週間前、ある事件があった。
というか……、
佑の身にが降りかかった。
別に命に別状のあることではないが、それが原因で佑は悩んでいた。
だがしかし、声を大にして言えるようなことではなかったし、親や教師に相談できる事柄でもなかったのだ。
まして、由香や留美に言えることでもない。



…………………………えーつまり、要するに……
1週間は指をくわえていたわけである。(もちろん、比喩ひゆ的な意味で)



――というわけで
佑はとうとう押し切られ、(由香も同伴することになったのが不幸中の幸いとはいえ)留美とデートすることになったのである。



時は五月。
ゴールデンウィーク真っ只中。
天気もよく、デート日和である。
……佑の心の中以外では。


はっきりいって、彼の心の中ではブリザードが吹き荒れていた。
だが、留美と由香はそんなことはまるで知らない。

「天気が良くて何よりね」
にこやかに由香が同意を求める。 流石に苦虫を12匹ほど噛みつぶしたような表情を見せるわけにもいかず、作り笑いをして
「う、うん。 本当にいい天気だよね」
「ウキウキしちゃうよね、佑クン?」
彼の心情とは対極のことを留美にも言われて、佑はもう精神的な拷問にあっている気分だった。
念のため申し添えるが、留美にも由香にも悪気はまるでない。


外見がそう見えるからといって、中身までそうとは限らない。
これは当たり前のことなのだが、世間というものは外見で判断するというクセがついているものらしく、外と中のギャップに驚くのである。
だが、それははっきり言って『勝手な思い込み』というものなのだった。

いうまでもないかも知れないが、留美は外見と中身のギャップが激しい。
佑は彼女とのデートで、いやというほどそれを思い知らされた。
佑としては、留美を理想視していなかったので、別段ショックでもなかったが、それがまた留美の恋心をつのらせるのだった。
皮肉、という他はない……。



ともあれ、佑の視線はついつい思い人であるところの由香の方へ行ってしまう。
それをどう解釈したのか、留美は
「あン、ユカちゃんのことは気にしないでもいいのに。 ね、ユカちゃん?」
「はいはい、あたしは留美が何かしでかしたときのフォローのためについてきてるだけなんだから。 佑くんもあたしのことは気にしないで留美に優しくしてあげてよ」
そんなこと言われても、気にしないでいられるはずがなかった。


由香のことが気になるのもそうだが、由香のセリフも気になった。
そう、
「何かしでかしたときのフォローのために」
という部分である。
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