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そのに
ライブカメラ
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最近色んな動画を見漁っている様子が目立つリシェに、ラスは「何を見ているんです?」と話しかける。真面目な傾向にある彼は一通り勉強を済ませた後、何気なく携帯電話で動画のサイトを見ては暇潰しをしているか、いつものネットゲームを楽しんでいる様子。
元の世界では常に読書をしているか剣の腕を磨いているかのどちらかに振られていたリシェも、普通の若者らしい行動をしている事にラスはちょっとだけ安心していた。
やっぱり先輩も今時の子なのだと。
リシェは顔を上げ、「ああ」と返す。
「先輩がそういうのを見るのって何だか斬新ですね」
「お前、俺を何だと思ってるんだ」
人を機械か何かかと思っていないか?と眉を寄せた。
「いや、あまり見なさそうだったし…」
折角動画やらゲームやら普通に出来る環境が備わっているから何もしないのは勿体無いとは思うが。
先輩は読書のイメージが強いですからね、とニコニコと笑う。
「で、何を見ていたんですか?やっぱりゲーム関係とか?」
「んん」
流行りのゲーム実況とかかな、とリシェの携帯電話の画面を覗き込んだ。中身を確認したあと、「ん?」と思考が停止する。
中身は何の変哲も無い道路を映しただけの光景。一定の間隔で別の景色に変わっては、また別の景色に切り替わっていく。
ラスは笑顔を見せたまま無言になった。
「先輩」
「何だ?」
「これ、楽しいですか?」
どうやら街の交通状況のカメラの映像のようだ。見た事のある景色が延々と無音で流れていく。リシェは延々とこの動画だけ眺めていたらしい。
ラスの素朴な疑問に、リシェは真顔で「楽しい」とだけ答えた。
「色んな場所のライブカメラもあるんだ」
「そ、そうなんですか…」
飽きないのかな?と疑問を抱くが、本人が楽しいのならいいのだろう。しかし、彼の趣味は本当に分かりにくい。
ひたすら道路の景色だけの動画を無言で見ているリシェ。
「…その中でも一番のオススメってありますか?」
「オススメか…そうだな、これなんかどうだ」
質問されたリシェは、動画検索をかけて一つの映像をすぐに出してきた。その中身が出た瞬間、ラスは更に反応に困惑する。
「これって…」
「ダムのライブカメラだ。たまに放流の瞬間も見られる」
「だ、ダム…」
ますます分かりにくい。
好きな相手の事はとにかく何でも知りたがる性格だが、リシェの場合は稀に良く分からなくなった。今まさにそういう状況。
「だ…ダム、楽しいです…?」
放流の瞬間は見てみたい気がするが、延々と見ているまでには至らない。そもそも自分が良く見るものとは全く異なるジャンルで、リシェの好みには合致しない。
これもまた性質の違いなのかもしれない。
リシェはラスの質問に対し、真顔でこくりと頷く。
「楽しいぞ」
その時、ちょうど放流時間に当たったのか不穏なサイレンの音が聞こえてきた。あまりの不安を煽るような低音に、ラスは一瞬戦慄する。
「わ…!何です、この音」
変に不安を掻き立てる仕様なのはわざとそうする事によって人々の注意を引く為だとか。
リシェはそう説明し、わくわくしながら画面に釘付けになっていた。
「ちょうど良かった。放流の時間だ。運が良かったな、ラス」
サイレンの音が鳴り終わった後、間を置きダムの上流からゆっくりと水が流れていく。最初は落ち着いていたが、時間が経つにつれて物凄い滝のような水の流れに変化する。
確かに勢いもあり、その光景は圧倒的だった。
「良くこういうのを作ったものだ。…どうだ、ラス?面白いだろ?」
彼は目をキラキラさせながら問い掛ける。
「は…はあ、そうですね…」
「その他にもいろいろあるぞ。山の頂上だけをひたすら撮ってるものとか、別の街の監視カメラとか…見るか?」
放流の動画に気持ちが昂っているのか、リシェは珍しくラスに動画を勧めようと動こうとする。
「いや、いいです…」
大好きな相手の事は何でも知りたかったが、個人の好みまでは本当に分からないものだとラスは思った。
元の世界では常に読書をしているか剣の腕を磨いているかのどちらかに振られていたリシェも、普通の若者らしい行動をしている事にラスはちょっとだけ安心していた。
やっぱり先輩も今時の子なのだと。
リシェは顔を上げ、「ああ」と返す。
「先輩がそういうのを見るのって何だか斬新ですね」
「お前、俺を何だと思ってるんだ」
人を機械か何かかと思っていないか?と眉を寄せた。
「いや、あまり見なさそうだったし…」
折角動画やらゲームやら普通に出来る環境が備わっているから何もしないのは勿体無いとは思うが。
先輩は読書のイメージが強いですからね、とニコニコと笑う。
「で、何を見ていたんですか?やっぱりゲーム関係とか?」
「んん」
流行りのゲーム実況とかかな、とリシェの携帯電話の画面を覗き込んだ。中身を確認したあと、「ん?」と思考が停止する。
中身は何の変哲も無い道路を映しただけの光景。一定の間隔で別の景色に変わっては、また別の景色に切り替わっていく。
ラスは笑顔を見せたまま無言になった。
「先輩」
「何だ?」
「これ、楽しいですか?」
どうやら街の交通状況のカメラの映像のようだ。見た事のある景色が延々と無音で流れていく。リシェは延々とこの動画だけ眺めていたらしい。
ラスの素朴な疑問に、リシェは真顔で「楽しい」とだけ答えた。
「色んな場所のライブカメラもあるんだ」
「そ、そうなんですか…」
飽きないのかな?と疑問を抱くが、本人が楽しいのならいいのだろう。しかし、彼の趣味は本当に分かりにくい。
ひたすら道路の景色だけの動画を無言で見ているリシェ。
「…その中でも一番のオススメってありますか?」
「オススメか…そうだな、これなんかどうだ」
質問されたリシェは、動画検索をかけて一つの映像をすぐに出してきた。その中身が出た瞬間、ラスは更に反応に困惑する。
「これって…」
「ダムのライブカメラだ。たまに放流の瞬間も見られる」
「だ、ダム…」
ますます分かりにくい。
好きな相手の事はとにかく何でも知りたがる性格だが、リシェの場合は稀に良く分からなくなった。今まさにそういう状況。
「だ…ダム、楽しいです…?」
放流の瞬間は見てみたい気がするが、延々と見ているまでには至らない。そもそも自分が良く見るものとは全く異なるジャンルで、リシェの好みには合致しない。
これもまた性質の違いなのかもしれない。
リシェはラスの質問に対し、真顔でこくりと頷く。
「楽しいぞ」
その時、ちょうど放流時間に当たったのか不穏なサイレンの音が聞こえてきた。あまりの不安を煽るような低音に、ラスは一瞬戦慄する。
「わ…!何です、この音」
変に不安を掻き立てる仕様なのはわざとそうする事によって人々の注意を引く為だとか。
リシェはそう説明し、わくわくしながら画面に釘付けになっていた。
「ちょうど良かった。放流の時間だ。運が良かったな、ラス」
サイレンの音が鳴り終わった後、間を置きダムの上流からゆっくりと水が流れていく。最初は落ち着いていたが、時間が経つにつれて物凄い滝のような水の流れに変化する。
確かに勢いもあり、その光景は圧倒的だった。
「良くこういうのを作ったものだ。…どうだ、ラス?面白いだろ?」
彼は目をキラキラさせながら問い掛ける。
「は…はあ、そうですね…」
「その他にもいろいろあるぞ。山の頂上だけをひたすら撮ってるものとか、別の街の監視カメラとか…見るか?」
放流の動画に気持ちが昂っているのか、リシェは珍しくラスに動画を勧めようと動こうとする。
「いや、いいです…」
大好きな相手の事は何でも知りたかったが、個人の好みまでは本当に分からないものだとラスは思った。
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