24 / 101
そのにじゅうさん
ぶかぶか猫耳パーカー
しおりを挟む
「先輩、先輩、先輩!!!」
雑誌を見て大体の欲しい上着のイメージが定まって、早速街へ出払っていたラスは帰寮するなり紙袋片手に激しく扉を開いた。
勢い良く入って来たラスを、リシェは「やかましいな」と嫌そうな顔で迎え入れる。
「可愛いのみつけた!!先輩に似合う服!!」
「頼んでないぞ、そんなの」
何勝手に買って来てくれたんだ、とリシェは興味なさげに言った。一方のラスは、鼻息荒くしながら大きな紙袋から一着のパーカーを引っ張り出すと広げて見せる。
「んん?」
白と黒を基調とした、猫の耳がくっついた帽子付き。
「先輩に絶対似合うと思って!!」
その支払いは一体誰がするのだろうか。リシェはそう思うとたちまち顔を曇らせてしまう。ラスの趣味と自分の趣味は全く合わないというのに、何故このように派手そうなものを買ってきてしまうのだろう。
「これ!!着てみて下さい!!」
フードの部分は大きな耳だけではなく、大きなボタンで目を象っていた。確かに可愛い服といえば可愛いのだが。サイズ的にも、小柄なリシェが着るにはブカブカな気もする。
ラスはあえてそれを選んだのだろう。
「その上着の代金は誰が払うんだ?まさか俺じゃないだろうな??」
買う気もなれないものにお金を払いたくはない。
別にお金に困っている訳ではないのだが、頼んでもいないのに押し付けられたくなかった。
ラスはにっこりと微笑みながら「嫌だなぁ」と言う。
「俺が着て欲しいものなのに、先輩にお金を出させる訳にはいきませんよぉ。これを見た瞬間絶対先輩が着ると可愛いって思ってついつい買ってきてしまったんです。これはプレゼントですよ」
「…そうか。ならいいんだけど」
ラスに言われるままにその服に袖を通す。やはり大きめサイズでガバガバだったが、どうにか着る事が出来た。
こうか?とラスを見上げる。
すると彼は心底嬉しそうな顔で「そうそう!!」と叫んだ。
「デカいんだが」
「それがいいんです!!!先輩、もう堪らないです、めちゃくちゃ似合う!!猫耳パーカー最高じゃないですか!!恐竜バージョンもあったんだけど、こうなったらそっちも着て欲しい位!!んあぁあああ、もう!どうしよう、あー!!可愛い!!」
ラスは感激のあまりリシェの周りを狂ったようにぐるぐるしながら色んな角度で眺めている。オーバーサイズ過ぎて、手の先がほんの少ししか出ない上に膝上まで服が長いのでかえって不恰好な気がするのだが。
そもそもこの服は一体誰向けなのだろうか。
「先輩、最高ですよ!今度これを着て俺をデートして下さい!」
「ラス」
「はい!!」
帽子ですら顔半分隠れてしまうのだ。
これでは転んでしまいそうで怖い。
「大き過ぎる。ブカブカだ」
その訴えに、ラスはじっとリシェを眺めた。確かに服が大き過ぎて、小さな彼だと逆に服に着せられている感が否めない。
猫耳の頭をひょこひょこさせながらリシェは「動き辛…」と呟いた。
「うううん」
ラスは一旦冷静になり腕を組んで考えこむ。思えば、一目見た瞬間にその手にした服を真っ先に買ってしまったのだ。サイズもまともに見ないで。考え無しだった。
ちょっと考えた後、彼は分かりました!と顔を上げる。
「先輩」
「ん?」
ブカブカのパーカー頭がへにょりと揺れる。同時に猫耳もへにょりと垂れた。
「今から一緒にサイズ交換に行きましょう」
「ええ」
俺も行くのか?と面倒そうにリシェは問う。ラスは勿論ですよと彼の頭を撫でた。
「サイズぴったりじゃなくて、ちょっと大きめがいいですね。余裕持たせた方が可愛いです!」
「お前の基準は可愛いで決めるのか」
そこまで言うなら自分が着ればいいだろう、と呆れてしまう。
「いいや!俺が買うんだから先輩には文句言わせませんよ!さ、一旦脱いで下さい。袋に詰めて交換しに行きましょう!」
「お前の上着を買いに行ったんじゃなかったのか」
「勿論買いましたよ。俺はちゃんと試着したので満足なんです!さあ、先輩!行きますよぉ!」
自分の上着を買うだけで良かったのに、何故こうなってしまうのだろうか。リシェは面倒そうにしながら、渋々とラスの言われるままに準備を始めていた。
雑誌を見て大体の欲しい上着のイメージが定まって、早速街へ出払っていたラスは帰寮するなり紙袋片手に激しく扉を開いた。
勢い良く入って来たラスを、リシェは「やかましいな」と嫌そうな顔で迎え入れる。
「可愛いのみつけた!!先輩に似合う服!!」
「頼んでないぞ、そんなの」
何勝手に買って来てくれたんだ、とリシェは興味なさげに言った。一方のラスは、鼻息荒くしながら大きな紙袋から一着のパーカーを引っ張り出すと広げて見せる。
「んん?」
白と黒を基調とした、猫の耳がくっついた帽子付き。
「先輩に絶対似合うと思って!!」
その支払いは一体誰がするのだろうか。リシェはそう思うとたちまち顔を曇らせてしまう。ラスの趣味と自分の趣味は全く合わないというのに、何故このように派手そうなものを買ってきてしまうのだろう。
「これ!!着てみて下さい!!」
フードの部分は大きな耳だけではなく、大きなボタンで目を象っていた。確かに可愛い服といえば可愛いのだが。サイズ的にも、小柄なリシェが着るにはブカブカな気もする。
ラスはあえてそれを選んだのだろう。
「その上着の代金は誰が払うんだ?まさか俺じゃないだろうな??」
買う気もなれないものにお金を払いたくはない。
別にお金に困っている訳ではないのだが、頼んでもいないのに押し付けられたくなかった。
ラスはにっこりと微笑みながら「嫌だなぁ」と言う。
「俺が着て欲しいものなのに、先輩にお金を出させる訳にはいきませんよぉ。これを見た瞬間絶対先輩が着ると可愛いって思ってついつい買ってきてしまったんです。これはプレゼントですよ」
「…そうか。ならいいんだけど」
ラスに言われるままにその服に袖を通す。やはり大きめサイズでガバガバだったが、どうにか着る事が出来た。
こうか?とラスを見上げる。
すると彼は心底嬉しそうな顔で「そうそう!!」と叫んだ。
「デカいんだが」
「それがいいんです!!!先輩、もう堪らないです、めちゃくちゃ似合う!!猫耳パーカー最高じゃないですか!!恐竜バージョンもあったんだけど、こうなったらそっちも着て欲しい位!!んあぁあああ、もう!どうしよう、あー!!可愛い!!」
ラスは感激のあまりリシェの周りを狂ったようにぐるぐるしながら色んな角度で眺めている。オーバーサイズ過ぎて、手の先がほんの少ししか出ない上に膝上まで服が長いのでかえって不恰好な気がするのだが。
そもそもこの服は一体誰向けなのだろうか。
「先輩、最高ですよ!今度これを着て俺をデートして下さい!」
「ラス」
「はい!!」
帽子ですら顔半分隠れてしまうのだ。
これでは転んでしまいそうで怖い。
「大き過ぎる。ブカブカだ」
その訴えに、ラスはじっとリシェを眺めた。確かに服が大き過ぎて、小さな彼だと逆に服に着せられている感が否めない。
猫耳の頭をひょこひょこさせながらリシェは「動き辛…」と呟いた。
「うううん」
ラスは一旦冷静になり腕を組んで考えこむ。思えば、一目見た瞬間にその手にした服を真っ先に買ってしまったのだ。サイズもまともに見ないで。考え無しだった。
ちょっと考えた後、彼は分かりました!と顔を上げる。
「先輩」
「ん?」
ブカブカのパーカー頭がへにょりと揺れる。同時に猫耳もへにょりと垂れた。
「今から一緒にサイズ交換に行きましょう」
「ええ」
俺も行くのか?と面倒そうにリシェは問う。ラスは勿論ですよと彼の頭を撫でた。
「サイズぴったりじゃなくて、ちょっと大きめがいいですね。余裕持たせた方が可愛いです!」
「お前の基準は可愛いで決めるのか」
そこまで言うなら自分が着ればいいだろう、と呆れてしまう。
「いいや!俺が買うんだから先輩には文句言わせませんよ!さ、一旦脱いで下さい。袋に詰めて交換しに行きましょう!」
「お前の上着を買いに行ったんじゃなかったのか」
「勿論買いましたよ。俺はちゃんと試着したので満足なんです!さあ、先輩!行きますよぉ!」
自分の上着を買うだけで良かったのに、何故こうなってしまうのだろうか。リシェは面倒そうにしながら、渋々とラスの言われるままに準備を始めていた。
0
お気に入りに追加
35
あなたにおすすめの小説
転生したら乙女ゲームのモブキャラだったのでモブハーレム作ろうとしたら…BLな方向になるのだが
松林 松茸
BL
私は「南 明日香」という平凡な会社員だった。
ありふれた生活と隠していたオタク趣味。それだけで満足な生活だった。
あの日までは。
気が付くと大好きだった乙女ゲーム“ときめき魔法学院”のモブキャラ「レナンジェス=ハックマン子爵家長男」に転生していた。
(無いものがある!これは…モブキャラハーレムを作らなくては!!)
その野望を実現すべく計画を練るが…アーな方向へ向かってしまう。
元日本人女性の異世界生活は如何に?
※カクヨム様、小説家になろう様で同時連載しております。
5月23日から毎日、昼12時更新します。
神獣様の森にて。
しゅ
BL
どこ、ここ.......?
俺は橋本 俊。
残業終わり、会社のエレベーターに乗ったはずだった。
そう。そのはずである。
いつもの日常から、急に非日常になり、日常に変わる、そんなお話。
7話完結。完結後、別のペアの話を更新致します。
魔界最強に転生した社畜は、イケメン王子に奪い合われることになりました
タタミ
BL
ブラック企業に務める社畜・佐藤流嘉。
クリスマスも残業確定の非リア人生は、トラックの激突により突然終了する。
死後目覚めると、目の前で見目麗しい天使が微笑んでいた。
「ここは天国ではなく魔界です」
天使に会えたと喜んだのもつかの間、そこは天国などではなく魔法が当たり前にある世界・魔界だと知らされる。そして流嘉は、魔界に君臨する最強の支配者『至上様』に転生していたのだった。
「至上様、私に接吻を」
「あっ。ああ、接吻か……って、接吻!?なんだそれ、まさかキスですか!?」
何が起こっているのかわからないうちに、流嘉の前に現れたのは美しい4人の王子。この4王子にキスをして、結婚相手を選ばなければならないと言われて──!?
推しの完璧超人お兄様になっちゃった
紫 もくれん
BL
『君の心臓にたどりつけたら』というゲーム。体が弱くて一生の大半をベットの上で過ごした僕が命を賭けてやり込んだゲーム。
そのクラウス・フォン・シルヴェスターという推しの大好きな完璧超人兄貴に成り代わってしまった。
ずっと好きで好きでたまらなかった推し。その推しに好かれるためならなんだってできるよ。
そんなBLゲーム世界で生きる僕のお話。
俺の義兄弟が凄いんだが
kogyoku
BL
母親の再婚で俺に兄弟ができたんだがそれがどいつもこいつもハイスペックで、その上転校することになって俺の平凡な日常はいったいどこへ・・・
初投稿です。感想などお待ちしています。
侯爵令息セドリックの憂鬱な日
めちゅう
BL
第二王子の婚約者候補侯爵令息セドリック・グランツはある日王子の婚約者が決定した事を聞いてしまう。しかし先に王子からお呼びがかかったのはもう一人の候補だった。候補落ちを確信し泣き腫らした次の日は憂鬱な気分で幕を開ける———
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
初投稿で拙い文章ですが楽しんでいただけますと幸いです。
肌が白くて女の子みたいに綺麗な先輩。本当におしっこするのか気になり過ぎて…?
こじらせた処女
BL
槍本シュン(やりもとしゅん)の所属している部活、機器操作部は2つ上の先輩、白井瑞稀(しらいみずき)しか居ない。
自分より身長の高い大男のはずなのに、足の先まで綺麗な先輩。彼が近くに来ると、何故か落ち着かない槍本は、これが何なのか分からないでいた。
ある日の冬、大雪で帰れなくなった槍本は、一人暮らしをしている白井の家に泊まることになる。帰り道、おしっこしたいと呟く白井に、本当にトイレするのかと何故か疑問に思ってしまい…?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる