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そのにじゅうご
退化していく求愛方法
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リシェを職員室から出した後、オーギュスティンは彼を追いかけようと目論むロシュの首根っこをしっかり掴む。
うぎゃああ!と喚く同僚相手に、オーギュスティンは「止めなさい」と強い口調で引き止めた。
「あなたは性犯罪者になりたいんですか」
人聞きの悪い、とロシュは呻く。
「わっ…私はリシェにしか興味がありません!」
「誰もあなたの好みなんか聞いてませんよ!」
彼を放牧すれば、悪い事しか起こらない事は誰よりもオーギュスティンが深く知っていた。その優男風を装った甘いマスクで誰でもたぶらかしてしまう悪い大人なのだ。
しかも彼は自分で自分の魅力を熟知していて、それを十分利用しようとするから余計タチが悪い。
ある程度時間稼ぎをした後に、ようやくオーギュスティンはロシュから手を離す。
「ああ、もう…折角リシェの姿を間近に見れるチャンスだったのに」
残念がるロシュ。
リシェが遠いこちら側の世界は、ロシュにとって苦行のようだ。手を伸ばせばすぐに抱き締められる元の世界が恋しくなる程に。
「あの子はあなたの何なんですか?単なる悪戯目的ならば私は全力で彼を守りますからね」
オーギュスティンの中ではロシュは相当な危険人物だ。
警戒する彼にうんざりするような目を向けた後、当のロシュは溜息混じりに「あなたに言ってもねぇ」とぼやく。
「私とあの子は運命共同体なのです(向こうの世界では)。リシェはこちら側では全く気付いていないのですよ、私がいかに重要な存在だという事に。どうやら記憶が無いみたいなので思い出して貰わないと」
いつになく真剣そのもので語るロシュだったが、対するオーギュスティンは怪訝そうな表情でこちらを見ると、まるで見下げ果てた様子を剥き出しにして「…は?」とだけ口にする。
かなりドン引きしている。
「頭大丈夫ですか?」
「私は至って平常ですよ」
「運命共同体って…まだ子供相手に何を変な妄想を」
「妄想ではありませんよ!私は真剣にそう思っているんです。こちらの世界でも、私はあの子と一緒に添い遂げる予定ですからね!実際に私は来るべき時の為に結婚応援雑誌を定期購読しています」
…ドヤ顔で変な事を誇らしげに言わなくてもいい。
オーギュスティンは稀に発生する偏頭痛に襲われてしまった。
「あなたはリシェと結婚する気ですか…」
「当たり前じゃないですか」
「いや、やめて下さい。ほんと、やめて」
ただでさえ職業柄色んな問題を抱えているのに、余計な問題を発生させて欲しくない。ううっとオーギュスティンは呻いた。
大体リシェはロシュの事など何とも思っていない所か、逆に怖がっているではないか。そんな相手を良く運命共同体だとか言えるものだ。勘違いも甚だしい。
ロシュの変態っぷりは昔から良く知ってはいたが、まさかここまで電波を発生させるとは思わなかった。自分の童貞を奪っただけでは飽き足らず、その魔の手はまだ何も知らないリシェにまで伸ばそうとしてくるとは。
あんな情けない気持ちをリシェに味わって欲しくない。
「あなたの変態的な色魔っぷりは昔から知ってましたが、流石にこの辺りで止めなければならないみたいですね」
「?」
とにかく。
この気になった相手をどうにかして食い止めないと。
オーギュスティンはロシュに対してメラメラと心の中で炎を燃やしだした。
「私は全力でリシェをあなたから守り抜きます」
「な…何ですか、邪魔する気ですか?私とリシェの仲を裂こうとするなんて!」
「自分の大切な生徒を変質者から守る事のどこが悪いんです!いいですか、今後あの子に手を出そうと動いたら私は通報しますからね!!」
宣言され、ロシュはそんなあとショックを受ける。
これでは余計リシェが遠いではないかと。
「それなら、私は正攻法で交換日記から始めますよ!それなら構わないでしょう!?」
古典的だが仕方あるまい。交換日記ならば清いはずだ。
しかしオーギュスティンは却下!と突っぱねる。
「そういう意味ではありません!!あなたが最初からいやらしい気持ちであの子に近付こうとしているのがダメなのです!!」
ううっと行き詰まるロシュ。
「こっ…」
「?」
必死の様子を見せ、彼はオーギュスティンに訴える。
渾身の叫びは職員室内に響き渡った。
「別に交換日記位っ…いいじゃないですかぁ…っ!」
…毎日何の話を書いて交換するのか。
だからそういう問題じゃないとオーギュスティンは頭を抱えてしまった。
うぎゃああ!と喚く同僚相手に、オーギュスティンは「止めなさい」と強い口調で引き止めた。
「あなたは性犯罪者になりたいんですか」
人聞きの悪い、とロシュは呻く。
「わっ…私はリシェにしか興味がありません!」
「誰もあなたの好みなんか聞いてませんよ!」
彼を放牧すれば、悪い事しか起こらない事は誰よりもオーギュスティンが深く知っていた。その優男風を装った甘いマスクで誰でもたぶらかしてしまう悪い大人なのだ。
しかも彼は自分で自分の魅力を熟知していて、それを十分利用しようとするから余計タチが悪い。
ある程度時間稼ぎをした後に、ようやくオーギュスティンはロシュから手を離す。
「ああ、もう…折角リシェの姿を間近に見れるチャンスだったのに」
残念がるロシュ。
リシェが遠いこちら側の世界は、ロシュにとって苦行のようだ。手を伸ばせばすぐに抱き締められる元の世界が恋しくなる程に。
「あの子はあなたの何なんですか?単なる悪戯目的ならば私は全力で彼を守りますからね」
オーギュスティンの中ではロシュは相当な危険人物だ。
警戒する彼にうんざりするような目を向けた後、当のロシュは溜息混じりに「あなたに言ってもねぇ」とぼやく。
「私とあの子は運命共同体なのです(向こうの世界では)。リシェはこちら側では全く気付いていないのですよ、私がいかに重要な存在だという事に。どうやら記憶が無いみたいなので思い出して貰わないと」
いつになく真剣そのもので語るロシュだったが、対するオーギュスティンは怪訝そうな表情でこちらを見ると、まるで見下げ果てた様子を剥き出しにして「…は?」とだけ口にする。
かなりドン引きしている。
「頭大丈夫ですか?」
「私は至って平常ですよ」
「運命共同体って…まだ子供相手に何を変な妄想を」
「妄想ではありませんよ!私は真剣にそう思っているんです。こちらの世界でも、私はあの子と一緒に添い遂げる予定ですからね!実際に私は来るべき時の為に結婚応援雑誌を定期購読しています」
…ドヤ顔で変な事を誇らしげに言わなくてもいい。
オーギュスティンは稀に発生する偏頭痛に襲われてしまった。
「あなたはリシェと結婚する気ですか…」
「当たり前じゃないですか」
「いや、やめて下さい。ほんと、やめて」
ただでさえ職業柄色んな問題を抱えているのに、余計な問題を発生させて欲しくない。ううっとオーギュスティンは呻いた。
大体リシェはロシュの事など何とも思っていない所か、逆に怖がっているではないか。そんな相手を良く運命共同体だとか言えるものだ。勘違いも甚だしい。
ロシュの変態っぷりは昔から良く知ってはいたが、まさかここまで電波を発生させるとは思わなかった。自分の童貞を奪っただけでは飽き足らず、その魔の手はまだ何も知らないリシェにまで伸ばそうとしてくるとは。
あんな情けない気持ちをリシェに味わって欲しくない。
「あなたの変態的な色魔っぷりは昔から知ってましたが、流石にこの辺りで止めなければならないみたいですね」
「?」
とにかく。
この気になった相手をどうにかして食い止めないと。
オーギュスティンはロシュに対してメラメラと心の中で炎を燃やしだした。
「私は全力でリシェをあなたから守り抜きます」
「な…何ですか、邪魔する気ですか?私とリシェの仲を裂こうとするなんて!」
「自分の大切な生徒を変質者から守る事のどこが悪いんです!いいですか、今後あの子に手を出そうと動いたら私は通報しますからね!!」
宣言され、ロシュはそんなあとショックを受ける。
これでは余計リシェが遠いではないかと。
「それなら、私は正攻法で交換日記から始めますよ!それなら構わないでしょう!?」
古典的だが仕方あるまい。交換日記ならば清いはずだ。
しかしオーギュスティンは却下!と突っぱねる。
「そういう意味ではありません!!あなたが最初からいやらしい気持ちであの子に近付こうとしているのがダメなのです!!」
ううっと行き詰まるロシュ。
「こっ…」
「?」
必死の様子を見せ、彼はオーギュスティンに訴える。
渾身の叫びは職員室内に響き渡った。
「別に交換日記位っ…いいじゃないですかぁ…っ!」
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