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そのろくじゅうはち

健全な男子高校生の意見を試してみる

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 ラスが読み続ける雑誌を背後からまだ覗き込んでいるスティレンは、んんっ?と声を上げながらある一文に注目した。
「女子の上目遣いにグッとくる!相手がものを頼む時にされたらつい頑張っちゃうなあ…高三:うまづら(仮名)くん」
 普通に文面を読んだ後、はんと失笑した。
「但し可愛い子に限るって書いときなよ、イケメンに限るみたいにさ」
「何でそんな歪んだ見方しちゃうのさ」
「上目遣い、ねえ」
 ぺらりとページを捲るラスは、スティレンのぼやきをそのままスルーしていた。
「ね、ラス。上目遣いしてみてよ」
 突然そんな事を言われ、ラスはえ?と目を丸くする。スティレンは何を考えているのかたまに分からなくなる節があるが、これもまた理解に苦しむ。
 やり方がよく分からないよと困惑すると、スティレンは仕方無いねと溜息をついた。そしてラスの前に回り込み、彼の前に座り込むと「こうだろ?」と上目遣いの見本を見せる。
 やはりリシェと従兄弟なだけあり、違う種類の華やかな美少年だ。優しげな垂れ目が彼の持ち味だが、その印象とは真逆に言葉遣いがすこぶる悪く気が強過ぎるのが難点だが。
 引っかかる人は引っかかる。
 しかしスティレンの性格を知っているラスには、何の感情も湧いてこなかった。
 ううんと唸る。
「やっぱり、性格を知ってるから上目遣いされても何とも言えないよ」
 効果無しか、とスティレンは舌打ちする。
「反応欲しかったの?」
 ラスはくすりと笑った。
「別に」
 そこでパンを食べ終え、ぽかーんと空を見上げていたリシェに目を向ける。そして声をかけた。
「リシェ、こっちに来な!」
 スティレンが呼び込むと、リシェはこちらをちらりと見た後に「何で」と口答えをする。
「俺は今UFOを呼ぼうと思ってたのに」
「何言ってんの馬鹿じゃないの?ほら、さっさと来な!」
 黙って言う事を聞け!とスティレンは立ち上がり、彼の手を引っ張って再びラスの前に座った。
 はあ、とリシェは面白くなさそうな顔をする。
 余程UFOを呼びたかったのだろうか。
「先輩!上目遣いをしてみて下さい!」
 ラスはスティレンとは違う様子を見せる。
「何なのあんたは」
 さっきと全然違うじゃん、と。
 それがまたムカっときた。
「上目遣い?」
 リシェは眉を寄せながら不思議そうな顔を向けた。ラスはそうです、そうです!と期待に満ちた顔をする。
「頼み事をするようにしてっ、下から俺を見上げて下さいっ!お願いします!!」
「頼み事をしてるのはそっちじゃないか」
 まあ、確かにそうだけど。
 気を取り直して、ラスはリシェにさあさあと頼み込んだ。
「何で俺が」
「先輩が上目遣いをしたらどうなるかなって思って」
 実際、やれと言われてもなかなか出来ないのが現状だ。ううんと苦戦するリシェ。
「出来ない。難しい」
「ええ…」
「いきなりやれって言うのがダメなんだ。すぐに出来るのなんてスティレンくらいだぞ」
 どういう意味だよ!と言われたスティレンは怒りだす。演技派ではないリシェは「無理だと思う」とラスからぷいと顔を背けた。
 無理、無理。絶対無理。
 リシェはつれない様子を見せる。
「先輩」
「?」
「今日は焼肉ですよ?」
 急に晩ご飯の話をしだすラス。
 くるりと彼に顔を向けたリシェは、目を輝かせて「ほんとか!?」と見上げた。
 その可愛らしさときたら。
 ラスはぷるぷると震え、リシェを引っ張りぎゅううっと抱きしめてしまう。
 うぎゃああああ!と悲鳴を上げるリシェ。
「先輩っ、先輩!!一緒に焼肉食べましょうねっ」
 誘惑された気分に陥り、頭の中がお花畑状態になったラスはリシェを抱きながら幸せそうに言った。
 ああ、と面白くなさそうなスティレンは「何なのこいつら…」と呆れていた。
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