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そのさんじゅうさん
復活のロシュ
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今回の長期休みは比較的無事に過ごせた気がするなぁ…。
長い休みも終わり、通常の授業に戻りつつあったある日、ラスは不意にそんな事を思っていた。
放課後にいつもの屋上に寄らず、課題を片付ける為にすぐに寮に戻っていたリシェをちらりと見る。
「先輩」
「ん?」
年上のラスから見て、リシェはとても勤勉な性格だと思う。真剣に課題に取り組む姿は元の世界でも全く同じだ。
「冬休み、あの人見ませんでしたか?」
あの人というのが一体誰を指すのか分からず、リシェは「誰?」と怪訝そうな顔を見せた。ラスからすれば、あの忌々しい存在である彼の名前は出来れば口にしたくもないのだが。
「あいつですよ。保健医の」
あいつというだけでも保健医のキーワードのみでリシェは把握する。
「あぁ」
「長期休みだと気付いたら人様の部屋を望遠鏡で覗いてるじゃないですか」
そういえばそうだったっけ…と手を止めるリシェ。
あまり気にしていないというか、大して彼に興味が無い様子だ。それはそれでラスにとっては有難かった。
こっち側の世界でもロシュに夢中では、もう自分には勝ち目など無いのだ。
「あの人、入院してるらしいぞ」
「え?」
「何でかは知らない。こないだ誰かの話を立ち聞きした程度だったし」
病気か何かにしては長いよな、と再び課題に向かう。
そっち系とは無縁な性質だと思うが、何か悪い物でも口にしたのだろうか。
「それは大変だ」
だから変に視線を窓側から感じなかった訳だ、と合点がいった。その分平和に過ごせた気がするので良かったのかもしれない。
リシェはロシュの事などまるでどうでも良いのか、ひたすらノートに文字などを書き連ねていた。まずは目先の課題なのだろう。
「先輩」
「ん?」
「何か手伝いましょうか?」
「いや、いい…自分がやらなきゃ意味が無いからな」
そうですかぁ…とラスはにっこりと微笑んだ。
こうして一緒の時間を共有出来るのが一番の幸せなのかもしれない。このまま時間が止まればいいのに。
そんな事を考えていると、部屋の外から激しい足音が聞こえてきた。誰かが慌てて部屋に向かっているのだろうか…とラスはぼんやりと考える。
あまりにも騒々しいので、リシェも手を止めてしまった。
「何だ?やかましいな」
寮内は基本的に騒音は禁止されている。走る事も厳禁だ。
ここで生活している生徒ならばそのルールは把握しているはずなのだが。
足音は更に激しさを増していた。廊下は指定の靴やスリッパの着用を勧めているのだが、その足音は音の出にくい靴やスリッパのものではなく、普通の革靴のような足音のようにも聞こえてくる。
「うるさいなぁ」
「スティレンじゃないのか?」
指定の靴なんてダサくて履けない、と以前愚痴っていたのを思い出しながらリシェはぼやいた。だとしてもここまで響くような靴を使う程、彼は空気が読めないのだろうか…と二人が不思議がっていると、その激しい足音はぴたりと止まる。
ラスとリシェはお互いに顔を見合わせた。
「俺らの部屋の前で止まってませんよね…」
「やっぱりスティレンじゃないのか?無視してやれ」
どうせ勝手に入ってくるだろ、と突き放していると部屋の扉がノックされる。
「スティレンはノックしませんよね」
「あぁ。誰だろ…」
足音からして異様な感じがしていたラスは、一体何者なのかと眉を寄せた。仕方無いな…と椅子から立ち上がり、扉の前に立つ。
「はーい…どなたですか…」
そう言いながら扉を開き、相手の姿を見た。
視界に映るスーツのような服装に加え、ふわりと漂う爽やかな香水の匂いがする。同時にぞわりと悪寒が全身を駆け巡った。
そろそろと顔を上げると同時に、見目麗しい相手が話しかけてきた。二人だけの楽園とも言えるべき寮の部屋に、何故こいつがやってくるのか。
「リシェはこちらに戻っ」
「帰れ!!!!!!!」
言葉を遮って言い放ち、反射的にラスは扉を勢い良く閉めた。同時にドンドンとノック音が響く。
「何であんたがこっちに来るんだ!緊急の用事ですか!!」
「久しぶりに学園に戻って来たのですから顔が見たい!!」
「だからって寮の部屋にまで押し掛けて来るな!」
恐らくかなりの日数を病室で過ごしていたのだろう。大好きなリシェに会えず禁断症状になっていたのかもしれない。
「一目だけでも会わせてくれたっていいじゃないですか!」
「学校に居ればそのうち顔を見るだろ!?ここまで来るか普通!?」
いいから会わせろと訴えるロシュと、気持ち悪いから帰れと言い返すラス。
「何か用事があるんじゃないのか?」
「いいや、聞きましたでしょ今の!?この人は先輩に対して長い事会えなさすぎて禁断症状が出てるんですよ!!顔を合わせれば犯罪が起きるかもしれませんよ!!」
こいつは変態ですから先輩にとっては非常に危険です!とノック音を背後に断言する。
「そうか」
それを言うならラスも突如カタカタ震え、「先輩不足だ」言い出すのと同じ現象なのでは…とリシェは思ったが敢えて口にしない事にした。
長い休みも終わり、通常の授業に戻りつつあったある日、ラスは不意にそんな事を思っていた。
放課後にいつもの屋上に寄らず、課題を片付ける為にすぐに寮に戻っていたリシェをちらりと見る。
「先輩」
「ん?」
年上のラスから見て、リシェはとても勤勉な性格だと思う。真剣に課題に取り組む姿は元の世界でも全く同じだ。
「冬休み、あの人見ませんでしたか?」
あの人というのが一体誰を指すのか分からず、リシェは「誰?」と怪訝そうな顔を見せた。ラスからすれば、あの忌々しい存在である彼の名前は出来れば口にしたくもないのだが。
「あいつですよ。保健医の」
あいつというだけでも保健医のキーワードのみでリシェは把握する。
「あぁ」
「長期休みだと気付いたら人様の部屋を望遠鏡で覗いてるじゃないですか」
そういえばそうだったっけ…と手を止めるリシェ。
あまり気にしていないというか、大して彼に興味が無い様子だ。それはそれでラスにとっては有難かった。
こっち側の世界でもロシュに夢中では、もう自分には勝ち目など無いのだ。
「あの人、入院してるらしいぞ」
「え?」
「何でかは知らない。こないだ誰かの話を立ち聞きした程度だったし」
病気か何かにしては長いよな、と再び課題に向かう。
そっち系とは無縁な性質だと思うが、何か悪い物でも口にしたのだろうか。
「それは大変だ」
だから変に視線を窓側から感じなかった訳だ、と合点がいった。その分平和に過ごせた気がするので良かったのかもしれない。
リシェはロシュの事などまるでどうでも良いのか、ひたすらノートに文字などを書き連ねていた。まずは目先の課題なのだろう。
「先輩」
「ん?」
「何か手伝いましょうか?」
「いや、いい…自分がやらなきゃ意味が無いからな」
そうですかぁ…とラスはにっこりと微笑んだ。
こうして一緒の時間を共有出来るのが一番の幸せなのかもしれない。このまま時間が止まればいいのに。
そんな事を考えていると、部屋の外から激しい足音が聞こえてきた。誰かが慌てて部屋に向かっているのだろうか…とラスはぼんやりと考える。
あまりにも騒々しいので、リシェも手を止めてしまった。
「何だ?やかましいな」
寮内は基本的に騒音は禁止されている。走る事も厳禁だ。
ここで生活している生徒ならばそのルールは把握しているはずなのだが。
足音は更に激しさを増していた。廊下は指定の靴やスリッパの着用を勧めているのだが、その足音は音の出にくい靴やスリッパのものではなく、普通の革靴のような足音のようにも聞こえてくる。
「うるさいなぁ」
「スティレンじゃないのか?」
指定の靴なんてダサくて履けない、と以前愚痴っていたのを思い出しながらリシェはぼやいた。だとしてもここまで響くような靴を使う程、彼は空気が読めないのだろうか…と二人が不思議がっていると、その激しい足音はぴたりと止まる。
ラスとリシェはお互いに顔を見合わせた。
「俺らの部屋の前で止まってませんよね…」
「やっぱりスティレンじゃないのか?無視してやれ」
どうせ勝手に入ってくるだろ、と突き放していると部屋の扉がノックされる。
「スティレンはノックしませんよね」
「あぁ。誰だろ…」
足音からして異様な感じがしていたラスは、一体何者なのかと眉を寄せた。仕方無いな…と椅子から立ち上がり、扉の前に立つ。
「はーい…どなたですか…」
そう言いながら扉を開き、相手の姿を見た。
視界に映るスーツのような服装に加え、ふわりと漂う爽やかな香水の匂いがする。同時にぞわりと悪寒が全身を駆け巡った。
そろそろと顔を上げると同時に、見目麗しい相手が話しかけてきた。二人だけの楽園とも言えるべき寮の部屋に、何故こいつがやってくるのか。
「リシェはこちらに戻っ」
「帰れ!!!!!!!」
言葉を遮って言い放ち、反射的にラスは扉を勢い良く閉めた。同時にドンドンとノック音が響く。
「何であんたがこっちに来るんだ!緊急の用事ですか!!」
「久しぶりに学園に戻って来たのですから顔が見たい!!」
「だからって寮の部屋にまで押し掛けて来るな!」
恐らくかなりの日数を病室で過ごしていたのだろう。大好きなリシェに会えず禁断症状になっていたのかもしれない。
「一目だけでも会わせてくれたっていいじゃないですか!」
「学校に居ればそのうち顔を見るだろ!?ここまで来るか普通!?」
いいから会わせろと訴えるロシュと、気持ち悪いから帰れと言い返すラス。
「何か用事があるんじゃないのか?」
「いいや、聞きましたでしょ今の!?この人は先輩に対して長い事会えなさすぎて禁断症状が出てるんですよ!!顔を合わせれば犯罪が起きるかもしれませんよ!!」
こいつは変態ですから先輩にとっては非常に危険です!とノック音を背後に断言する。
「そうか」
それを言うならラスも突如カタカタ震え、「先輩不足だ」言い出すのと同じ現象なのでは…とリシェは思ったが敢えて口にしない事にした。
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