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そのろくじゅうご
事務作業
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向かい合うオーギュスティンに、体育教師のヴェスカは退屈そうな様子で声を掛けていた。ひっきりなしに。
「オーギュスティンせんせ」
「………」
対するオーギュスティンは無言でひたすらパソコン画面に向かい、延々と作業をしている。向かい合う人間からの声掛け妨害にもすっかり慣れてしまったらしく、完全に無視して作業が出来るという無駄スキルも身に付いたようだ。
最初はあまりの煩わしさにこいつと自分の席を離して欲しいと掛け合ったものの、同学年の担当の席を離すわけにはいかないと却下されてしまい仕方無く苦情を取り下げてしまった。
「返事してよー、寂しいじゃん」
「返事してもろくな話をしてこないじゃないですか」
ようやく返事をしてくれたので、ヴェスカはご機嫌な様子で笑う。
「じゃあちゃんとした話なら聞いてくれる訳ぇ?」
「聞きません」
あっさりと断るオーギュスティン。
だよなぁ、とヴェスカはニコニコと笑う。そんな能天気さが余計にオーギュスティンには癪に障るらしく、苛立つのを押さえながら作業の邪魔をしないで貰えませんかとだけ言った。
変に揉めるつもりはない。
単に邪魔をしないで欲しいだけなのだ。
「てか、何をそんなに必死に作業してる訳?そこまで時間が無いの?」
「別に追い込まれている訳ではありませんよ。さっさと仕事を終わらせたいだけなので」
「へえ…」
彼はそう言いながらおもむろに立ち上がり、席を回り込んでオーギュスティンの席に近付いた。同時に何ですかと慌てるオーギュスティン。
画面をパタンと伏せると、覗き込もうとしたヴェスカに見ないで下さいよ!と怒り出した。
「んんあ?何か見られてまずい事でもあるの?」
「そうじゃないですよ!個人的に見られたくないから言ってるんです!別に何も変なものはありませんよ!!」
そう言われれば余計見たくなってしまう。
ヴェスカはそれなら別にいいじゃんかと強引に彼のパソコンを開こうとした。
「何ですか鬱陶しい!!やめて下さいよ!あなたには全く関係ないでしょうが!!」
「そう言うなら別に見られてもいいんじゃねえの?俺とあんたの仲だろぉ?いいから見せてみろって。笑わないからさぁ」
嫌がるオーギュスティンは必死にヴェスカを突き放そうとするが、やはり体格差と力の差がありあっさりとかわされてしまう。パソコンにゴツい相手の手が掛かると、一気に開かれてしまった。
慌てるオーギュスティン。
「あぁああっ、この馬鹿!!」
「まぁまぁ、落ち着けって。あんたが何を必死に頑張ってるか見てみたいだけなんだか…」
画面を覗き込んだヴェスカは、その内容を見た瞬間「おっふ…」と思わず声を漏らした。
「先生」
ヴェスカは照れ臭そうな顔をするオーギュスティンを見る。
顔を紅潮させながら、彼は「何ですか」と怒ったニュアンスで返事をした。
ぷぷ、と笑いながら彼は「可愛い…」と呟く。
「う…うるっさい!!勝手に覗き見して失礼だと思わないんですか!」
「学級新聞作ってるんだ…そんなキツそうな顔で…週に一回?何これ、生徒に渡してるの?かわ…可愛い…」
パソコン画面には学級新聞の編集画面が開かれている。
非常にマメな性格なのか、細かく記事が書かれていた。
顔を真っ赤にしながら、オーギュスティンはパソコンを閉じた後にヴェスカの頭に拳骨を落とし、赤い髪を強引に引っ張り上げる。
「いだだだだだ!!!」
「だからあなたが嫌いなんですよ!!分かったら作業の邪魔をしないで下さい!!」
「やめ、痛いってば!ハゲるハゲる!!オーギュスティンせんせ、引っ張らないで…!!」
普段冷静極まりないオーギュスティンが怒るのが珍しいのか、周囲に居る教師は何事かと騒然となる。
怒りに任せ感情的になったオーギュスティンの怒鳴り声が職員室内に響き渡っていた。
「オーギュスティンせんせ」
「………」
対するオーギュスティンは無言でひたすらパソコン画面に向かい、延々と作業をしている。向かい合う人間からの声掛け妨害にもすっかり慣れてしまったらしく、完全に無視して作業が出来るという無駄スキルも身に付いたようだ。
最初はあまりの煩わしさにこいつと自分の席を離して欲しいと掛け合ったものの、同学年の担当の席を離すわけにはいかないと却下されてしまい仕方無く苦情を取り下げてしまった。
「返事してよー、寂しいじゃん」
「返事してもろくな話をしてこないじゃないですか」
ようやく返事をしてくれたので、ヴェスカはご機嫌な様子で笑う。
「じゃあちゃんとした話なら聞いてくれる訳ぇ?」
「聞きません」
あっさりと断るオーギュスティン。
だよなぁ、とヴェスカはニコニコと笑う。そんな能天気さが余計にオーギュスティンには癪に障るらしく、苛立つのを押さえながら作業の邪魔をしないで貰えませんかとだけ言った。
変に揉めるつもりはない。
単に邪魔をしないで欲しいだけなのだ。
「てか、何をそんなに必死に作業してる訳?そこまで時間が無いの?」
「別に追い込まれている訳ではありませんよ。さっさと仕事を終わらせたいだけなので」
「へえ…」
彼はそう言いながらおもむろに立ち上がり、席を回り込んでオーギュスティンの席に近付いた。同時に何ですかと慌てるオーギュスティン。
画面をパタンと伏せると、覗き込もうとしたヴェスカに見ないで下さいよ!と怒り出した。
「んんあ?何か見られてまずい事でもあるの?」
「そうじゃないですよ!個人的に見られたくないから言ってるんです!別に何も変なものはありませんよ!!」
そう言われれば余計見たくなってしまう。
ヴェスカはそれなら別にいいじゃんかと強引に彼のパソコンを開こうとした。
「何ですか鬱陶しい!!やめて下さいよ!あなたには全く関係ないでしょうが!!」
「そう言うなら別に見られてもいいんじゃねえの?俺とあんたの仲だろぉ?いいから見せてみろって。笑わないからさぁ」
嫌がるオーギュスティンは必死にヴェスカを突き放そうとするが、やはり体格差と力の差がありあっさりとかわされてしまう。パソコンにゴツい相手の手が掛かると、一気に開かれてしまった。
慌てるオーギュスティン。
「あぁああっ、この馬鹿!!」
「まぁまぁ、落ち着けって。あんたが何を必死に頑張ってるか見てみたいだけなんだか…」
画面を覗き込んだヴェスカは、その内容を見た瞬間「おっふ…」と思わず声を漏らした。
「先生」
ヴェスカは照れ臭そうな顔をするオーギュスティンを見る。
顔を紅潮させながら、彼は「何ですか」と怒ったニュアンスで返事をした。
ぷぷ、と笑いながら彼は「可愛い…」と呟く。
「う…うるっさい!!勝手に覗き見して失礼だと思わないんですか!」
「学級新聞作ってるんだ…そんなキツそうな顔で…週に一回?何これ、生徒に渡してるの?かわ…可愛い…」
パソコン画面には学級新聞の編集画面が開かれている。
非常にマメな性格なのか、細かく記事が書かれていた。
顔を真っ赤にしながら、オーギュスティンはパソコンを閉じた後にヴェスカの頭に拳骨を落とし、赤い髪を強引に引っ張り上げる。
「いだだだだだ!!!」
「だからあなたが嫌いなんですよ!!分かったら作業の邪魔をしないで下さい!!」
「やめ、痛いってば!ハゲるハゲる!!オーギュスティンせんせ、引っ張らないで…!!」
普段冷静極まりないオーギュスティンが怒るのが珍しいのか、周囲に居る教師は何事かと騒然となる。
怒りに任せ感情的になったオーギュスティンの怒鳴り声が職員室内に響き渡っていた。
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