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そのじゅう
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「こういう寮もある学校とかだと、先輩のように顔立ちのいい生徒は狙われやすいっていうじゃないですか」
突然ラスはそんな事を言い出した。
リシェはネットゲームをやりながらいつものように赤フンとじゃれあっている最中。ちょうどいい防具が揃い、防具レベルを上げながら「何だいきなり」と不思議そうな様子。
リシェとは違い、それほどゲームに興味の無いラスは、読んでいた雑誌を閉じる。彼がゲームに興じている間、彼も何かしら暇潰しをしていた。
「可愛い子を狙う同級生とか先生とか…女子向けの漫画とかでそういう話が好まれたりするようなんですよ。ここなんて男子校で尚且つ普通に寮もあるし、そういう話が好きな人はもってこいな環境なんだろうなぁって…」
「ほーん」
あまり興味が無さそうなリシェの反応。
ラスはゲーム画面に釘付けになっている彼の前に座った。
「仮にですよ。仮に、ここが女子生徒が居るとすれば絶対先輩はキャーキャー言われると思うんです」
「……?」
「先輩は誰が見ても美少年ですからね。現に、変態にやたら目を付けられたりするし…俺が見てないと誰彼構わずくっつかれてしまいます」
そしていつものように何かを思い出して歯軋りをした。
ラスは定期的に何かを思い出しては、悔しそうにぐぎぎぎと怒りを沸々湧かせていた。
「その代表格はお前だろう」
「俺じゃないです!!」
決して自分はそうじゃないと即座に言うあたり、心の中で意識してるのではないだろうか。
リシェのイメージではラスが第一変態のトップに出てくる。
「お前が変態じゃなければ誰が変態だというのだ」
「居るじゃないですか、あの保健医ですよ!…そうだ、前に足を挫いた時に何かされたりしませんでしたか!?押し倒されたり足をベロベロ舐め回されたり脱がされたり…!あいつは確実に先輩を狙ってますからね!とんでもないですよ!!世界の変態ランキングに入りそうなレベルの変質者ですからね、気を付けないと!」
ロシュの話題になるとラスはやたら饒舌に彼を否定してくる。リシェは赤フンに挨拶してからゲーム画面を閉じ、何だお前と一息吐いた。
「やたらあの人を意識するじゃないか」
「そりゃあ…」
ロシュにとって、リシェはどうしても手に入れたい人間なのだから。
…ただリシェは全く記憶が無く、彼の事など微塵も考えていないのが幸いだった。現状、一番彼に近いのは紛れもなく自分だ。そう思えば、優越感を常に感じる。
「先輩、これからも保健室に行く際には俺を呼んで下さいよ」
「何でだよ、面倒臭いなぁ」
「これは先輩を守る為でもあるんですよ!」
あっちはあっちで面倒だったが、こっちもこっちで面倒だ。
リシェはうんざりしたようにラスを見ていた。
「仮にですよ?仮に…先輩がまた怪我とか体調が悪くなった時に保健室のお世話になるとなれば。あの変態が涎を垂らして嬉しそうに張り切りますよ。先輩はただでさえ無自覚で魅力を振り撒いているようなものですからね。あんな事やこんな事やそんな事まで繰り返しさせられてしまうに違いない。普段でさえ色んな奴らが先輩を狙ってくるかもしれない。色恋沙汰とはかけ離れた男子校ですからね、ちょっとばかり可愛いタイプの子を見れば獣化した変態が狙ってくるはずなんです。そういうものなんですよ。俺、前に借りた本で読みましたから」
…長い。
良くもまぁ似たような事を延々と言えるものだと思う。しかも借りた本だって?と眉を顰める。
「何を借りてたんだお前…」
「バイト先で、それ系が好きな女子から借りたんですよ!美少年が転入してきて周囲の人間達が魅了されて、恋愛になりそうでならなかったりモブキャラに襲われたりするような内容です。やたらキラキラしてる絵だったのが気になったけど…その美少年はオドオドしてる感じで、いかにも小動物みたいなキャラでした」
「………」
そんな奴、現実に居る訳なかろうに。そう言いたくなったが、言った所でどうなる訳でもない。漫画なのだから。
「まぁ、面白かったですけど」
貸す方も貸す方だが、借りる方も借りる方だ。
「なので先輩、くれぐれも気をつけた方がいいですよ!!」
力説するラス。漫画を見て真に受けるのもどうかと思う。
リシェは脱力し、疲れ果てたような顔で「そんなのある訳無いだろ…」と呟いていた。
突然ラスはそんな事を言い出した。
リシェはネットゲームをやりながらいつものように赤フンとじゃれあっている最中。ちょうどいい防具が揃い、防具レベルを上げながら「何だいきなり」と不思議そうな様子。
リシェとは違い、それほどゲームに興味の無いラスは、読んでいた雑誌を閉じる。彼がゲームに興じている間、彼も何かしら暇潰しをしていた。
「可愛い子を狙う同級生とか先生とか…女子向けの漫画とかでそういう話が好まれたりするようなんですよ。ここなんて男子校で尚且つ普通に寮もあるし、そういう話が好きな人はもってこいな環境なんだろうなぁって…」
「ほーん」
あまり興味が無さそうなリシェの反応。
ラスはゲーム画面に釘付けになっている彼の前に座った。
「仮にですよ。仮に、ここが女子生徒が居るとすれば絶対先輩はキャーキャー言われると思うんです」
「……?」
「先輩は誰が見ても美少年ですからね。現に、変態にやたら目を付けられたりするし…俺が見てないと誰彼構わずくっつかれてしまいます」
そしていつものように何かを思い出して歯軋りをした。
ラスは定期的に何かを思い出しては、悔しそうにぐぎぎぎと怒りを沸々湧かせていた。
「その代表格はお前だろう」
「俺じゃないです!!」
決して自分はそうじゃないと即座に言うあたり、心の中で意識してるのではないだろうか。
リシェのイメージではラスが第一変態のトップに出てくる。
「お前が変態じゃなければ誰が変態だというのだ」
「居るじゃないですか、あの保健医ですよ!…そうだ、前に足を挫いた時に何かされたりしませんでしたか!?押し倒されたり足をベロベロ舐め回されたり脱がされたり…!あいつは確実に先輩を狙ってますからね!とんでもないですよ!!世界の変態ランキングに入りそうなレベルの変質者ですからね、気を付けないと!」
ロシュの話題になるとラスはやたら饒舌に彼を否定してくる。リシェは赤フンに挨拶してからゲーム画面を閉じ、何だお前と一息吐いた。
「やたらあの人を意識するじゃないか」
「そりゃあ…」
ロシュにとって、リシェはどうしても手に入れたい人間なのだから。
…ただリシェは全く記憶が無く、彼の事など微塵も考えていないのが幸いだった。現状、一番彼に近いのは紛れもなく自分だ。そう思えば、優越感を常に感じる。
「先輩、これからも保健室に行く際には俺を呼んで下さいよ」
「何でだよ、面倒臭いなぁ」
「これは先輩を守る為でもあるんですよ!」
あっちはあっちで面倒だったが、こっちもこっちで面倒だ。
リシェはうんざりしたようにラスを見ていた。
「仮にですよ?仮に…先輩がまた怪我とか体調が悪くなった時に保健室のお世話になるとなれば。あの変態が涎を垂らして嬉しそうに張り切りますよ。先輩はただでさえ無自覚で魅力を振り撒いているようなものですからね。あんな事やこんな事やそんな事まで繰り返しさせられてしまうに違いない。普段でさえ色んな奴らが先輩を狙ってくるかもしれない。色恋沙汰とはかけ離れた男子校ですからね、ちょっとばかり可愛いタイプの子を見れば獣化した変態が狙ってくるはずなんです。そういうものなんですよ。俺、前に借りた本で読みましたから」
…長い。
良くもまぁ似たような事を延々と言えるものだと思う。しかも借りた本だって?と眉を顰める。
「何を借りてたんだお前…」
「バイト先で、それ系が好きな女子から借りたんですよ!美少年が転入してきて周囲の人間達が魅了されて、恋愛になりそうでならなかったりモブキャラに襲われたりするような内容です。やたらキラキラしてる絵だったのが気になったけど…その美少年はオドオドしてる感じで、いかにも小動物みたいなキャラでした」
「………」
そんな奴、現実に居る訳なかろうに。そう言いたくなったが、言った所でどうなる訳でもない。漫画なのだから。
「まぁ、面白かったですけど」
貸す方も貸す方だが、借りる方も借りる方だ。
「なので先輩、くれぐれも気をつけた方がいいですよ!!」
力説するラス。漫画を見て真に受けるのもどうかと思う。
リシェは脱力し、疲れ果てたような顔で「そんなのある訳無いだろ…」と呟いていた。
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