36 / 101
そのさんじゅうご
リオデルからのお守り
しおりを挟む
先輩、また何か来てましたよとラスは荷物を手に部屋に入ってきた。
リシェと同室だから手渡すのに都合が良かったのだろう。またかと言わんばかりにリシェはそうかと単調に言うと、ラスから荷物を受け取る。
やけに軽さを感じ、上下に上げ下げしながら「何だ?」と眉を寄せた。
「開けてみたらどうですか?」
「うん。…まあ、開けるけど…」
差出人はやはり実家から。
よくまあしょっちゅう何かを送り込んでくるものだと感心する。
箱を開封し、中を覗き込むと黒く小さな物体。
「何だこれ?」
リシェはそれを引っ張り出して確認すると、同時に彼の携帯電話に着信が入った。何だ?と画面を見るなり彼は渋い顔をする。
「先輩、誰からです?」
ラスの問い掛けをスルーし、代わりに電話をスピーカーにしてテーブルに置いた。通話が開始するなり大音響で声が響き渡る。
『届いたでござるかリシェ!!!!』
うわっ、とつい声を上げてしまうラス。
その声は彼の兄のリオデルだった。リシェの嫌そうな表情が、彼に対してどう思っているのかが伺えた。
『その黒いのを肌身離さず持っていなさい!』
電話越しにも関わらず、彼は元気よく叫んでくる。鬱陶しそうな様子を決して崩さぬままの弟は「何だこれは」と至って冷静に聞いた。
ラスはリシェの手にあった黒く小さな物体を手に取ると、ううんとあちこち確認する。
『これは悪いものからお前を守るお守りでござる!!』
お守りだと?とその黒い物体に目を向けた。
どう見ても胡散臭さが半端ないのだが。
『黙っていても俺のリシェは変な輩にくっつかれてしまうからね!!これさえ持っていればもう安心ですぞ、いつどこで何があるか分からないからね!!それがあればいつでもお前の所に』
「先輩」
リオデルの会話を遮るようにして、ラスはリシェに言った。
「これ…GPSですね」
「は?」
リシェは同時に通話を完全に切った。
「普通に本体に書いてますよ…」
「………」
何がお守りなのか。
単に位置情報を知るだけが目的なのではないかとそれを引ったくると、電源はどこだと探し始めた。
「細かく砕いてやらなきゃ気が済まない」
「あっ、そうだ!あれですよ、こないだ送ってくれたドライバーセット!あれ借りてきますね」
こういう時に役に立つとは思わなかった。
ラスの申し出に、リシェは「悪いな」と返す。
電源を切って思い切り分解して、どこか遠くに飛ばしてやろうと苛々しながら思った。
…数分後。
「ラス」
「はい!」
「俺はこれを捨ててくる。出来るだけ遠くに」
「はい!デートですね、先輩!!行きましょう行きましょう」
全く会話が噛み合っていない。
「何一つ俺はデートなんて言ってないんだけどな…まあいいや」
「いいんですよ、結局外出してそれを捨てに行くんでしょ?その後でデートでいいじゃないですかぁ」
ラスはにこにこと嬉しそうに笑いながら、今日が休みで良かったですねえと能天気に準備を始めていた。
リシェと同室だから手渡すのに都合が良かったのだろう。またかと言わんばかりにリシェはそうかと単調に言うと、ラスから荷物を受け取る。
やけに軽さを感じ、上下に上げ下げしながら「何だ?」と眉を寄せた。
「開けてみたらどうですか?」
「うん。…まあ、開けるけど…」
差出人はやはり実家から。
よくまあしょっちゅう何かを送り込んでくるものだと感心する。
箱を開封し、中を覗き込むと黒く小さな物体。
「何だこれ?」
リシェはそれを引っ張り出して確認すると、同時に彼の携帯電話に着信が入った。何だ?と画面を見るなり彼は渋い顔をする。
「先輩、誰からです?」
ラスの問い掛けをスルーし、代わりに電話をスピーカーにしてテーブルに置いた。通話が開始するなり大音響で声が響き渡る。
『届いたでござるかリシェ!!!!』
うわっ、とつい声を上げてしまうラス。
その声は彼の兄のリオデルだった。リシェの嫌そうな表情が、彼に対してどう思っているのかが伺えた。
『その黒いのを肌身離さず持っていなさい!』
電話越しにも関わらず、彼は元気よく叫んでくる。鬱陶しそうな様子を決して崩さぬままの弟は「何だこれは」と至って冷静に聞いた。
ラスはリシェの手にあった黒く小さな物体を手に取ると、ううんとあちこち確認する。
『これは悪いものからお前を守るお守りでござる!!』
お守りだと?とその黒い物体に目を向けた。
どう見ても胡散臭さが半端ないのだが。
『黙っていても俺のリシェは変な輩にくっつかれてしまうからね!!これさえ持っていればもう安心ですぞ、いつどこで何があるか分からないからね!!それがあればいつでもお前の所に』
「先輩」
リオデルの会話を遮るようにして、ラスはリシェに言った。
「これ…GPSですね」
「は?」
リシェは同時に通話を完全に切った。
「普通に本体に書いてますよ…」
「………」
何がお守りなのか。
単に位置情報を知るだけが目的なのではないかとそれを引ったくると、電源はどこだと探し始めた。
「細かく砕いてやらなきゃ気が済まない」
「あっ、そうだ!あれですよ、こないだ送ってくれたドライバーセット!あれ借りてきますね」
こういう時に役に立つとは思わなかった。
ラスの申し出に、リシェは「悪いな」と返す。
電源を切って思い切り分解して、どこか遠くに飛ばしてやろうと苛々しながら思った。
…数分後。
「ラス」
「はい!」
「俺はこれを捨ててくる。出来るだけ遠くに」
「はい!デートですね、先輩!!行きましょう行きましょう」
全く会話が噛み合っていない。
「何一つ俺はデートなんて言ってないんだけどな…まあいいや」
「いいんですよ、結局外出してそれを捨てに行くんでしょ?その後でデートでいいじゃないですかぁ」
ラスはにこにこと嬉しそうに笑いながら、今日が休みで良かったですねえと能天気に準備を始めていた。
0
お気に入りに追加
35
あなたにおすすめの小説
転生したら乙女ゲームのモブキャラだったのでモブハーレム作ろうとしたら…BLな方向になるのだが
松林 松茸
BL
私は「南 明日香」という平凡な会社員だった。
ありふれた生活と隠していたオタク趣味。それだけで満足な生活だった。
あの日までは。
気が付くと大好きだった乙女ゲーム“ときめき魔法学院”のモブキャラ「レナンジェス=ハックマン子爵家長男」に転生していた。
(無いものがある!これは…モブキャラハーレムを作らなくては!!)
その野望を実現すべく計画を練るが…アーな方向へ向かってしまう。
元日本人女性の異世界生活は如何に?
※カクヨム様、小説家になろう様で同時連載しております。
5月23日から毎日、昼12時更新します。
神獣様の森にて。
しゅ
BL
どこ、ここ.......?
俺は橋本 俊。
残業終わり、会社のエレベーターに乗ったはずだった。
そう。そのはずである。
いつもの日常から、急に非日常になり、日常に変わる、そんなお話。
7話完結。完結後、別のペアの話を更新致します。
魔界最強に転生した社畜は、イケメン王子に奪い合われることになりました
タタミ
BL
ブラック企業に務める社畜・佐藤流嘉。
クリスマスも残業確定の非リア人生は、トラックの激突により突然終了する。
死後目覚めると、目の前で見目麗しい天使が微笑んでいた。
「ここは天国ではなく魔界です」
天使に会えたと喜んだのもつかの間、そこは天国などではなく魔法が当たり前にある世界・魔界だと知らされる。そして流嘉は、魔界に君臨する最強の支配者『至上様』に転生していたのだった。
「至上様、私に接吻を」
「あっ。ああ、接吻か……って、接吻!?なんだそれ、まさかキスですか!?」
何が起こっているのかわからないうちに、流嘉の前に現れたのは美しい4人の王子。この4王子にキスをして、結婚相手を選ばなければならないと言われて──!?
推しの完璧超人お兄様になっちゃった
紫 もくれん
BL
『君の心臓にたどりつけたら』というゲーム。体が弱くて一生の大半をベットの上で過ごした僕が命を賭けてやり込んだゲーム。
そのクラウス・フォン・シルヴェスターという推しの大好きな完璧超人兄貴に成り代わってしまった。
ずっと好きで好きでたまらなかった推し。その推しに好かれるためならなんだってできるよ。
そんなBLゲーム世界で生きる僕のお話。
俺の義兄弟が凄いんだが
kogyoku
BL
母親の再婚で俺に兄弟ができたんだがそれがどいつもこいつもハイスペックで、その上転校することになって俺の平凡な日常はいったいどこへ・・・
初投稿です。感想などお待ちしています。
侯爵令息セドリックの憂鬱な日
めちゅう
BL
第二王子の婚約者候補侯爵令息セドリック・グランツはある日王子の婚約者が決定した事を聞いてしまう。しかし先に王子からお呼びがかかったのはもう一人の候補だった。候補落ちを確信し泣き腫らした次の日は憂鬱な気分で幕を開ける———
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
初投稿で拙い文章ですが楽しんでいただけますと幸いです。
肌が白くて女の子みたいに綺麗な先輩。本当におしっこするのか気になり過ぎて…?
こじらせた処女
BL
槍本シュン(やりもとしゅん)の所属している部活、機器操作部は2つ上の先輩、白井瑞稀(しらいみずき)しか居ない。
自分より身長の高い大男のはずなのに、足の先まで綺麗な先輩。彼が近くに来ると、何故か落ち着かない槍本は、これが何なのか分からないでいた。
ある日の冬、大雪で帰れなくなった槍本は、一人暮らしをしている白井の家に泊まることになる。帰り道、おしっこしたいと呟く白井に、本当にトイレするのかと何故か疑問に思ってしまい…?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる