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そのきゅうじゅうはち
放課後以降の誘惑②
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全然仲良く無い、と愛するリシェに告げられたロシュはショックを受けたまま「リシェ!!」と泣きそうになりながら訴える。対するリシェはそんな彼を見ながら引き気味に後ずさっていた。
何も知らない側からしてみれば、一方的なロシュの求愛は迷惑以外の何でもないのだろう。
「お前、本当に知らないの?自覚無しに色んな人間を誑かしてるんだろ、どうせ」
あまりにもロシュが悲壮な表情を向けるのでスティレンは思わずリシェを突く。しかしリシェはそんな訳あるかとばっさり斬った。
「自覚無しって何だ。本当に俺は何もしていないぞ!それとも何か?俺は生きてるだけで他人に迷惑を掛けているって言いたいのか」
これもまた話が跳躍していた。
ここまで言って退けるなら、本当に無いのだろう。
「し、仕方無いですよ…先輩、本当になにも知らないんだから…」
歯軋りしながら涙目になるリシェに、ラスは落ち着いてと宥めた。流石に生きているだけで迷惑を掛けているとまで言われればどう返したらいいのか分からない。
全く…とスティレンは呆れつつも、困惑気味のロシュに目を向ける。彼は胸を押さえながら受けたショックをどうにか消化しようとしている模様。
「うう…ここまで全く私に興味すら持ってくれないとは。どうにかして振り向いて貰わないと…」
何かぶつぶつ言っている。
まさかこっちがおかしいのか?とスティレンは思った。
「先輩、折角の休みなので何処かに行きませんか?」
すかさず休日の誘いを突っ込んでくる抜け目の無いラス。しかし、先にこちらが申し出て来たのだ。ちょっと待ちなよとスティレンが彼を止めた。
ラスはきょとんとした面持ちでスティレンに目を向ける。
「あのねぇ!俺が先にこいつに休みは買い物に付き合ってって言ってるの!横入りしないでくれる!?」
そう言うものの、言われたリシェは全く了承もしていない。むしろ行きたがる様子では無く、逆に面倒臭がっている状況だ。話を好き放題に進められ、当のリシェは「勝手に人の予定を決めるな!!」と怒り泣きしながら怒鳴った。
こっちには一人で休む権利も無いのか!とぷりぷりする。
「俺の休みは俺が好きなように過ごすんだ!邪魔をするな!」
「そんな…先輩が一人だと不安になりますよ!俺が!!」
「お前が単独行動したら暗過ぎて周辺に苔が生えてくるだろ!!ただでさえ湿気が出る位根暗なんだから!!」
お互いの意見を主張する中、どうにか気持ちを回復させたロシュは「あのですね」と口を挟んできた。
同時に彼を見上げる三人の生徒達。
「あなた方は誘い方がまだ幼いのですよ…」
「はぁっ!?」
ロシュの言葉に即座に食ってかかったのは当然ラスだった。リシェを背後から抱き締め、絶対お前にやるものかと言わんばかりに密着する。
うぐぇっ、と抱き締められた衝撃でリシェの口から変な声が漏れた。
「あなた方の年齢はもっと刺激が欲しくなる時期と重なるのです。ちょっと大人びた事を背伸びしてでもしたくなるっていうのが本来の姿なんですよ」
何言ってんの…とロシュの話を聞きながらスティレンは思った。
「せん!!ぱいに!!そん!!な!!刺激は!!いりません!!」
すかさずラスはリシェを抱きながらはっきりと断る。
「うるさい!!近くで叫ぶな!!」
真上で怒鳴るラスに対し、リシェも負けじと怒鳴っている。一緒に居過ぎている為か、変に似通ってきたようだ。そんな二人をスルーし、ロシュは尚続ける。
「要は誘い方が下手なんです…リシェは甘い誘いに弱い時がありますからね。なので誘うとしたらこうですよ」
「………」
知ったような事を、とラスはギリギリする。
向こうではそうかもしれないが、こっちでは引っ掛かるとは限らないではないか。リシェをぎゅうっと抱き締めたまま相手の出方を窺う。
「リシェ。私と大人のデートをしませんか?勿論美味しい物をご馳走します。綺麗なホテルで一泊して日頃の疲れを癒しましょう。そして最後は官能の世界にご案内しま」
「最後は余計だ!!下手くそ!!」
言い終える前にラスが彼の誘いをばっさりと却下する。
腕の中のリシェは「官能…?」と眉間に皺を寄せる。その横でスティレンは「お前みたいなのはそんな言葉を覚えなくていい」と止めた。
下手くそとこき下ろされたロシュは、ムッとしながらあなたがまだ子供だからですよ!と言い返す。
「お子様にはまだご理解頂けないようで!」
「十分理解してるから止めたんだよ!!ああ、もう。先輩にはこの人は危険過ぎる。いいですか先輩、絶対この人に近付いてはいけませんよ!!何をされるか分かったものじゃないですから!明日の休みには俺らと買い物に行きましょう。最近開店した美味しいパフェの店をチェックしましたからね!!」
そう言い、ラスはリシェに向けられたロシュからの目線を避けるようにそのまま後方へ向きを変えた。
完全に見てはいけない人の扱いになっている。
「あー…ぱへ」
抱き締められたままのリシェはその甘い言葉には興味を持ったらしく、半ばラスに引き摺られながら「いいな」と一言呟いた。
「俺らって事は、当然こっちも入ってるんだろうね、ラス?」
一応スティレンは自分も含まれているのかを確認した。すると「勿論だよ」と笑顔を見せる。ロシュにリシェを持っていかれるより、三人で動いた方が大変健全だ。
やはりロシュには渡す事など出来ない。
「ぐぬぬ…今度はリシェ一人の時を狙って誘う事にしますよ。流石に邪魔が入ってはね」
悔しそうなロシュ。
果たしてリシェが単独で居る時があるのだろうか。
ラスはリシェにくっついたままで「絶対無理だし!!」と完全否定する。火花をお互い散らしている中で、リシェはまだ眉間に皺を寄せていた。
「官能って…?」
「お前、実は意味理解してるんじゃないの…」
お前みたいなのをカマトトぶってるって言うんだろうね、とスティレンは吐き捨てていた。
何も知らない側からしてみれば、一方的なロシュの求愛は迷惑以外の何でもないのだろう。
「お前、本当に知らないの?自覚無しに色んな人間を誑かしてるんだろ、どうせ」
あまりにもロシュが悲壮な表情を向けるのでスティレンは思わずリシェを突く。しかしリシェはそんな訳あるかとばっさり斬った。
「自覚無しって何だ。本当に俺は何もしていないぞ!それとも何か?俺は生きてるだけで他人に迷惑を掛けているって言いたいのか」
これもまた話が跳躍していた。
ここまで言って退けるなら、本当に無いのだろう。
「し、仕方無いですよ…先輩、本当になにも知らないんだから…」
歯軋りしながら涙目になるリシェに、ラスは落ち着いてと宥めた。流石に生きているだけで迷惑を掛けているとまで言われればどう返したらいいのか分からない。
全く…とスティレンは呆れつつも、困惑気味のロシュに目を向ける。彼は胸を押さえながら受けたショックをどうにか消化しようとしている模様。
「うう…ここまで全く私に興味すら持ってくれないとは。どうにかして振り向いて貰わないと…」
何かぶつぶつ言っている。
まさかこっちがおかしいのか?とスティレンは思った。
「先輩、折角の休みなので何処かに行きませんか?」
すかさず休日の誘いを突っ込んでくる抜け目の無いラス。しかし、先にこちらが申し出て来たのだ。ちょっと待ちなよとスティレンが彼を止めた。
ラスはきょとんとした面持ちでスティレンに目を向ける。
「あのねぇ!俺が先にこいつに休みは買い物に付き合ってって言ってるの!横入りしないでくれる!?」
そう言うものの、言われたリシェは全く了承もしていない。むしろ行きたがる様子では無く、逆に面倒臭がっている状況だ。話を好き放題に進められ、当のリシェは「勝手に人の予定を決めるな!!」と怒り泣きしながら怒鳴った。
こっちには一人で休む権利も無いのか!とぷりぷりする。
「俺の休みは俺が好きなように過ごすんだ!邪魔をするな!」
「そんな…先輩が一人だと不安になりますよ!俺が!!」
「お前が単独行動したら暗過ぎて周辺に苔が生えてくるだろ!!ただでさえ湿気が出る位根暗なんだから!!」
お互いの意見を主張する中、どうにか気持ちを回復させたロシュは「あのですね」と口を挟んできた。
同時に彼を見上げる三人の生徒達。
「あなた方は誘い方がまだ幼いのですよ…」
「はぁっ!?」
ロシュの言葉に即座に食ってかかったのは当然ラスだった。リシェを背後から抱き締め、絶対お前にやるものかと言わんばかりに密着する。
うぐぇっ、と抱き締められた衝撃でリシェの口から変な声が漏れた。
「あなた方の年齢はもっと刺激が欲しくなる時期と重なるのです。ちょっと大人びた事を背伸びしてでもしたくなるっていうのが本来の姿なんですよ」
何言ってんの…とロシュの話を聞きながらスティレンは思った。
「せん!!ぱいに!!そん!!な!!刺激は!!いりません!!」
すかさずラスはリシェを抱きながらはっきりと断る。
「うるさい!!近くで叫ぶな!!」
真上で怒鳴るラスに対し、リシェも負けじと怒鳴っている。一緒に居過ぎている為か、変に似通ってきたようだ。そんな二人をスルーし、ロシュは尚続ける。
「要は誘い方が下手なんです…リシェは甘い誘いに弱い時がありますからね。なので誘うとしたらこうですよ」
「………」
知ったような事を、とラスはギリギリする。
向こうではそうかもしれないが、こっちでは引っ掛かるとは限らないではないか。リシェをぎゅうっと抱き締めたまま相手の出方を窺う。
「リシェ。私と大人のデートをしませんか?勿論美味しい物をご馳走します。綺麗なホテルで一泊して日頃の疲れを癒しましょう。そして最後は官能の世界にご案内しま」
「最後は余計だ!!下手くそ!!」
言い終える前にラスが彼の誘いをばっさりと却下する。
腕の中のリシェは「官能…?」と眉間に皺を寄せる。その横でスティレンは「お前みたいなのはそんな言葉を覚えなくていい」と止めた。
下手くそとこき下ろされたロシュは、ムッとしながらあなたがまだ子供だからですよ!と言い返す。
「お子様にはまだご理解頂けないようで!」
「十分理解してるから止めたんだよ!!ああ、もう。先輩にはこの人は危険過ぎる。いいですか先輩、絶対この人に近付いてはいけませんよ!!何をされるか分かったものじゃないですから!明日の休みには俺らと買い物に行きましょう。最近開店した美味しいパフェの店をチェックしましたからね!!」
そう言い、ラスはリシェに向けられたロシュからの目線を避けるようにそのまま後方へ向きを変えた。
完全に見てはいけない人の扱いになっている。
「あー…ぱへ」
抱き締められたままのリシェはその甘い言葉には興味を持ったらしく、半ばラスに引き摺られながら「いいな」と一言呟いた。
「俺らって事は、当然こっちも入ってるんだろうね、ラス?」
一応スティレンは自分も含まれているのかを確認した。すると「勿論だよ」と笑顔を見せる。ロシュにリシェを持っていかれるより、三人で動いた方が大変健全だ。
やはりロシュには渡す事など出来ない。
「ぐぬぬ…今度はリシェ一人の時を狙って誘う事にしますよ。流石に邪魔が入ってはね」
悔しそうなロシュ。
果たしてリシェが単独で居る時があるのだろうか。
ラスはリシェにくっついたままで「絶対無理だし!!」と完全否定する。火花をお互い散らしている中で、リシェはまだ眉間に皺を寄せていた。
「官能って…?」
「お前、実は意味理解してるんじゃないの…」
お前みたいなのをカマトトぶってるって言うんだろうね、とスティレンは吐き捨てていた。
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