69 / 101
そのろくじゅうはち
健全な男子高校生の意見を試してみる
しおりを挟む
ラスが読み続ける雑誌を背後からまだ覗き込んでいるスティレンは、んんっ?と声を上げながらある一文に注目した。
「女子の上目遣いにグッとくる!相手がものを頼む時にされたらつい頑張っちゃうなあ…高三:うまづら(仮名)くん」
普通に文面を読んだ後、はんと失笑した。
「但し可愛い子に限るって書いときなよ、イケメンに限るみたいにさ」
「何でそんな歪んだ見方しちゃうのさ」
「上目遣い、ねえ」
ぺらりとページを捲るラスは、スティレンのぼやきをそのままスルーしていた。
「ね、ラス。上目遣いしてみてよ」
突然そんな事を言われ、ラスはえ?と目を丸くする。スティレンは何を考えているのかたまに分からなくなる節があるが、これもまた理解に苦しむ。
やり方がよく分からないよと困惑すると、スティレンは仕方無いねと溜息をついた。そしてラスの前に回り込み、彼の前に座り込むと「こうだろ?」と上目遣いの見本を見せる。
やはりリシェと従兄弟なだけあり、違う種類の華やかな美少年だ。優しげな垂れ目が彼の持ち味だが、その印象とは真逆に言葉遣いがすこぶる悪く気が強過ぎるのが難点だが。
引っかかる人は引っかかる。
しかしスティレンの性格を知っているラスには、何の感情も湧いてこなかった。
ううんと唸る。
「やっぱり、性格を知ってるから上目遣いされても何とも言えないよ」
効果無しか、とスティレンは舌打ちする。
「反応欲しかったの?」
ラスはくすりと笑った。
「別に」
そこでパンを食べ終え、ぽかーんと空を見上げていたリシェに目を向ける。そして声をかけた。
「リシェ、こっちに来な!」
スティレンが呼び込むと、リシェはこちらをちらりと見た後に「何で」と口答えをする。
「俺は今UFOを呼ぼうと思ってたのに」
「何言ってんの馬鹿じゃないの?ほら、さっさと来な!」
黙って言う事を聞け!とスティレンは立ち上がり、彼の手を引っ張って再びラスの前に座った。
はあ、とリシェは面白くなさそうな顔をする。
余程UFOを呼びたかったのだろうか。
「先輩!上目遣いをしてみて下さい!」
ラスはスティレンとは違う様子を見せる。
「何なのあんたは」
さっきと全然違うじゃん、と。
それがまたムカっときた。
「上目遣い?」
リシェは眉を寄せながら不思議そうな顔を向けた。ラスはそうです、そうです!と期待に満ちた顔をする。
「頼み事をするようにしてっ、下から俺を見上げて下さいっ!お願いします!!」
「頼み事をしてるのはそっちじゃないか」
まあ、確かにそうだけど。
気を取り直して、ラスはリシェにさあさあと頼み込んだ。
「何で俺が」
「先輩が上目遣いをしたらどうなるかなって思って」
実際、やれと言われてもなかなか出来ないのが現状だ。ううんと苦戦するリシェ。
「出来ない。難しい」
「ええ…」
「いきなりやれって言うのがダメなんだ。すぐに出来るのなんてスティレンくらいだぞ」
どういう意味だよ!と言われたスティレンは怒りだす。演技派ではないリシェは「無理だと思う」とラスからぷいと顔を背けた。
無理、無理。絶対無理。
リシェはつれない様子を見せる。
「先輩」
「?」
「今日は焼肉ですよ?」
急に晩ご飯の話をしだすラス。
くるりと彼に顔を向けたリシェは、目を輝かせて「ほんとか!?」と見上げた。
その可愛らしさときたら。
ラスはぷるぷると震え、リシェを引っ張りぎゅううっと抱きしめてしまう。
うぎゃああああ!と悲鳴を上げるリシェ。
「先輩っ、先輩!!一緒に焼肉食べましょうねっ」
誘惑された気分に陥り、頭の中がお花畑状態になったラスはリシェを抱きながら幸せそうに言った。
ああ、と面白くなさそうなスティレンは「何なのこいつら…」と呆れていた。
「女子の上目遣いにグッとくる!相手がものを頼む時にされたらつい頑張っちゃうなあ…高三:うまづら(仮名)くん」
普通に文面を読んだ後、はんと失笑した。
「但し可愛い子に限るって書いときなよ、イケメンに限るみたいにさ」
「何でそんな歪んだ見方しちゃうのさ」
「上目遣い、ねえ」
ぺらりとページを捲るラスは、スティレンのぼやきをそのままスルーしていた。
「ね、ラス。上目遣いしてみてよ」
突然そんな事を言われ、ラスはえ?と目を丸くする。スティレンは何を考えているのかたまに分からなくなる節があるが、これもまた理解に苦しむ。
やり方がよく分からないよと困惑すると、スティレンは仕方無いねと溜息をついた。そしてラスの前に回り込み、彼の前に座り込むと「こうだろ?」と上目遣いの見本を見せる。
やはりリシェと従兄弟なだけあり、違う種類の華やかな美少年だ。優しげな垂れ目が彼の持ち味だが、その印象とは真逆に言葉遣いがすこぶる悪く気が強過ぎるのが難点だが。
引っかかる人は引っかかる。
しかしスティレンの性格を知っているラスには、何の感情も湧いてこなかった。
ううんと唸る。
「やっぱり、性格を知ってるから上目遣いされても何とも言えないよ」
効果無しか、とスティレンは舌打ちする。
「反応欲しかったの?」
ラスはくすりと笑った。
「別に」
そこでパンを食べ終え、ぽかーんと空を見上げていたリシェに目を向ける。そして声をかけた。
「リシェ、こっちに来な!」
スティレンが呼び込むと、リシェはこちらをちらりと見た後に「何で」と口答えをする。
「俺は今UFOを呼ぼうと思ってたのに」
「何言ってんの馬鹿じゃないの?ほら、さっさと来な!」
黙って言う事を聞け!とスティレンは立ち上がり、彼の手を引っ張って再びラスの前に座った。
はあ、とリシェは面白くなさそうな顔をする。
余程UFOを呼びたかったのだろうか。
「先輩!上目遣いをしてみて下さい!」
ラスはスティレンとは違う様子を見せる。
「何なのあんたは」
さっきと全然違うじゃん、と。
それがまたムカっときた。
「上目遣い?」
リシェは眉を寄せながら不思議そうな顔を向けた。ラスはそうです、そうです!と期待に満ちた顔をする。
「頼み事をするようにしてっ、下から俺を見上げて下さいっ!お願いします!!」
「頼み事をしてるのはそっちじゃないか」
まあ、確かにそうだけど。
気を取り直して、ラスはリシェにさあさあと頼み込んだ。
「何で俺が」
「先輩が上目遣いをしたらどうなるかなって思って」
実際、やれと言われてもなかなか出来ないのが現状だ。ううんと苦戦するリシェ。
「出来ない。難しい」
「ええ…」
「いきなりやれって言うのがダメなんだ。すぐに出来るのなんてスティレンくらいだぞ」
どういう意味だよ!と言われたスティレンは怒りだす。演技派ではないリシェは「無理だと思う」とラスからぷいと顔を背けた。
無理、無理。絶対無理。
リシェはつれない様子を見せる。
「先輩」
「?」
「今日は焼肉ですよ?」
急に晩ご飯の話をしだすラス。
くるりと彼に顔を向けたリシェは、目を輝かせて「ほんとか!?」と見上げた。
その可愛らしさときたら。
ラスはぷるぷると震え、リシェを引っ張りぎゅううっと抱きしめてしまう。
うぎゃああああ!と悲鳴を上げるリシェ。
「先輩っ、先輩!!一緒に焼肉食べましょうねっ」
誘惑された気分に陥り、頭の中がお花畑状態になったラスはリシェを抱きながら幸せそうに言った。
ああ、と面白くなさそうなスティレンは「何なのこいつら…」と呆れていた。
0
お気に入りに追加
81
あなたにおすすめの小説
王道くんと、俺。
葉津緒
BL
偽チャラ男な腐男子の、王道観察物語。
天然タラシな美形腐男子くん(偽チャラ男)が、攻めのふりをしながら『王道転入生総受け生BL』を楽しく観察。
※あくまでも本人の願望です。
現実では無自覚に周囲を翻弄中♪
BLコメディ
王道/脇役/美形/腐男子/偽チャラ男
start→2010
修正→2018
更新再開→2023
転生悪役モブは溺愛されんで良いので死にたくない!
煮卵
BL
ゲーム会社に勤めていた俺はゲームの世界の『婚約破棄』イベントの混乱で殺されてしまうモブに転生した。処刑の原因となる婚約破棄を避けるべく王子に友人として接近。なんか数ヶ月おきに繰り返される「恋人や出会いのためのお祭り」をできる限り第二皇子と過ごし、婚約破棄の原因となる主人公と出会うきっかけを徹底的に排除する。
最近では監視をつけるまでもなくいつも一緒にいたいと言い出すようになった・・・やんごとなき血筋のハンサムな王子様を淑女たちから遠ざけ男の俺とばかり過ごすように仕向けるのはちょっと申し訳ない気もしたが、俺の運命のためだ。仕方あるまい。
俺の死亡フラグは完全に回避された!
・・・と思ったら、婚約の儀の当日、「私には思い人がいるのです」
と言いやがる!一体誰だ!?
その日の夜、俺はゲームの告白イベントがある薔薇園に呼び出されて・・・
ラブコメが描きたかったので書きました。
告白ゲームの攻略対象にされたので面倒くさい奴になって嫌われることにした
雨宮里玖
BL
《あらすじ》
昼休みに乃木は、イケメン三人の話に聞き耳を立てていた。そこで「それぞれが最初にぶつかった奴を口説いて告白する。それで一番早く告白オッケーもらえた奴が勝ち」という告白ゲームをする話を聞いた。
その直後、乃木は三人のうちで一番のモテ男・早坂とぶつかってしまった。
その日の放課後から早坂は乃木にぐいぐい近づいてきて——。
早坂(18)モッテモテのイケメン帰国子女。勉強運動なんでもできる。物静か。
乃木(18)普通の高校三年生。
波田野(17)早坂の友人。
蓑島(17)早坂の友人。
石井(18)乃木の友人。
音楽の神と呼ばれた俺。なんか殺されて気づいたら転生してたんだけど⁉(完)
柿の妖精
BL
俺、牧原甲はもうすぐ二年生になる予定の大学一年生。牧原家は代々超音楽家系で、小さいころからずっと音楽をさせられ、今まで音楽の道を進んできた。そのおかげで楽器でも歌でも音楽に関することは何でもできるようになり、まわりからは、音楽の神と呼ばれていた。そんなある日、大学の友達からバンドのスケットを頼まれてライブハウスへとつながる階段を下りていたら後ろから背中を思いっきり押されて死んでしまった。そして気づいたら代々超芸術家系のメローディア公爵家のリトモに転生していた!?まぁ音楽が出来るなら別にいっか!
そんな音楽の神リトモと呪いにかけられた第二王子クオレの恋のお話。
完全処女作です。温かく見守っていただけると嬉しいです。<(_ _)>
転移したらなぜかコワモテ騎士団長に俺だけ子供扱いされてる
塩チーズ
BL
平々凡々が似合うちょっと中性的で童顔なだけの成人男性。転移して拾ってもらった家の息子がコワモテ騎士団長だった!
特に何も無く平凡な日常を過ごすが、騎士団長の妙な噂を耳にしてある悩みが出来てしまう。
不良高校に転校したら溺愛されて思ってたのと違う
らる
BL
幸せな家庭ですくすくと育ち普通の高校に通い楽しく毎日を過ごしている七瀬透。
唯一普通じゃない所は人たらしなふわふわ天然男子である。
そんな透は本で見た不良に憧れ、勢いで日本一と言われる不良学園に転校。
いったいどうなる!?
[強くて怖い生徒会長]×[天然ふわふわボーイ]固定です。
※更新頻度遅め。一日一話を目標にしてます。
※誤字脱字は見つけ次第時間のある時修正します。それまではご了承ください。
転生したけどやり直す前に終わった【加筆版】
リトルグラス
BL
人生を無気力に無意味に生きた、負け組男がナーロッパ的世界観に転生した。
転生モノ小説を読みながら「俺だってやり直せるなら、今度こそ頑張るのにな」と、思いながら最期を迎えた前世を思い出し「今度は人生を成功させる」と転生した男、アイザックは子供時代から努力を重ねた。
しかし、アイザックは成人の直前で家族を処刑され、平民落ちにされ、すべてを失った状態で追放された。
ろくなチートもなく、あるのは子供時代の努力の結果だけ。ともに追放された子ども達を抱えてアイザックは南の港町を目指す──
***
第11回BL小説大賞にエントリーするために修正と加筆を加え、作者のつぶやきは削除しました。(23'10'20)
**
会社を辞めて騎士団長を拾う
あかべこ
BL
社会生活に疲れて早期リタイアした元社畜は、亡き祖父から譲り受けた一軒家に引っ越した。
その新生活一日目、自宅の前に現れたのは足の引きちぎれた自称・帝国の騎士団長だった……!え、この人俺が面倒見るんですか?
女装趣味のギリギリFIREおじさん×ガチムチ元騎士団長、になるはず。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる